【完結】シュガーのどくやく屋さんへようこそ〜うかつに触ると死にますよ?〜

鏑木 うりこ

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57 フェルマー丸かじり

「ド、ドラゴンテイマーが…ドラゴンにテイムされ…た…」

「フェルマー…?」

 ドアの向こうから、地を這うような声が聞こえてくる。しかしドアは一向に開かない。

「大丈夫じゃ。シュガーはディアノスとたわむれておれば良い。フェルマーの事は我に任せておけ」

 やはりドアは開かれないが、レイの声がする。えっと、フェルマーがレイの世話をするんだよな?レイがフェルマーの世話をしているのか?

「……まさか37年生きてきて…6歳ほどの子供に……「元気そうじゃの?もう一回行っておこうかの?」ぎゃーーーー!」

 俺はディを抱っこしたまま、そっとドアから離れた。何か危険なことが起こっている。危険な目にあっているのはもちろんフェルマーだ……見殺しというなかれ、俺にも守らねばならんトカゲがいるのだ……!



「しゅがーおなかすいたー」

「はいはい、旦那様。ご飯食べましょうねー」

「おれにはやさしくてかわいいおくさんがいてうれしい!」

 新婚さんごっこを楽しむ俺の耳にフェルマーのうめき声が聞こえたような気がしたが……聞かなかったことにした。
 頭から尻尾の先まで入れると俺の身長くらいに一晩で成長したディはべったりくっついて離れないが、こちらも剥がす理由もないからくっつけたままだ。
 
 買いためておいた魔石をばくばくと食べて、見る間に大きくなって行く。スマートなトカゲだったのに今は……

「あれだな、オオサンショウウオっぽい……」

 横に広がっている……。大丈夫か…産まれて1日目でメタボまっしぐらなのか?

「しゅがーがいっしょうけんめいよういしてくれたの、おいしーよ!いっぱいたべておおきくなってまもってあげるからね」

 デブの豚でもいい。横に転がる方が早くなっても俺はこのトカゲを一生大好きだろう。

「しゅがーもたべてみたら?おいしーよ」

「俺が魔石を食える訳ないじゃないか」

「たべれるよーだってしゅがーだもん」

 やはりディの言っていることはわからない。言葉が通じているのにわからないとは、可愛いすぎる。
 
「レイにでも聞いてみるか」

 俺は一体どうなってしまったのか。少し不安ではあるが、ずっと一緒にいてくれると言うディアノスがいるから怖くはない。
 1人残される方が何倍も恐ろしい。

「れいはいそがしーから!しゅがーはおれのなんだから、ここにいるのー!」

 メタボトカゲがのっそりと腹の上にのしかかってきた。重くなって来たがまだまだ抱っこ出来るぞ。

「わかったわかった、そばにいるよ。でもレイは忙しいの?何かしてるの?」

「ふぇるまーをまるかじりよー」

「え?!フェルマー、大丈夫なの?!」

「だいじょうぶよー。ちょっとしはいかにおいて、おくさんにするだけよー。しゅがーみたいにじかんをかけてどうぞくかじゃないから、ちょびっとしかどうぞくにならないけど、つがいになるにはどうぞくかしたほうがいいよね」

ん?

「ディ。聞くけど…レイはフェルマーを?」

「つがいにするっていってたよーだってしばらくむりょくなトカゲだもんーだれかにたすけてもらわないとしんじゃうよー。しゅがーはおれのだから、れいはふぇるまーにするっていってたー」

「レイがフェルマーをつがいにする……そしてどうぞくか…同族化か!え?俺、同族なの?!龍ってこと?」

「そうだよーだいたいねーでもねーなーんかへんなんだって。でもだいじょうぶだってー」

 フェルマーのことはとりあえず置いておいて。俺はいつの間にか人間をやめていたらしい。
 しかも「大体」で「なーんか変」で「でも大丈夫」と、レイが言ったのを聞いたんだろう。
 まあ、魂を半分づつディと分け合ったらしいし、大体龍でも良いだろう。なーんか変でもやっていけるはずだ。

「そっかー。じゃあ俺にもディみたいな鱗が生えてくるかなぁ?」

「こないよ!だってつるつるしてたほうがおれすきだ!」

 旦那様の好みの問題だった。




「なんじゃ、まだトカゲのままとは。とりあえずつがっておるのかと思うたら……まさかトカゲと致すのか?シュガー。流石としか言えぬな?」

「?!レイ…!」

 赤い髪の男の子供が、生意気そうに笑いながら立っていた。

「良いのか?ディアノス。早くせんと手遅れになるぞ?我が貰ってやろうか?」

 メタボサンショウウオはおれのお腹の上で大きな口を開けた。

「いやだ!しゅがーはおれのだっていってる!ずっと、ずーーーーっとおれのものなの!だれにもやらない!」

 口から炎でも吐き出しそうな勢いでディは威嚇する。

「わ、ディ!大丈夫だから。おれはずっとディと一緒だよ」

「違うな、シュガーは今はまだ「毒竜」のものだ。成り変わった「龍」で縁を結ばねば、誰かに取られるに決まっておるわ」

「ディはディだけど……昔のディアノスではない、そういうことか。レイ、縁ってどうやって結ぶの?」

 俺の腹に乗ったまま、短い手足をパタパタさせて「おれのなのー」と騒ぐメタボトカゲを撫でながら尋ねた。ディの説明下手は愛を持ってしても、理解に苦しむ。
 レイはふんと鼻を鳴らして、ご高説を垂れるがごとくのけぞる。見た目は子供、中身はジジィのくせに。

「ヤれば良い。簡単であろう?」

 ジジィ、体が若返ってハッスルかよ?!

 
 
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