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友の名は
11 テクニックです!
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「なんでクランハウスがあるのにファルが住んでないのよ!」
「やだよ。これ以上変な名前つけられるの。それに何?貴族の呼び出し?知らないし。俺は行かない」
「ファル~~!」
「いいか!「月の唄声」として受けんなよ!個人個人でだからな!」
俺たちはギルド宛に来た使命依頼の内容を聞きに伯爵邸まで足を伸ばしていた。断る予定だが、行くだけは!とサラに頼まれたので仕方がなくだ。
貴族は嫌いだ。役に立たん。
「良くぞ参った!「月の唄声」の諸君」
大仰に太ったホルツ伯爵という人物が上から目線で話しかけてくる。うん、ないな。
「さて、今日諸君を呼び出したのは魔獣退治を頼みたくてな。報酬は弾むぞ!」
「伯爵。この度はご指名頂きありがとうございます。しかし我々「月の唄声」は戦闘に向かないものもおります。クランとしてではなく、個人個人として契約をと考えておりますが、よろしいでしょうか?」
「かまわん。その代わり、その分の褒美は減らさせてもらうぞ。元々5人と契約の予定だったのだからな」
「月の唄声」は5人クランだ。同然だな。
「我領地の近くに魔獣ヒュドラが出没してな、民が犠牲になっておる。なんとかして貰えぬだろうか」
「ヒュドラ……」
全員の顔がこっちを向くが、俺は首を横に振ろうとして
「受けても良い」
ヒュドラだもんな?良いぜ!
「クランで受けても良い。でも一つだけ」
「どうしたのファル?」
この条件を飲んでくれればだがな?
「ヒュドラ一体につき、幾らの報酬になるんだ?」
いい具合に話は纏まった。基本50万ギル。ヒュドラ一体につき50万。討伐証明はヒュドラ撃破時にほぼ確実にドロップするヒュドラの大鱗だ。
つまりは大鱗を一枚50万ギルで買い取るということ。
「ファルが言うから書面にも書いてもらったわよ?」
そして、持ってきた大鱗はすべて買い取ると明記してある。よしよし!
貴族から毟り取ってやる!
指定された場所へつく。普通こんな所にヒュドラはいない。と言うことは
「誰か逃したか、呼び出したか。大方あの伯爵が一枚噛んでるんだろう?面白がって買い求め、手に負えなくなった。そんな感じ」
「同感です……」
ナディアが目を伏せる。ヒュドラにしても良い迷惑だろう。だがまあ、人死が出てるんじゃ狩るしかない。
すぐにヒュドラは見つかった。
「2体だな」
「厄介ね」
サラが県を構えた。良しやるか
「サラ、アイーダ。ヒュドラの首を切り落とせ。ナディアは支援を。ファーナは解毒薬の準備を。毒があるからな!」
「え?だって……」
「大丈夫だから、やれ!」
「わ、分かったわ!どうにでもなれー!」
ヒュドラは頭が4つあるモンスターだ。そして特筆すべきは……
「やっぱり!再生してるよ!」
「斬った頭が元に戻るっ!」
その脅威の再生能力。
「ひぃ!!」
ファーナが悲鳴を上げる。
「あ……あああ……!切り取った頭が……!」
むくむくと膨らんで行く。最初のヒュドラには頭が4つあり、サラが3つ、アイーダが1つ切り落とした。つまりは
「元々いたヒュドラと頭から再生したヒュドラが3体……嘘でしょ……ヤバいわ!ファル!!」
合計4体のヒュドラに囲まれる。
「?!避けて!」
ナディアの声にサラは反応したが、アイーダは遅れる。しゃっ!と空気を裂くような音がしてしたと思ったら
「うっ?!」
「アイーダ!」
咄嗟に目を庇ったのは上出来だったが
「ぐっ……っ!ど、毒……!」
立っていられないほどの目眩と吐き気に襲われる。直後パリーンと音がして、ハーブのスーッと心地よい香りがアイーダを包み、毒を中和する。
「ファーナ!サンキュー!」
ぱっとその場を飛び去ると、振り下ろされるヒュドラの尻尾を切り落とした。
尻尾もブルブルと震え、膨らみ始める。
「尻尾からでも増えるのか!」
「これ!剣じゃ分が悪いわ!ファル!どうするのよ!?」
え?俺?俺に聞くの??
「どうするもこうするも」
魔導師たるものする事は一つ。杖をちょっと掲げて
「氷の嵐」
バギバギバキッ!ヒュドラが凍り付いて行く。あいつら寒さに弱いからね。完全な凍りつくとパキーン!と高い音をたてて弾けた。後にはヒュドラの大鱗を含めたドロップ品が3体分残った。
「え」
「は?」
「一発……?」
「弱点つけばこんなもんっしょ?」
「出た……非常識……」
俺は大鱗を拾いあげる。
「さ、どんどん行こうか?サラ、アイーダどんどん切って増やしてくれ。ファーナ、ナディアどんどん拾うぞ」
「え」
「は?」
「嘘」
「ヒュドラってそういう戦い方するモンスターでしたっけ?」
「そうだよ。無限増殖は基本っしょ?」
いやいやいやいや?!
チートじゃないぞ!テクニックだよ!!!
「やだよ。これ以上変な名前つけられるの。それに何?貴族の呼び出し?知らないし。俺は行かない」
「ファル~~!」
「いいか!「月の唄声」として受けんなよ!個人個人でだからな!」
俺たちはギルド宛に来た使命依頼の内容を聞きに伯爵邸まで足を伸ばしていた。断る予定だが、行くだけは!とサラに頼まれたので仕方がなくだ。
貴族は嫌いだ。役に立たん。
「良くぞ参った!「月の唄声」の諸君」
大仰に太ったホルツ伯爵という人物が上から目線で話しかけてくる。うん、ないな。
「さて、今日諸君を呼び出したのは魔獣退治を頼みたくてな。報酬は弾むぞ!」
「伯爵。この度はご指名頂きありがとうございます。しかし我々「月の唄声」は戦闘に向かないものもおります。クランとしてではなく、個人個人として契約をと考えておりますが、よろしいでしょうか?」
「かまわん。その代わり、その分の褒美は減らさせてもらうぞ。元々5人と契約の予定だったのだからな」
「月の唄声」は5人クランだ。同然だな。
「我領地の近くに魔獣ヒュドラが出没してな、民が犠牲になっておる。なんとかして貰えぬだろうか」
「ヒュドラ……」
全員の顔がこっちを向くが、俺は首を横に振ろうとして
「受けても良い」
ヒュドラだもんな?良いぜ!
「クランで受けても良い。でも一つだけ」
「どうしたのファル?」
この条件を飲んでくれればだがな?
「ヒュドラ一体につき、幾らの報酬になるんだ?」
いい具合に話は纏まった。基本50万ギル。ヒュドラ一体につき50万。討伐証明はヒュドラ撃破時にほぼ確実にドロップするヒュドラの大鱗だ。
つまりは大鱗を一枚50万ギルで買い取るということ。
「ファルが言うから書面にも書いてもらったわよ?」
そして、持ってきた大鱗はすべて買い取ると明記してある。よしよし!
貴族から毟り取ってやる!
指定された場所へつく。普通こんな所にヒュドラはいない。と言うことは
「誰か逃したか、呼び出したか。大方あの伯爵が一枚噛んでるんだろう?面白がって買い求め、手に負えなくなった。そんな感じ」
「同感です……」
ナディアが目を伏せる。ヒュドラにしても良い迷惑だろう。だがまあ、人死が出てるんじゃ狩るしかない。
すぐにヒュドラは見つかった。
「2体だな」
「厄介ね」
サラが県を構えた。良しやるか
「サラ、アイーダ。ヒュドラの首を切り落とせ。ナディアは支援を。ファーナは解毒薬の準備を。毒があるからな!」
「え?だって……」
「大丈夫だから、やれ!」
「わ、分かったわ!どうにでもなれー!」
ヒュドラは頭が4つあるモンスターだ。そして特筆すべきは……
「やっぱり!再生してるよ!」
「斬った頭が元に戻るっ!」
その脅威の再生能力。
「ひぃ!!」
ファーナが悲鳴を上げる。
「あ……あああ……!切り取った頭が……!」
むくむくと膨らんで行く。最初のヒュドラには頭が4つあり、サラが3つ、アイーダが1つ切り落とした。つまりは
「元々いたヒュドラと頭から再生したヒュドラが3体……嘘でしょ……ヤバいわ!ファル!!」
合計4体のヒュドラに囲まれる。
「?!避けて!」
ナディアの声にサラは反応したが、アイーダは遅れる。しゃっ!と空気を裂くような音がしてしたと思ったら
「うっ?!」
「アイーダ!」
咄嗟に目を庇ったのは上出来だったが
「ぐっ……っ!ど、毒……!」
立っていられないほどの目眩と吐き気に襲われる。直後パリーンと音がして、ハーブのスーッと心地よい香りがアイーダを包み、毒を中和する。
「ファーナ!サンキュー!」
ぱっとその場を飛び去ると、振り下ろされるヒュドラの尻尾を切り落とした。
尻尾もブルブルと震え、膨らみ始める。
「尻尾からでも増えるのか!」
「これ!剣じゃ分が悪いわ!ファル!どうするのよ!?」
え?俺?俺に聞くの??
「どうするもこうするも」
魔導師たるものする事は一つ。杖をちょっと掲げて
「氷の嵐」
バギバギバキッ!ヒュドラが凍り付いて行く。あいつら寒さに弱いからね。完全な凍りつくとパキーン!と高い音をたてて弾けた。後にはヒュドラの大鱗を含めたドロップ品が3体分残った。
「え」
「は?」
「一発……?」
「弱点つけばこんなもんっしょ?」
「出た……非常識……」
俺は大鱗を拾いあげる。
「さ、どんどん行こうか?サラ、アイーダどんどん切って増やしてくれ。ファーナ、ナディアどんどん拾うぞ」
「え」
「は?」
「嘘」
「ヒュドラってそういう戦い方するモンスターでしたっけ?」
「そうだよ。無限増殖は基本っしょ?」
いやいやいやいや?!
チートじゃないぞ!テクニックだよ!!!
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