【完結】シュガーのどくやく屋さんへようこそ〜うかつに触ると死にますよ?〜

鏑木 うりこ

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人族の街

21 普通の冒険者

 俺は朝から街から出て、森へ来ていた。

「はあ…なかなかたまらなーい」

 ぷちり、ぷちりと薬草を摘んで行く。薬草摘みは苦手な作業の1つだ。地味だし、なかなか採れない。この辺りは土地が痩せているから、質の良い草が少ない。
 低級の冒険者も薬草摘みより、魔物狩りの方に皆行ってしまう。そっちの方が稼ぎが良いもんな。だからいつまでたってもポーションは在庫切れだし、薬師はへっぽこばっかりだ。
 いてて、と腰を伸ばして一休みする。今日は朝から1人で薬草摘みに来ていた。材料が無ければ薬は作れないのだ!

「あーそろそろかー?」

 一旦手を止め、辺りを捜索する。おお、落ちてる落ちてる。
 
 ビクビクと足や首を痙攣させながら、動物や魔物がゴロゴロと転がっている。

「揮発性の麻痺毒、効き目良いじゃない!」

 腰から下げた袋には、無臭ながらやば目の効果が出る毒が仕込んである。採取の邪魔だから、魔物なんかを寄せ付けない為に用意したのだが、これが中々良い収穫になるのだ。
 麻痺して動けない兎にとどめを刺し、アイテムボックスに放り込む。毒性があるものは慎重に取り扱い、後で抽出する。街のそばの森に現れる魔物でも、中々良い毒を持っている奴もいる。

「この麻痺毒だってその辺のクモだもんなー。」

 クモに感謝しつつ、副産物を集める。副産物の方がたくさん集まるやつな!ついでに言うと…土地が痩せている上に、魔物が多く嫌な血や魔力が流れるので…

「おお、マンドラゴラ~!」

 耳栓をつけてそっと掘り起こす。

「おー可愛いでちゅねー!」

 そーっとそーっと慎重に掘り出して、良いところまで出したら気づかれる前に麻痺針を一発。黒狼も転がすレベルだから、マンドラゴラなど叫ぶ前に回収だ。
 あとは活け締めにして美味しく調合させていただく!絶望に満ちた顔でこっちを見ても遅いんだぜ、へへへ…!

 薬草のより魔法種や毒草の方がたくさん手に入る。楽しい!
 昼飯に用意してきたパンを食べ、茶を飲み夕暮れ近くまで草むしりに勤しむ。1週間は持つくらいの薬草は集まった。持っててよかった、アイテムボックス。
 忘れずに麻痺袋を外し、門番さんに挨拶をして街へ戻る。冒険者ギルドに顔を出し、家に帰る。普通の冒険者と変わらない。全く普通だ。

 アホに巻き込まれたせいでしばらく毒薬屋さんは休業で、貧民街にも居られなくなった俺は、オヤジの口利きで普通の下町に家を借りて、普通の冒険者として生活する事になった。
 普通、すごく普通!ただ、どうしても毒を扱う事があるので、地下室付きの家にしてもらった。バレると厄介な事は土の下が最高だろ?

 だから俺は今は冒険者の薬屋のシュガーなのだ、ふふん。途中で夕飯を買い、家に帰る。普通の家が俺を待っている。

「……」

 誰も居ないはずの家のベッドで、何故かトビーが半分ずり落ちて寝ていた。何故かな?しばらく身を潜めるから、一緒に行動する意味なんでないのに。オヤジから依頼された仕事を、こなしてさえいれば自由なもんだから別にいいのか?
 ほっといて地下工房に向かおうとすると手を引かれ、ベッドに押し倒される。本当に暗殺者系は身のこなしが良すぎて対応にこまる。

「どうした?」

「なぐさめて」

 頭をなでなでしてやる。青い目を薄く細めてトビーは俺の上に乗っている。触れ合った所が暖かいから、まだお互いに生きている事を実感できる。

 何があったのか、どうしたのか聞くのは意味がない。何かあったから、どうかしたから心が疲れたのだろう。
 昨日、眠りながらすぐ死ねる甘い毒を売ってくれと言われて、安くはないとっておきを1本売ったこともどうでもいい事だ。ただ何かで疲れた、それでいい。
 トビーを腹の上に乗せたまま、久々のフィールドワークでクタクタの俺はそのまま眠ってしまった。

 
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