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阿呆王子、帝国へ

23 誑(たぶらか)される

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その日、城に勤める者たちは精霊が溢れ踊る幸せな夢を見たと言う。


「ああああ……っ!」

 部屋の隅で頭を抱えて丸くなった。

「だから言ったろう?精霊に誑かされてるんだって」

「こいつら何やってくれてんのさーー!もう!!」

 髪の毛にたかってくる精霊達を手で追い払う。お前らか!お前らかーーーーーーーー!泣きたい!恥ずかしいわ!!!

「良いじゃないか?……凄く可愛いぜ、甘えておねだりしてくるナルは」

「ふぎゃーーーー!」

 怒った猫みたいになった。だって!だって!アレはなんなんだ!言いたくないし、認めたくないが、確かに自分からおねだりしたと言われてもしょうがないじゃないか!嫌だぁ!最悪だ!

 しかも城中の皆さんにお知らせしてしまっているんですよ!?私達昨日頑張っちゃいました!って!しかもみんなからありがとうございます!って言われるんだぞ!

「精霊は俺達に仲良くして貰いたいだけなんだよ。表面上だけでも仲良くしてりゃ……」

「ううっ……そんなもんかな……」

 部屋の隅で丸まっている俺の背中をトントンと叩く。……良い所あるじゃないか。

「そうだぞ?ほら、何か飲むか?ジュースか、水か?」

「水で……良いよぉ」

 あれ?何だろう。ふわふわしてきた……あったかくて気持ちが良いなぁリジェーシャは。

「ナル、お前ほんとチョロいな」

「えー……?」

 すっと抱き上げられた。俺、結構重いのになぁーリジェーシャは俺より背が高いからなぁ。並ぶと俺達でかいよなぁ。

「またやられてる。俺には好都合だし、甘えてくるナルは可愛いが少し心配になるな」

「心配?どうして?」

「他の大地の子にはすり寄るなよ?」

 変なこと言うなよ、リジェーシャ。俺は

「お前だけだよ……。だってそう決めたんだもん」

 あれ?決めたっけ?うーん?決めたような?うん、決めたんだ。こいつで良いって、こいつにしようって。
 あいつよりこいつの方が良いかなーって。こいつなら俺を捨てたりしないだろうって。お荷物で、使えない俺でもずーっと可愛がってくれるだろうって。

「ありがとう、俺にしてくれて」

「どう致しまして。ねぇ……?」

 もっと近くで。もっと、気持ちよくなりたい。

「本当、心配になるよ」

 優しく下されたのはベッドの上。ねぇ少しも離れないで、そばにいて抱きしめて?手を伸ばし、温めて。

「そう?大丈夫だよ」

 俺は大丈夫だよ。信じて欲しいな。俺を裏切らないでね?俺の大地の子。



 
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