52 / 71
魔のモノ
52 ビッグウェーブに乗る
しおりを挟む
「魔王!生意気に人間どもが攻めて来たぜ?」
王宮で大地を呪う方法の講義を受けていた所にレウリルさんがやって来た。
大きな声で何故か嬉しそうなのが不思議だ。
「殺して良いよな!」
「構わん」
やり取りは短かったが、俺は複雑だ。レウリルさんが闘う相手は人間だ。そしてレウリルさんの仲間は俺が怪我を治した魔獣人達だ。
「ヨシュア、この流れは複雑だな」
「……はい」
あの時は死にたくない一心でできる事をした。そしてとても喜ばれたと思う。
しかし、そのせいで人間が死ぬのだろう。魔獣人はとても強い。
今日も俺は魔王の隣にいた。元マロードの王の間、玉座に魔王が座り、その隣に小さめな椅子が置かれていて、俺はそこに腰を下ろしている。
今日も魔王の話を聞いている。意外と魔王は講義が好きだ。
「王よ!」
大きな扉が開かれる。
「人間がこの城に攻めてきた!」
「ほう?人間ごときに獣魔人が遅れを取ったのか?」
マロードは椅子に座ったままだが、機嫌は悪くなった。最近ずっとそばにいるせいか、魔王の心の機微に気付くようになっている。
「それが……あいつら、妙に攻撃はいえぇし、防御はかてぇし。近寄ると気持ち悪いし。何か違うぞ」
「だが、人間だろう!」
「そ、そうなんだが……!もう近くまで来てんだ」
魔王の機嫌は真っ逆さまだ。
「お前達は一体なんの為にいると思っているんだ?煩わしい有象無象を払うためだぞ?役に立たないのなら、処分するぞ!」
イライラと不機嫌を募らせる魔王と、隣に座る俺の耳にもそのやけに強い人間の声が聞こえた。
がたり!俺は椅子を倒して立ち上がる。
だって、この声は!
「お父様!!!!」
「ヨシュア!!!こっちか!」
開け放たれたままの扉から、人が飛び込んで来た!お父様!!
「ヨシュア!無事かーーー!あ?」
「おと……違う……」
感動の再会をしたのは
「ヨシュアか?!?!?!」
「ジュリアスさん…お父様は?!」
ジュリアスさんの後ろから走り込んで来る!
「お父様!!」
「ヨシュア!!」
今度こそ本物のお父様だ!以前より、痩せておられる気がするが、眼光は鋭い。剣を手に持ち、あちこち怪我をしているようだ。お父様!ご無事で良かった!
「ヨシュアだな!!」
「はい!お父様!私です!」
「ヨシュア!」「ヨシュア!どこ?!」「ヨシュアーーー!」
お兄様とお姉様の声がする。
「ここです!私はここです!!」
「ヨシュアーー!俺だー!」
レンだ!レンの声もする!
「レン!こっち!!」
黒い弾丸のように猫が走り込んでくる。
「ヨシュア!ヨシュア!無事だったッスか?!!!うお!ヨシュア!成長期ッスね!めちゃでかくなってるッス!」
「レン!良かった、レンなら分かってくれるって信じてた!」
ぽろ、ぽろぽろ、溢れる。
「大丈夫!皆んな分かるッスよ!ちょびっと大きくなってもヨシュアはヨシュアッス!」
レンの言葉に胸が熱くなる。ぽろぽろ、ぽろぽろ。
「ちょっと待つッスよ!さあ!ジュリー!ヨシュアを取り戻すッス……うわああああ!!誰にやられたッスかーーーーー?!」
ぼた、ぼだだだだだ…!ジュリアスさんはいつの間にか血塗れになっている!ひい!大怪我?!どこで?!
「よ、ヨシュア、ヨシュアだ、よな?何、ど、したの?その姿……」
「そんな事はどうでも良いじゃないですか!お父様!お兄様!お姉様あ!!!」
久しぶりに家族と会えた!レンとも会えた!嬉しい!皆んな無事だった!嬉しい!嬉しい!嬉しい!!
「ジュリー!しっかりするッス!魔王を倒してヨシュアを助けるンス!ジュリーの勇者修行の成果を見せる時ッス!」
「いや、待てレン。ヨシュアは一体どうしたんだ?14か15くらいか?可愛すぎないか?可憐過ぎないか?モロ好みすぎじゃねぇか?何あの笑顔!天使?天使?大天使?むしろ神?女神様かな?俺、ジュールにしごかれ過ぎて死んだ?召された?幻覚なの?幻影なの?俺の妄想が作り出した完璧なる花嫁なの?そうなのか??ああ!駄目、駄目だ!も、もう!耐えられん!あああ!ヨシュアヨシュアヨシュア!俺の命!俺の全て!は、早く、こここここの手にににににににいいいいいいーーーー!」
ぶばぁああーーっと血の噴水を作り上げる。
「げっ?!鼻血?!ジュリー!何やってンスか!ヨシュアを!ヨシュアを!……ヨシュア?」
「みんな、みんな……」
久しぶりの家族の顔に感極まった俺は……
「皆んなあああーーーー!」
ぼろぼろぼろ…ドドドドドド……!
どっぱーーん!!
「た、玉のビッグウェーブやああああーーー!」
「ヨシュアあああーー!」
「うわーーー!ちょっとおおお!」
「て、撤退ッスーーー!戦略的撤退ッスーーーーヨシュアあーーすぐ来るからなーーー!」
「あ……」
今まで出なかった分を差し引いても余りあるくらいの玉を生産して……玉の大津波に乗せて、全員を押し流してしまった。
ふわふわと優しい色合いだが、激流に残った者は俺と、俺の後ろ側にいた魔王様だけだった。
「……」
「……な、なんだか…とても……すいません」
とりあえず謝っておいた。俺は助けを自分で台無しにしてしまった……。こんなビッグウェーブ要らないよ……。
王宮で大地を呪う方法の講義を受けていた所にレウリルさんがやって来た。
大きな声で何故か嬉しそうなのが不思議だ。
「殺して良いよな!」
「構わん」
やり取りは短かったが、俺は複雑だ。レウリルさんが闘う相手は人間だ。そしてレウリルさんの仲間は俺が怪我を治した魔獣人達だ。
「ヨシュア、この流れは複雑だな」
「……はい」
あの時は死にたくない一心でできる事をした。そしてとても喜ばれたと思う。
しかし、そのせいで人間が死ぬのだろう。魔獣人はとても強い。
今日も俺は魔王の隣にいた。元マロードの王の間、玉座に魔王が座り、その隣に小さめな椅子が置かれていて、俺はそこに腰を下ろしている。
今日も魔王の話を聞いている。意外と魔王は講義が好きだ。
「王よ!」
大きな扉が開かれる。
「人間がこの城に攻めてきた!」
「ほう?人間ごときに獣魔人が遅れを取ったのか?」
マロードは椅子に座ったままだが、機嫌は悪くなった。最近ずっとそばにいるせいか、魔王の心の機微に気付くようになっている。
「それが……あいつら、妙に攻撃はいえぇし、防御はかてぇし。近寄ると気持ち悪いし。何か違うぞ」
「だが、人間だろう!」
「そ、そうなんだが……!もう近くまで来てんだ」
魔王の機嫌は真っ逆さまだ。
「お前達は一体なんの為にいると思っているんだ?煩わしい有象無象を払うためだぞ?役に立たないのなら、処分するぞ!」
イライラと不機嫌を募らせる魔王と、隣に座る俺の耳にもそのやけに強い人間の声が聞こえた。
がたり!俺は椅子を倒して立ち上がる。
だって、この声は!
「お父様!!!!」
「ヨシュア!!!こっちか!」
開け放たれたままの扉から、人が飛び込んで来た!お父様!!
「ヨシュア!無事かーーー!あ?」
「おと……違う……」
感動の再会をしたのは
「ヨシュアか?!?!?!」
「ジュリアスさん…お父様は?!」
ジュリアスさんの後ろから走り込んで来る!
「お父様!!」
「ヨシュア!!」
今度こそ本物のお父様だ!以前より、痩せておられる気がするが、眼光は鋭い。剣を手に持ち、あちこち怪我をしているようだ。お父様!ご無事で良かった!
「ヨシュアだな!!」
「はい!お父様!私です!」
「ヨシュア!」「ヨシュア!どこ?!」「ヨシュアーーー!」
お兄様とお姉様の声がする。
「ここです!私はここです!!」
「ヨシュアーー!俺だー!」
レンだ!レンの声もする!
「レン!こっち!!」
黒い弾丸のように猫が走り込んでくる。
「ヨシュア!ヨシュア!無事だったッスか?!!!うお!ヨシュア!成長期ッスね!めちゃでかくなってるッス!」
「レン!良かった、レンなら分かってくれるって信じてた!」
ぽろ、ぽろぽろ、溢れる。
「大丈夫!皆んな分かるッスよ!ちょびっと大きくなってもヨシュアはヨシュアッス!」
レンの言葉に胸が熱くなる。ぽろぽろ、ぽろぽろ。
「ちょっと待つッスよ!さあ!ジュリー!ヨシュアを取り戻すッス……うわああああ!!誰にやられたッスかーーーーー?!」
ぼた、ぼだだだだだ…!ジュリアスさんはいつの間にか血塗れになっている!ひい!大怪我?!どこで?!
「よ、ヨシュア、ヨシュアだ、よな?何、ど、したの?その姿……」
「そんな事はどうでも良いじゃないですか!お父様!お兄様!お姉様あ!!!」
久しぶりに家族と会えた!レンとも会えた!嬉しい!皆んな無事だった!嬉しい!嬉しい!嬉しい!!
「ジュリー!しっかりするッス!魔王を倒してヨシュアを助けるンス!ジュリーの勇者修行の成果を見せる時ッス!」
「いや、待てレン。ヨシュアは一体どうしたんだ?14か15くらいか?可愛すぎないか?可憐過ぎないか?モロ好みすぎじゃねぇか?何あの笑顔!天使?天使?大天使?むしろ神?女神様かな?俺、ジュールにしごかれ過ぎて死んだ?召された?幻覚なの?幻影なの?俺の妄想が作り出した完璧なる花嫁なの?そうなのか??ああ!駄目、駄目だ!も、もう!耐えられん!あああ!ヨシュアヨシュアヨシュア!俺の命!俺の全て!は、早く、こここここの手にににににににいいいいいいーーーー!」
ぶばぁああーーっと血の噴水を作り上げる。
「げっ?!鼻血?!ジュリー!何やってンスか!ヨシュアを!ヨシュアを!……ヨシュア?」
「みんな、みんな……」
久しぶりの家族の顔に感極まった俺は……
「皆んなあああーーーー!」
ぼろぼろぼろ…ドドドドドド……!
どっぱーーん!!
「た、玉のビッグウェーブやああああーーー!」
「ヨシュアあああーー!」
「うわーーー!ちょっとおおお!」
「て、撤退ッスーーー!戦略的撤退ッスーーーーヨシュアあーーすぐ来るからなーーー!」
「あ……」
今まで出なかった分を差し引いても余りあるくらいの玉を生産して……玉の大津波に乗せて、全員を押し流してしまった。
ふわふわと優しい色合いだが、激流に残った者は俺と、俺の後ろ側にいた魔王様だけだった。
「……」
「……な、なんだか…とても……すいません」
とりあえず謝っておいた。俺は助けを自分で台無しにしてしまった……。こんなビッグウェーブ要らないよ……。
111
あなたにおすすめの小説
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる