子爵令嬢は溺愛前に罠を仕掛ける。

鏑木 うりこ

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33 完璧な計画だったはずなのに(サリー

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「ふえぇ~ん、ダニエル様ぁ~怖いですぅ」

 そ、そうだわ、とにかくこの場から逃げなくちゃ!

「ダニエル様、クロムウェル家に向かってください! 伯爵さまに知恵をお借りしましょう! 早くッ」
「え?あ、わかった。出してくれ」

 私が大声で叫んだのでダニエル様は馬車を動かしてくれた。こんな所に長々といるわけにはいかない。それにしても馬車から降りなくて正解だったわ。走り出した後ろの方でグレッグが叫んでいる声が聞こえる。

「ま、待って、待てよ! 金を、金を寄越せ!!このままじゃ小麦の種を買う金もねえんだよ! クソッ」

 そんなグレッグの様子をあのガラの悪い二人組はニヤニヤと見ている。

「あんた、領地の管理人かなんかなの? こんな所で油売ってていいのかい? パトリシア・レーゼンが爵位を捨てたんだ。領地は別の貴族の手に渡ってんじゃねえのかい? 領地の管理人がお新しい貴族様が来た時にいなかったらなぁ~んか問題あるんじゃねえの?」
「その様子だとだいぶ不正とかしてそうだなあ? そういう証拠、隠してこなくていいのかぁ?」
「な、なーーーー」

 会話はそこまでしか聞こえなかったけれど、ふ、不正? グレッグがそんなことをしていたの? 恐ろしい……。

「それにしてもぉ、ウチの領地って赤字だったの? それって領地からお金が来なかったってことよね、知ってた?お母様」
「知らないわよ……初めて聞いたわ」

 ユリシアにそう聞かれ、私も驚いたところだった。

「すると、レーゼン家は何で稼いでいたんだ? 普通は領地からの売り上げで貴族は生活しているはずだが……?」

 ダニエル様も首を傾げている。本当にどうやって……? ま、まさかやっぱりパトリシアね!

「きっとパトリシアよ、あの子が何かよくわからない手段でお金儲けをしていたんだわ、それ以外ないじゃない」
「えー! お姉様ってばよくない商売してたのかしら?」
「なんと下劣な! やはりパトリシアとの婚約は破棄して正解だったな、なんという女だ」

 そうよ、それ以外考えられないもの。絶対パトリシアが薄汚い商売をしていたんだ。絶対よ。それをダニエル様のお父様であるマクスウェル伯爵に調べて貰えばきっとお金も何もかも取り戻せるはず。私とユリシアは子爵家に戻って今より贅沢してくらせるはずだわ。あんな借金取りなんて追い返せる。
 マクスウェル伯爵が私達を助けて下さる。絶対そうよ!


「旦那様はお会いにならないそうです」
「そんなこといわずに! 頼む!」

 クロムウェル家につくと、なんとクロムウェル伯爵は私達だけじゃなく、息子のダニエル様との面会も断ってきた。何とかダニエル様が詰め寄ってくれて、私達は伯爵に会うことができた。

「この馬鹿息子が……レーゼン家の乗っ取りに失敗したのはお前のせいだぞ、なぜパトリシアを逃がした……それにレーゼン夫人、話が違いましたな? 書類が受理されていないことを何故黙っていた。そのお陰で計画が無駄になってしまったぞ、どうしてくれるのだ」
「え……」

 そんなこといわれても私、知らないわ。
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