【完結】悪役二人にヒロイン一人でどこへゆく?私の推しは貴方じゃないの!

鏑木 うりこ

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18 さざなぐ夜会へ

 オスカーが指定した夜会当日。ラヴァール伯爵にエスコートされ入って来たキャロラインはざわめきと好奇の目に晒された。しかしそれに少しも怯むことなく、品の良い微笑みを浮かべる。

「ラヴァール伯爵、宜しいのですか?」

 オスカー様の悪だくみに乗ってしまって、そこまでは言わずに問いかける。

「なぁに、年寄の暇をつぶしてくださると殿下がおっしゃるのだ。そしてキャロライン嬢をエスコートできる栄誉を手放すのは惜しいじゃろう?」

 と、茶目っ気たっぷりにウインクするのでキャロラインも笑い返す。

 開会の挨拶があり、ラヴァール伯爵は自分の旧知にキャロラインを紹介する。

「故あって我が家でお預かりしているお嬢さんだ。名前はキャロライン。家名は……訳ありでの、勘弁してもらえるか?」

 伯爵より少し下がった位置で、きれいにお辞儀をする。口は挟まず、笑顔を浮かべるだけだ。

「ほう、そうですか。今宵は楽しまれていかれよ」

 和やかな会話は流れているも、滲む侮蔑は隠しきれていない。キャロラインが隣の国で王太子に婚約破棄され、公爵家を追い出されたという事実は、ここに居る貴族ほぼ全員が把握済みだと言っても過言ではない。しかし、それもあまり夜会にはでないミシェール王女とオスカー王子が来ると話はガラリと変わった。

「キャロライン」

 ミシェール王女は挨拶をすべき人に軽く済ませると、すぐさまキャロラインを名指しで呼びつけたのだ。

「伯爵、行ってまいりますね」

「おお、そうじゃの。わしは皆と話をしているからゆっくりしておいで」

「お気遣い感謝いたします」

 体にぶれもなく、ケチのつけようもないきれいな礼をして、キャロラインは人ごみの中を滑るように歩いてゆく。ぶつかりそうになるも、するりするりとまるで踊るように抜けてゆくのだ。
 その後ろ姿を満足そうに眺めているラヴァール伯爵に、彼の旧知は声をかける。

「伯爵、あの美しい令嬢はミシェール王女と懇意にしているのですか?」

 完璧な王女と何かつながりが?そう聞きたいのだろう。

「懇意どころか、キャロライン嬢を我が家でお預かりするのは、ミシェール様から直接お願いされた事ゆえ。彼女とミシェール王女はとても仲の良い友人関係を築いておられます。良く我が家に王女様が来られますぞ」

「な、なんですと……?あの傷物令嬢がまさか王女様と……」

「お声を小さく。傷物などと……王女とキャロライン嬢は友人と申したではないですか。友人を悪く言う者を王女は快くは思わないでしょうな」

 はっと慌てて口を噤む友人に、ラヴァール伯爵はにやりと笑って見せる。

「キャロライン嬢はただの令嬢に非ず、ですぞ。ワシは思うのですがあれほどの令嬢が理由もなく婚約破棄をされるものでしょうか?もしや、何かがあるのでは?と年寄は勘ぐってしまいたくなるのです」

「ほう?伯爵はあの令嬢自らそれを望み、のではないかとお考えなのですね?」

 ラヴァール伯爵はそれに白とも黒とも答えずに、好々爺の表情を崩さない。

「聞くところによると、件の王太子。公爵令嬢を手酷く捨て、子爵令嬢を婚約者に据えたとか。子爵令嬢について悪い噂は聞きませぬが……王太子たるものの後ろ盾としては……」

「然り……」

「かの子爵令嬢、実はミシェール様とご友人と噂もありますな」

 別の貴族が口を挟む。情報は夜会の花だ。

「子爵令嬢は、あのシャンプーの開発者であるらしいと」

「だが身分が足りぬのではないか?王太子の婚約者としては……」

 真実はともかくとして、噂は広がってゆく。それはミシェールとオスカーが意図した方向へと、広く広く浸透していった。

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