【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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「そろそろ帰りますかね」
「ん?」
「ラセルの泳ぎも上達したし。遠泳も中々様になっているし……水の精霊と仲良くなってるし」
「ややっ帰る基準はラセルだったか」
「それ以外なにが?」

 結構沖の方で六銛のヘイズ達と真っ赤な魚を捕まえて手を振るラセルに手を振り返しながら、ミニィがぼそりと呟いた。

「構わんぞ。海草のスケッチも大体終わったしサンプルも取ったし」
「カラメ昆布の在庫もパンパンですし、干物もかなり仕入れたんで大丈夫です」
「お前達、リア伯爵のことは心配してあげないのかい……?」

 陸でラセルを見守っていた面子は首を横に傾げて終わった……かれこれ半年くらいはお世話になっているのにそれでいいのか。

「お世話になんかなっていません、お世話してあげてるんです。見てくださいよ、リア伯爵の胴回りが来た時よりだいぶスマートになって、薄くなりだした髪の毛が復活してるじゃないですか。お世話してあげました」

 パムがポン、と胸を叩いて自慢げにいう。うん、そうだね……パムの海産物を中心に海藻で取った出汁をふんだんに使った料理で、小太りだったリア伯爵はかなり痩せたねえ。偉い!

「植物について色々教えたじゃないですか。この地域特産の薬草の使い方とか考えたのは俺ですよ」

 うん、タムは植物のことは詳しいからねえ。いやはや木の皮を煮だして足に塗るのは画期的だったねえ……。偉い!

「別荘の方もなんとかなったといえますし、大体の隠し通路や隠し部屋を覚えさせましたし」

 そうだねえ、鬼教官とか言われつつ、本気を出したミニィがいろんな人のお尻をひっぱたきならが教え込んだねえ。文字も読めなかったメイドの子が今や簡単な魔法を使いこなすまでになったねえ。偉い!

「私は何もしてませんが、とりあえず偉いって言ってくださいよ」
「クレヤボンス、変な所に挟まるのやめなさいよ。抜けなくなるよ」

 岩場の隙間からクレヤボンスの声だけ聞こえてくるけど、何してるのか分からない。貝の毒性値について調べてたみたいだけど……まあかげから色々やってくれてたから偉いんだけどさ。

「イアンみて~赤い魚!きれいだねえ、これは食べられる?パムさん」
「脂が乗ってて美味しそうですよ、すぐ焼きましょう」
「わあい!」

 その後ろからヘイズ達が何かぐにゃぐにゃした物を引っ張って戻ってきた。

「大将、見てください!クラーケンベビーっすよ!ニックを食おうしてたんでとっ捕まえて来ました!吸盤に牙がいっぱい生えてる凶暴なヤツっすよ!」
「海に戻してきなさい」
「いや、喰いましょうよ!パム、焼いてくれ!」
「食べられないよ、ヘイズ」
「むむ、私に下さいな、ヘイズ。そのぬめぬめで何か作れそう……あうっ岩から抜けられないっ助けて、引っ張って!」
「挟まってるクレヤボンスさん、レア~~!暫く観察しようぜ、兄貴」
「やめろ、夜中に悪夢見させられるぞ」
「ひょっ」

「あはは!おもしろーい!」

 毎日驚きと発見があり、それについて学者肌の者はメモに纏めたりしたし、そうじゃないものは経験と勘を積み重ねた。収集癖がある者はどんどん集めたみたいだし、それぞれに楽しい港町を堪能したんじゃないかな。ラセルは毎日泳いでいたこともあって、一回り逞しくなった気がするし精霊と仲良くなったことによって水系の魔法が上手になっている。

 あとまあ、誰もが二の次扱いだけれど、リアハーバーの噂は上々。徹底的に上客のみに絞らせ、完璧な休暇を演出出来ている。リア伯爵自体もミニィのしごきに合い泣きながら勉強した結果、かなり良い領主と言えるようになった。

「フン、オッサンを泣かせる趣味はないんですけどね」
「ほ、本気出したミニィさんって怖かったんだ……私、尻に敷かれておきます」

 青い顔をして呟いたリゼレン君が印象的だった。うんうん、普段はそれで良いと思うよ。何かあった時にはミニィを助けてやって欲しい。隣の公爵領から視察に来た人たちもいなせるようになっていたし、多分大丈夫だ。

「海に行くならリアハーバーに泊りたいけれど、あそこはいつも予約が取れないから公爵領の方へ行こうか」

 こういう声が貴族達の間から登るようになって公爵は面白くないようだ。何せ仕方がなく公爵領に来るっていってるんだからね。それに前もって公爵領を通る道の通行税を安くして貰ったのも悔しいらしい。なにせ、リア伯爵の所じゃ道路を整備するまでお金を回せない。だから道路は安全な公爵領を通らせてもらっているんだけど、まだ別荘を作る前に長期契約を結ばせたんだ。
 その時はリア伯爵領は貧乏すぎてナメられてたから、ほとんどタダ同然で契約が取れた。ありがたいことだ。それも公爵が面白くない一つの要因だ……ざまーみろ!


「マム、暫く来れないかもしれないけど、絶対また来るね」

 最後にラセルはマムの祭壇にきれいな花のリースを作って捧げた。ここで大きな怪我もなく風邪もひかずに楽しく暮らせたのはやっぱりマムの力も大きかったと思う。暖かな手でラセルの頭を撫でた幻影が見える気がした。

「きゅっ!?」

 その後に私までなでなでされてしまったので、マムにしてみたらどうやら私も子供に分類されているようだった……久しぶりにくすぐったいような気持になって、あたたかな笑いがこみ上げてきた。ありがとう、マム。私の事も見守ってくれていたんだね。
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