子爵令嬢は溺愛前に罠を仕掛ける。

鏑木 うりこ

文字の大きさ
30 / 36

30 パトリシアの楽しい日々

しおりを挟む
 私とリオネル様のお付き合いはミズリー家の全員に温かく厳しく見守られながら清く正しく続いている。

「パトリシア……ごめんね、君の意見が聞きたくて」
「もちろんです、リオネル様」
「まだ婚約者なのに、妹を働かせようなんて紳士のすることじゃないぞ! リオネル」
「フランソル、しかしこの農園のアドバイスが欲しくて……」
「実は私もその農園については解決策を知りたいなあ」
「兄上まで!」

 ミズリー家には義兄が二人いて、下のフランソルお兄様がリオネル様とお年が一緒なのでとても仲がよいのです。

「学生の頃、やんちゃばっかりやってたリオネルが、爵位を継ぐなんてねえ~」
「フランソルだって適当にチャラチャラしてたのに、今じゃしっかり家の手伝いをしてるじゃないか」
「そりゃ可愛い妹に呆れられたくないからなー」
「私だって可愛い婚約者に嫌われたくない」
「フランソルとリオネルがしっかりしてくれただけでウチもフォルブラウ家も感謝してもし足りないよなあ」

 私は苦笑するしかなかったが、実際にフォルブラウ侯爵様と奥様がやってきて、私の手を取って喜んでくださったのを思い出していた。

「それくらいフランソルとリオネルはやんちゃでさあ~ここまで更生したのがはほんと全部パトシリアのお陰だよ」

 上のお兄様であるオルヴィルお義兄様にフランソルお兄様とリオネル様は鋭い視線を投げつけている。

「兄上、やめてくださいよ。パトリシアの前で!」
「そうですよ、オルヴィル。私だって掘り返されたくないんですから!」

 そんな風にいうから、きっとこれは真実なんだろうなあと思うけれど、二人とも私に知られたくないようなので、知らないで置こうと決めている。誰にだって知られたくない過去くらいあるだろうし。

「ま、いいけどね。二人が何か悪さしたらその時は容赦なくパトリシアに告げ口するからな?」
「やめてくれー!」

 ここまでくるとフランソルお義兄様とリオネル様が一体何をしたのか気になってしまいます。

「ミズリー家にいると駄目だな! パトリシア、街に出かけないか? 評判のケーキを出す店があってね、一緒に行こう」
「いいのですか?」
「もちろん、ここにいてはオルヴィルに虐められ続ける。私を助けると思って一緒に行ってほしい」

 ケーキを食べに行くなんてレーゼン家にいた時には忙しくてできなかったことだ。どうやら顔に出ていたようで、オルヴィルお義兄様が笑いながら許可してくれた。

「まあデートというなら仕方がないか。母上にはいっておくから早めに帰っておいで。フランソルはここに残って仕事だよ、二人の邪魔はしちゃ駄目だ」
「げえっまじかよー! 仕方がないなーお土産頼むぞ、リオネル」
「わかったよ、皆の分も買ってくるさ、行こうパトリシア」
「はい!」

 私はミズリー家で普通の女の子らしい生活をさせてもらっている。兄妹で笑ってお話したり、婚約者と出かけたり……勉強することはたくさんあるけれど、とても楽しい毎日を過ごさせてもらっていた。お金のことで悩まなくていいなんてなんて嬉しい日々なんだろう。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

これで、私も自由になれます

たくわん
恋愛
社交界で「地味で会話がつまらない」と評判のエリザベート・フォン・リヒテンシュタイン。婚約者である公爵家の長男アレクサンダーから、舞踏会の場で突然婚約破棄を告げられる。理由は「華やかで魅力的な」子爵令嬢ソフィアとの恋。エリザベートは静かに受け入れ、社交界の噂話の的になる。

あなたの幸せを、心からお祈りしています【宮廷音楽家の娘の逆転劇】

たくわん
恋愛
「平民の娘ごときが、騎士の妻になれると思ったのか」 宮廷音楽家の娘リディアは、愛を誓い合った騎士エドゥアルトから、一方的に婚約破棄を告げられる。理由は「身分違い」。彼が選んだのは、爵位と持参金を持つ貴族令嬢だった。 傷ついた心を抱えながらも、リディアは決意する。 「音楽の道で、誰にも見下されない存在になってみせる」 革新的な合奏曲の創作、宮廷初の「音楽会」の開催、そして若き隣国王子との出会い——。 才能と努力だけを武器に、リディアは宮廷音楽界の頂点へと駆け上がっていく。 一方、妻の浪費と実家の圧力に苦しむエドゥアルトは、次第に転落の道を辿り始める。そして彼は気づくのだ。自分が何を失ったのかを。

『龍の生け贄婚』令嬢、夫に溺愛されながら、自分を捨てた家族にざまぁします

卯月八花
恋愛
公爵令嬢ルディーナは、親戚に家を乗っ取られ虐げられていた。 ある日、妹に魔物を統べる龍の皇帝グラルシオから結婚が申し込まれる。 泣いて嫌がる妹の身代わりとして、ルディーナはグラルシオに嫁ぐことになるが――。 「だからお前なのだ、ルディーナ。俺はお前が欲しかった」 グラルシオは実はルディーナの曾祖父が書いたミステリー小説の熱狂的なファンであり、直系の子孫でありながら虐げられる彼女を救い出すために、結婚という名目で呼び寄せたのだ。 敬愛する作家のひ孫に眼を輝かせるグラルシオ。 二人は、強欲な親戚に奪われたフォーコン公爵家を取り戻すため、奇妙な共犯関係を結んで反撃を開始する。 これは不遇な令嬢が最強の龍皇帝に溺愛され、捨てた家族に復讐を果たす大逆転サクセスストーリーです。 (ハッピーエンド確約/ざまぁ要素あり/他サイト様にも掲載中) もし面白いと思っていただけましたら、お気に入り登録・いいねなどしていただけましたら、作者の大変なモチベーション向上になりますので、ぜひお願いします!

婚約破棄された氷の令嬢 ~偽りの聖女を暴き、炎の公爵エクウスに溺愛される~

ふわふわ
恋愛
侯爵令嬢アイシス・ヴァレンティンは、王太子レグナムの婚約者として厳しい妃教育に耐えてきた。しかし、王宮パーティーで突然婚約破棄を宣告される。理由は、レグナムの幼馴染で「聖女」と称されるエマが「アイシスにいじめられた」という濡れ衣。実際はすべてエマの策略だった。 絶望の底で、アイシスは前世の記憶を思い出す――この世界は乙女ゲームで、自分は「悪役令嬢」として破滅する運命だった。覚醒した氷魔法の力と前世知識を武器に、辺境のフロスト領へ追放されたアイシスは、自立の道を選ぶ。そこで出会ったのは、冷徹で「炎の公爵」と恐れられるエクウス・ドラゴン。彼はアイシスの魔法に興味を持ち、政略結婚を提案するが、実は一目惚れで彼女を溺愛し始める。 アイシスは氷魔法で領地を繁栄させ、騎士ルークスと魔導師セナの忠誠を得ながら、逆ハーレム的な甘い日常を過ごす。一方、王都ではエマの偽聖女の力が暴かれ、レグナムは後悔の涙を流す。最終決戦で、アイシスとエクウスの「氷炎魔法」が王国軍を撃破。偽りの聖女は転落し、王国は変わる。 **氷の令嬢は、炎の公爵に溺愛され、運命を逆転させる**。 婚約破棄の屈辱から始まる、爽快ザマアと胸キュン溺愛の物語。

【完結】婚約者を奪われましたが、彼が愛していたのは私でした

珊瑚
恋愛
全てが完璧なアイリーン。だが、転落して頭を強く打ってしまったことが原因で意識を失ってしまう。その間に婚約者は妹に奪われてしまっていたが彼の様子は少し変で……? 基本的には、0.6.12.18時の何れかに更新します。どうぞ宜しくお願いいたします。

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

婚約者を妹の嘘に奪われてしまいました、が、両親が味方してくれたこともあって私は幸せを掴むことができました。

四季
恋愛
婚約者を妹の嘘に奪われてしまいました、が……。

逆転した王女姉妹の復讐

碧井 汐桜香
ファンタジー
悪い噂の流れる第四王女と、 明るく美しく、使用人にまで優しい第五王女。

処理中です...