【完結】やり直した令嬢は幸せを摑まえる。あばずれ?言いたければ言わせておけばよいのです。

鏑木 うりこ

文字の大きさ
15 / 27

15 大胆不敵な私の作戦

「お、お、お嬢様、おやめくださいませ、お嬢様ぁ~~」

 ルシーの悲痛な叫びを数時間前に聞いたけれど、それを無視して私は市街地に降りている。今はそろそろ卒業を控えた18歳の少女でも、過去の記憶があるのだから、この場がどういう所でどれくらい非常識なことをしようとしているかも全部分かっている。でも、いつまでたっても頷かないナルクにもいつまでも私の親友面をしてくるダリアにも、小さくちょっかいをかけてくるトッドリア侯爵にももう耐えきれない。

 最終手段を取ることに決めたのだ。

「えーと、騎士様ですよね?」
「そうですが、うら若き乙女がこのような場所に来るのは些か問題があるのでは?」
「御心配には及びませんわ」

 夜の酒場はガラの悪そうな男達で満ち満ちている。お酒を飲んで歌ったり暴れたり。その中でもまともそうな二人組を見つけて話しかけるまでに、色々な男性達に口笛を吹かれたりしたが気にしない。いや、本当は怖いけれど、過去と同じことをしないためにはこれしか方法がないと腹をくくったのだから。

「何か御用ですか?」

 騎士は二人組だった。決め手は両方ともナルクの赤い髪とはまったく違う金髪だったこと。近寄って顔を見ると目の色も全然違う。ナルクは緑だけど、二人とも青系だ……これだ。「御用」を口に出す時流石に私も口ごもった、でも……過去と同じことはしない!

「特殊な事情があってね。後から何の迷惑もかけないから、私を、だ、抱いてくれないかしら?」
「は?」

 まあ自分でもとんでもないお願いだと分かっている。それでも騎士らしい人の片方が話の分かる人で私は朝帰りをし、目的を果たした。ルシーや使用人達に口止めをし……学園を卒業したあと、私はもう隠せないし言い逃れができないお腹の大きさになった。あの騎士やるわね、一発必中だったわ。

「ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、ア、アネ、アネアネ」
「ふふ、お父様凄いでしょう、私」

 最近お父様を避けて避けて避けまくって、とうとうバレてお医者様を呼ばれ、すべて白状した。目立つようになる前に学園は卒業できた……計算通りよ。

「こ、ここまで大きくなっては、だ、堕胎は不可能かと」
「狙い通りよ、うふふ」

 お父様はとりあえず目を回して倒れたけれど、起きた後きちんと話を始めた。

「ちょっとどこの誰かとも分からぬ騎士っぽい人を誘って子供を授かってきました。ええ、名前もわかりませんし、顔ももう薄ぼんやりとして覚えていません、探せませんわ。所謂どこの馬の骨か分からんってやつですね」
「アネモネ、なんてことを」
「これでナルクも諦めるでしょ? ダリアはもうすぐナルクの子供を産むでしょうし、ナルクはダリアと結婚すればいいのよ」
「だからといってこんな、こんな……」

 お父様は涙を流しながら、私の大きくなったお腹を見ている。襲われた訳じゃないの、私が誘ったのよ?

「お父様。ウィンフィールド公爵家は力をつけすぎました。トッドリア侯爵から嫌われているのはご存じでしょう?」
「ああ、あんな奴、捨て置けばいい」
「いけません。かの家は何をしてくるか分からない……もし、お父様が害されようものなら私は独りぼっちになってしまうのですよ? そんなのは嫌です」
「そのようなことある訳がない」
「あります。ですから、一人娘が誰とも知らぬ男の子供を妊娠したなんていう、とんでもない醜聞が広がれば我が家の名は地に落ち……トッドリア侯爵は満足します。お父様、お願いです。私はお父様を失いたくないのです」
「アネモネ……」

 結局私にとても甘いお父様はすべて許してくださった。

「どこの馬の骨の子供だろうが、半分はアネモネの子! きっと可愛いに違いない、あのナルクの血が入った方が恐ろしいものな!」
「そうです、きっとこの子は優秀で可愛くて、ウィンフィールド公爵家の素晴らしい跡取りになります!」
「そうだな、父親がどこの誰か分からんなら、そいつにアネモネをくれてやる必要もない! うむ、これは考えようによっては素晴らしいな~! ハッハッハ!」

 寝込んだのは忘れたのか、お父様は上機嫌で私と私の子供を愛すると誓ってくれた。お父様、大好きです。

感想 65

あなたにおすすめの小説

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。

白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。 けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。 それでも旦那様は優しかった。 冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。 だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。 そんなある日、彼女は知ってしまう。 旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。 彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。 都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る 静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。 すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。 感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく

幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。

たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。 彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。 『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』 「……『愛している』、ですか」 いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。

すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜

まりー
恋愛
   ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。  でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。    

幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました

ゆぷしろん
恋愛
公爵令嬢レティシアは、家同士の都合で伯爵アルフレッドに嫁ぐ。 けれど夫は結婚後もずっと幼馴染のシルヴィばかりを優先し、婚礼の夜から夫婦として触れ合おうともしなかった。名ばかりの妻として伯爵家を支え、領地経営まで立て直しても、彼にとってレティシアは“都合のいい伯爵夫人”でしかない。 やがて結婚一周年の夜、アルフレッドが自分を手放す気はない一方で、幼馴染を屋敷に迎え入れようとしている会話を聞いてしまったレティシアは、ついに決意する。 ――もう、この結婚には見切りをつけよう。 夜明け前、彼女は離縁の準備を整え、伯爵邸を出奔。 身を寄せた北の港町で薬舗を手伝いながら、自分の力で生きる穏やかな日々を手に入れていく。そこで出会ったのは、身分ではなく一人の女性として彼女を尊重してくれる青年医師ノアだった。 一方、都合よく尽くしてくれる妻を失ったアルフレッドは、ようやく自分が何を失ったのかを思い知ることになる。 幼馴染ばかりを優先する婚約者との白い結婚に終止符を打ち、傷ついた公爵令嬢が新天地で本当の幸せを掴む、離縁から始まる逆転ラブストーリー。

婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」

佐藤 美奈
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」 アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。 「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」 アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。 気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。

王太子妃候補を辞めたら、殿下は招待状ひとつ出せないようです

鈍色シロップ
恋愛
地味で可愛げがないから、婚約破棄? 「わかりましたわ、フレデリック殿下。では私は、王太子妃候補としての仕事からも手を引かせていただきます」 侯爵令嬢クラリエッタに切り捨てられたその日から、王宮は少しずつ狂い始める。 招待状は乱れ、席次は崩れ、茶会はぎこちなく綻んでいく。 ――王太子は、まともな招待状ひとつ出せなかった。 彼女が担っていたのは、ただの補佐ではない。 王宮の社交と体面、そのものだったのだ。 そして、そんな彼女の価値を最初から見抜いていた第二王子ロレンツが、静かに手を差し伸べる。 婚約破棄された侯爵令嬢の、実務ざまぁと再評価の物語。 ※複数のサイトに投稿しています。