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リーインクール
38 あのキャロラインが(レイジット視点)
私はレイジット・フィクサ。この国ではない隣の国の侯爵の息子で、自分で言うのもなんだが、まあ恵まれた環境で育ってきた。まず、王太子であるセドリック様と同じ年に生まれたので、宰相として働く父の力もあり、子供のころから友人として育ってきた。
同じく公爵令嬢のキャロライン・エンディルも友人とギリギリ言えるだろう。セドリック様とキャロラインは早いうちから婚約をしてこの国の行く末はまあ安泰かと思えば、キャロラインは国外追放になり、子爵令嬢を庇ったセドリック様は国王よりお叱りを受ける始末。
このままではセドリック様の未来は明るくない。友人としてセドリック様の右腕になるべく励んできた私は打開すべく隣国リーインクールに足を運んだのだが……。
「ルーザ、何をそんなに勉強をしているんですか?」
リーインクールでは宿ではなく、キャロラインとその弟のルーザがお世話になっているラヴァール伯爵の邸宅にお邪魔していた。伯爵は人の良さそうな方で素晴らしく気持ちの良い方だ。その一室でルーザは毎日唸りながら机にかじりつき、何かを勉強しているようだった。
「あ、レイジット様……実はこのリーインクール国の歴史とマナーと……まあ、色々なんですがなかなか覚えるのが難しく」
「何故、この国の勉強を?」
ルーザは視線を逸らして、小さな声で呟くように言った。
「あの、姉上が……ここの歴史、マナー、それに加え貴族名鑑まですべて諳んじておられるのです。あの姉上がです」
「……本当ですか?あのキャロラインが?」
キャロラインと言えば見た目は非常に美しいのですが、振る舞いが粗雑で目に余るものがありました。そして物覚えが悪く、勉強も嫌い。学園の成績など我々はトップクラスに居るのに下から数えた方が早い始末。
はっきり言えば馬鹿なのですが、それが全部覚えている?まさか。
「本当なんです。だからあの姉上が覚えられる事なら、私なら簡単に出来ると思い……興味本位で見てみるとこれがまた難しく……。悔しいんです!」
「は、はは……なるほど。私にも少し見せてもらえませんか?」
確かにあのキャロラインにできて自分に出来ないのはルーザにとっては悔しい事でしょう。
「貴族の顔なんて覚えてないわよ。笑っていれば何とかなるってお父様もおっしゃっていたわ。それに私はセドリック様と結婚して王妃になるんだから、そんなの下の者に任せておけばいいのよ!」
と、常日頃から言い放っていたくらいである。王妃だから覚えなければいけないだろうと何度か言ったことがあるが
「うるさい!うるさい!」
と、癇癪を起されて面倒になった思い出しかない。王子妃教育もなんとかギリギリで通過したとか聞いていたし、王妃教育はまだまだかかると教育係がため息をついていたのも聞いている。
それでもまだ現王も現王妃もご健在だからゆっくりやれば形にはなるだろうと言われていたはずだ。
「あのキャロラインがねえ……」
我が国の歴史書の倍はありそうな厚さの教本をルーザから手渡され、私は少しぎょっとした。
「本当に、これを?」
「ええ……なかなか複雑で難しいです。似た名前も多く……。不覚にも少し姉上を見直してしまいました」
文字も小さく読み進めるのになかなか時間がかかりそうだ。しかし、私もルーザも学ぶことは好きな方だ。当初の目的を忘れ、二人で本を読み始めてしまったのは仕方がないことであった。
同じく公爵令嬢のキャロライン・エンディルも友人とギリギリ言えるだろう。セドリック様とキャロラインは早いうちから婚約をしてこの国の行く末はまあ安泰かと思えば、キャロラインは国外追放になり、子爵令嬢を庇ったセドリック様は国王よりお叱りを受ける始末。
このままではセドリック様の未来は明るくない。友人としてセドリック様の右腕になるべく励んできた私は打開すべく隣国リーインクールに足を運んだのだが……。
「ルーザ、何をそんなに勉強をしているんですか?」
リーインクールでは宿ではなく、キャロラインとその弟のルーザがお世話になっているラヴァール伯爵の邸宅にお邪魔していた。伯爵は人の良さそうな方で素晴らしく気持ちの良い方だ。その一室でルーザは毎日唸りながら机にかじりつき、何かを勉強しているようだった。
「あ、レイジット様……実はこのリーインクール国の歴史とマナーと……まあ、色々なんですがなかなか覚えるのが難しく」
「何故、この国の勉強を?」
ルーザは視線を逸らして、小さな声で呟くように言った。
「あの、姉上が……ここの歴史、マナー、それに加え貴族名鑑まですべて諳んじておられるのです。あの姉上がです」
「……本当ですか?あのキャロラインが?」
キャロラインと言えば見た目は非常に美しいのですが、振る舞いが粗雑で目に余るものがありました。そして物覚えが悪く、勉強も嫌い。学園の成績など我々はトップクラスに居るのに下から数えた方が早い始末。
はっきり言えば馬鹿なのですが、それが全部覚えている?まさか。
「本当なんです。だからあの姉上が覚えられる事なら、私なら簡単に出来ると思い……興味本位で見てみるとこれがまた難しく……。悔しいんです!」
「は、はは……なるほど。私にも少し見せてもらえませんか?」
確かにあのキャロラインにできて自分に出来ないのはルーザにとっては悔しい事でしょう。
「貴族の顔なんて覚えてないわよ。笑っていれば何とかなるってお父様もおっしゃっていたわ。それに私はセドリック様と結婚して王妃になるんだから、そんなの下の者に任せておけばいいのよ!」
と、常日頃から言い放っていたくらいである。王妃だから覚えなければいけないだろうと何度か言ったことがあるが
「うるさい!うるさい!」
と、癇癪を起されて面倒になった思い出しかない。王子妃教育もなんとかギリギリで通過したとか聞いていたし、王妃教育はまだまだかかると教育係がため息をついていたのも聞いている。
それでもまだ現王も現王妃もご健在だからゆっくりやれば形にはなるだろうと言われていたはずだ。
「あのキャロラインがねえ……」
我が国の歴史書の倍はありそうな厚さの教本をルーザから手渡され、私は少しぎょっとした。
「本当に、これを?」
「ええ……なかなか複雑で難しいです。似た名前も多く……。不覚にも少し姉上を見直してしまいました」
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