【完結】おっさん軍人、もふもふ子狐になり少年を育てる。元部下は曲者揃いで今日も大変です

鏑木 うりこ

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211 本気、出して来た

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「さて、お茶碗の中身はなんでしょう」
「プリンだろ?!」
「いや待て、出汁の匂いがするぞ!?」

 パムの周りには見知った顔から見知らぬ顔まで溢れかえっている。次々と出てくる美味しい料理に皆夢中だ。

「イアン! 中身なんなの?!」
「えーと、しょっぱいプリンみたいなのなんだけど、中に食材が埋まってるんだよね。 普通の物からサウザンドオイスターの5年ものとか」
「待て、サウザンドオイスター?? なんでそんな図鑑でしか見たことがないような伝説の貝の名前が出てくる?!」
「えーと、サンゴタートルを狩ったことがあって背中にびっしりくっ付いてたんだっけな?」
「やめろ! サンゴタートルなんて幻の泳ぐ宝石の名前なんて出すんじゃない。私だって偽物しか掴んだことがないぞ?! で、どうしたんだ?! サンゴタートルの甲羅は?傷をつけずに持ち帰ったんだろう?? 200年は遊んで暮らせるよな?!」
「王がその日のうちに落として、バラバラに壊して池に捨てました」
「あの椅子の飾りにもならんクソ野郎はやっぱり早目に処分しようかな?」

 マリアネットの目がここ最近で一番剣呑に輝いた。でもほんとうのことだから仕方がないよね?
 サンゴタートルを捕獲しろと無茶な命令を下されて、必死で捕まえてきちんと持ち帰ったのに、偽物だと一方的にいわれて捨てられたんだ。
 せめて真水に落とさなきゃ価値が残ったらしいけど、綺麗なサンゴ色だったのに、一瞬で真っ白くなって、宝石としての価値を全部失った。
 それでも鑑定士が泣きながら池を全部浚ってかき集めて持って帰ったな……。白くなったかけらの代金は私に内密に渡してくれて皆の慰労に使えたっけな……。そういえばあの国の王はまだ存命なんだ、子供達の世話が楽しくて忘れてたよ。

「まだ王なんですね」
「ああ、なんの旨味もない国で、その気になれば昼飯前に攻め滅ぼせる王家だ。面倒だから各国は放置している……だが腹が立って来た、伝説級の希少宝石生物をなんだと思ってるんだ」
「ははは……」

 まあ、我々があまりに早く捕獲して帰って来たのがいけなかったらしい。でも海の精霊に聞いて、命が尽きかける老齢のサンゴタートルが陸に上がるという情報を掴めたからだったんだけどね。
 情報通りサンゴタートルが砂浜に上陸し、サンゴ色の卵を産み、すぐに孵化し……海に子供達が帰っていくのを全員で見守り、息絶えたサンゴタートルを解体しただけ。その時甲羅についていたオイスターです、はい。

「ああ、本物のサンゴタートルの甲羅見たかったーー! できればそれでネックレスとか欲しかったー!」

 頭をくしゃくしゃにしながらマリアネットが叫んでいる。きれいだったことしか覚えていないけどあの亀はそんなに凄かったんだな……知らなかった。

「クレヤボンスが詳しく調べていたから頼めば偽物なら作ってもらえると思うよ」
「偽物か……」
「まあそのうち海に行ったら精霊達に聞いておきますけど、そんな偶然中々ないでしょ」
「そうだな……」

 サンゴタートルの話をしていたらマリアネットは出遅れたらしく、お茶碗は既に品切れだったらしい。

「ぼくのお茶碗にはいっぱいエビが入ってる!」
「私のには……このふにふにしたのなんだろう? 貝にみえる……ふむ、美味いな~とろけるような、それでいて濃厚で海の香りがする……」
「それがサウザンドオイスターだよ。殻が凄いんだよね」

 フィンは馬車エビたっぷりのお茶碗、セドリックがオイスターの入ったお茶碗を引き当てたらしい。流石パム、子供にはルビー銀杏は入ってない。あれはすごく美味しいけどほんの少し毒性があって子供には食べさせない方がいい食材だから。

「さて、お次は~金竜鮭のハラミ」
「マリアネット! 急ぐぞーっ!」
「えっ」

 タムの足を引っ掛けて転ばせて鮭は取った! これ美味いんだよねえ~~!

「大将酷い! 大将鬼! 大将人でなし!!」
「ふふ、人でないからなあ……」

 狐だし! とろりとほどける鮭……ああっ美味しい、皮まで食べちゃう!

「イ、イアン。噂でしか聞いたことがない食材が次々出始めたんだが、ど、どうしよう?」
「食べたら良いと思うよ」

 割と限界に近くなったお腹をさすりながら遠い目をするしかない。だって美味しいんだもん……。ああ、恐ろしい、一体どれだけ体重が増えちゃってるんだろう……怖い!

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