56 / 71
龍
56 こだわりの場所から
「尻……」
『しり!』
「尻……」
『もう何処でも良いわ!はよう、ひり出せ!』
俺はなんとも複雑な気持ちになる。ディの望みは叶えてやりたい!だが、そのアホ可愛い最愛をケツからアレの如く出して良いものか……?
その際に俺の尻は生き残れるのか?ご臨終を迎えてしまうのではないか?!
それは困る!これから迎えるラブラブやり直し新婚ライフで尻が死んでいるのは非常によろしくない。
そうでなくても体をトカゲが這い回ったここ10年、そっち方面はすべて断っていたのだ!この俺が!
『大丈夫だ。我らがトカゲの姿でいたのはこの時のためぞ?これ以上大きくなったら、腹を裂いて出てくるしかないわ』
俺は少しほっとした。
「レイ…お前に感謝するのは初めてかもしれない」
『……色々分からんでもないが、酷いではないか?母上殿よ』
その夜、フェルマーも泊まり込みディとレイの顕現に向けて準備を始めた。
「と、言えば聞こえは良いが、やる事は……」
「シュガー……やめましょう。考えると負けです」
土壇場になって
『やっぱりおれ、しゅがーのなかにいたい。あったかくてきもちいいのすきー』
「ディ……ありがとう!」
『良いから早よう、出ろ。後ろがつかえておる!』
「ははは……」
意外と苦もなく、俺は2匹のトカゲをぷりっとこの世界にひねり出した。
「しゅがーーさむいーだっこしてー」
「ディ!可愛い可愛い!たとえクソまみれだとしても、いくらでも抱っこするよ!おいで!!」
「クソなどついておらんわ!シュガーお主、何年まともな飯を食うてないか忘れておるじゃろ!フェルマー!我を抱っこじゃ、寒くて冬眠しそうじゃ!」
手のひらサイズのトカゲ達は出てくるなり喋る喋る。
「お湯で体を洗った方が良いんじゃないか?」
「何せ尻だしねぇ」
「しゅがーのおしりのなかはーあったくてぴ「流石にやめろーー!」」
俺の内部について、公表する必要はない!慌ててディをぬるま湯に浸けて優しく洗ってやる。
きたねぇ色は取れる訳もないが、目を細めて気持ちよさそうに俺の腕にしがみついているトカゲは本当に可愛い。
「フェルマー、レイを任せて良いのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。レイも喋る事が出来ますし、どうして欲しいかして欲しくないか、聞くことができますから。
シュガー、ごゆっくり」
「あ、うん……」
少し熱めの湯にするのじゃとレイが注文をつけている。はいはいとフェルマーは野菜を洗う桶にレイを入れて別の部屋に行ってしまった。
この部屋にはおれとトカゲのディしかいなくなる。
「しゅがーー」
間延びした声。俺の知っているディの声と似ているような似ていないような。初めて会った頃のディの声は……もう霞んで分からなくなっていた。もう20年近く前の事だもの。
絶対に忘れないと強く誓ったのに、やはり忘れていた自分に腹が立つ。
「しゅがーーー」
少し長めにディが俺の名前を呼ぶ。もう体の中には入ることが出来ないが、ここ最近そうしていたように左腕にくっついて目を閉じている。
絵だったものが立体になったようだ。
「しゅーがーーー」
「なぁに?ディ」
きゅるり、目が開いて俺を見つめる。
「だあーいすきー。こんどは、ずーーーっといっしょ、だよぉ」
「本当に?」
「ほんとだよー。おれねぇしゅがーのなかでねーしゅがーのたましいはんぶんかじっちゃったのーとってもおいしかったよー」
「え?魂食べたの?」
食べられるんだ…知らなかった。
「そーなのーでね?たましいはんぶんだとしんじゃうでしょー?だからねーおれのたましいはんぶんこにしてがったい!」
えっへん!トカゲは胸を逸らして誇らしげにぱかり、と口をあけた。
「そ、そうなの……か?それで、どうなったの?ディ」
「でねー、おれもがったい!でしょーだからねーおれとしゅがーのたましいは、はんぶんはんぶんなのーいいでしょーいっしょなんだー」
ディの話は要領を得ない。確信する、我が夫はアホの子であると。最高かよ!
「一緒だね、一緒だとずっと一緒なの?」
「そうだよーだってはんぶんこだもん。かたっぽがしんだらりょうほうしぬよーもうひとりぽっちにしないから、なかないでね、しゅがー」
「…っ!」
なかないで、ディが言う。
しゅがーのなみだはしょっぱいなぁ
薄汚いトカゲの頭の上にぽとんと落ちて水の冠が出来た。
はなみず、すすってあげよか?
汚いからやめて?
しゅがー、ぎゅーってして
ひんやりした体だが、とくとくと生きている鼓動が伝わる。
もうちょっとおおきくなったらなでなでしてあげるね!
ありがとう、とても楽しみだよ。
こんどはでるんじゃなくてはいるねー
このクソトカゲ!もう少し感動させろや!おい!
しゅがーおなかすいたーおっぱいちょーだーい
マジかよ?!出るの?!
でるよっていえばいいよってれいがいってたー。
ははは!赤トカゲのアルコール漬けでも明日作ろうかな!
用意してあった魔石をばくばくと飲み込んで、ディは俺の胸の上で丸くなった。
「あしたにはもーっとおおきくなるからねーきょうはねてもいい?」
「そうだな、俺も眠いよディ。おやすみなさい」
「おやすみ、しゅがー」
ディは頭をスリスリとすり寄せてから静かになった。俺はこの可愛い旦那様を潰さないように、飽きることなく見続けていた。
『しり!』
「尻……」
『もう何処でも良いわ!はよう、ひり出せ!』
俺はなんとも複雑な気持ちになる。ディの望みは叶えてやりたい!だが、そのアホ可愛い最愛をケツからアレの如く出して良いものか……?
その際に俺の尻は生き残れるのか?ご臨終を迎えてしまうのではないか?!
それは困る!これから迎えるラブラブやり直し新婚ライフで尻が死んでいるのは非常によろしくない。
そうでなくても体をトカゲが這い回ったここ10年、そっち方面はすべて断っていたのだ!この俺が!
『大丈夫だ。我らがトカゲの姿でいたのはこの時のためぞ?これ以上大きくなったら、腹を裂いて出てくるしかないわ』
俺は少しほっとした。
「レイ…お前に感謝するのは初めてかもしれない」
『……色々分からんでもないが、酷いではないか?母上殿よ』
その夜、フェルマーも泊まり込みディとレイの顕現に向けて準備を始めた。
「と、言えば聞こえは良いが、やる事は……」
「シュガー……やめましょう。考えると負けです」
土壇場になって
『やっぱりおれ、しゅがーのなかにいたい。あったかくてきもちいいのすきー』
「ディ……ありがとう!」
『良いから早よう、出ろ。後ろがつかえておる!』
「ははは……」
意外と苦もなく、俺は2匹のトカゲをぷりっとこの世界にひねり出した。
「しゅがーーさむいーだっこしてー」
「ディ!可愛い可愛い!たとえクソまみれだとしても、いくらでも抱っこするよ!おいで!!」
「クソなどついておらんわ!シュガーお主、何年まともな飯を食うてないか忘れておるじゃろ!フェルマー!我を抱っこじゃ、寒くて冬眠しそうじゃ!」
手のひらサイズのトカゲ達は出てくるなり喋る喋る。
「お湯で体を洗った方が良いんじゃないか?」
「何せ尻だしねぇ」
「しゅがーのおしりのなかはーあったくてぴ「流石にやめろーー!」」
俺の内部について、公表する必要はない!慌ててディをぬるま湯に浸けて優しく洗ってやる。
きたねぇ色は取れる訳もないが、目を細めて気持ちよさそうに俺の腕にしがみついているトカゲは本当に可愛い。
「フェルマー、レイを任せて良いのか?」
「ええ、大丈夫ですよ。レイも喋る事が出来ますし、どうして欲しいかして欲しくないか、聞くことができますから。
シュガー、ごゆっくり」
「あ、うん……」
少し熱めの湯にするのじゃとレイが注文をつけている。はいはいとフェルマーは野菜を洗う桶にレイを入れて別の部屋に行ってしまった。
この部屋にはおれとトカゲのディしかいなくなる。
「しゅがーー」
間延びした声。俺の知っているディの声と似ているような似ていないような。初めて会った頃のディの声は……もう霞んで分からなくなっていた。もう20年近く前の事だもの。
絶対に忘れないと強く誓ったのに、やはり忘れていた自分に腹が立つ。
「しゅがーーー」
少し長めにディが俺の名前を呼ぶ。もう体の中には入ることが出来ないが、ここ最近そうしていたように左腕にくっついて目を閉じている。
絵だったものが立体になったようだ。
「しゅーがーーー」
「なぁに?ディ」
きゅるり、目が開いて俺を見つめる。
「だあーいすきー。こんどは、ずーーーっといっしょ、だよぉ」
「本当に?」
「ほんとだよー。おれねぇしゅがーのなかでねーしゅがーのたましいはんぶんかじっちゃったのーとってもおいしかったよー」
「え?魂食べたの?」
食べられるんだ…知らなかった。
「そーなのーでね?たましいはんぶんだとしんじゃうでしょー?だからねーおれのたましいはんぶんこにしてがったい!」
えっへん!トカゲは胸を逸らして誇らしげにぱかり、と口をあけた。
「そ、そうなの……か?それで、どうなったの?ディ」
「でねー、おれもがったい!でしょーだからねーおれとしゅがーのたましいは、はんぶんはんぶんなのーいいでしょーいっしょなんだー」
ディの話は要領を得ない。確信する、我が夫はアホの子であると。最高かよ!
「一緒だね、一緒だとずっと一緒なの?」
「そうだよーだってはんぶんこだもん。かたっぽがしんだらりょうほうしぬよーもうひとりぽっちにしないから、なかないでね、しゅがー」
「…っ!」
なかないで、ディが言う。
しゅがーのなみだはしょっぱいなぁ
薄汚いトカゲの頭の上にぽとんと落ちて水の冠が出来た。
はなみず、すすってあげよか?
汚いからやめて?
しゅがー、ぎゅーってして
ひんやりした体だが、とくとくと生きている鼓動が伝わる。
もうちょっとおおきくなったらなでなでしてあげるね!
ありがとう、とても楽しみだよ。
こんどはでるんじゃなくてはいるねー
このクソトカゲ!もう少し感動させろや!おい!
しゅがーおなかすいたーおっぱいちょーだーい
マジかよ?!出るの?!
でるよっていえばいいよってれいがいってたー。
ははは!赤トカゲのアルコール漬けでも明日作ろうかな!
用意してあった魔石をばくばくと飲み込んで、ディは俺の胸の上で丸くなった。
「あしたにはもーっとおおきくなるからねーきょうはねてもいい?」
「そうだな、俺も眠いよディ。おやすみなさい」
「おやすみ、しゅがー」
ディは頭をスリスリとすり寄せてから静かになった。俺はこの可愛い旦那様を潰さないように、飽きることなく見続けていた。
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
寄るな。触るな。近付くな。
きっせつ
BL
ある日、ハースト伯爵家の次男、であるシュネーは前世の記憶を取り戻した。
頭を打って?
病気で生死を彷徨って?
いいえ、でもそれはある意味衝撃な出来事。人の情事を目撃して、衝撃のあまり思い出したのだ。しかも、男と男の情事で…。
見たくもないものを見せられて。その上、シュネーだった筈の今世の自身は情事を見た衝撃で何処かへ行ってしまったのだ。
シュネーは何処かに行ってしまった今世の自身の代わりにシュネーを変態から守りつつ、貴族や騎士がいるフェルメルン王国で生きていく。
しかし問題は山積みで、情事を目撃した事でエリアスという侯爵家嫡男にも目を付けられてしまう。シュネーは今世の自身が帰ってくるまで自身を守りきれるのか。
ーーーーーーーーーーー
初めての投稿です。
結構ノリに任せて書いているのでかなり読み辛いし、分かり辛いかもしれませんがよろしくお願いします。主人公がボーイズでラブするのはかなり先になる予定です。
※ストックが切れ次第緩やかに投稿していきます。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!
くすのき
BL
最初に謝っておきます!
漬物業界の方、マジすまぬ。
&本編完結、番外編も!
この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!
親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結。一気読みできます!】悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!