【完結】生き残りたい俺は死者と語る。

鏑木 うりこ

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74 騎士と鹿の頭

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「……分かりました、私が」

「はい」

 死霊術は元々禁忌の魔法分野として忌み嫌われている。まあ死んだ人間、もしくは死んだものを使うんだから忌避感はとても強い。だからよっぽど酔狂な変人しかそれを習得しようとは思わないし、推奨されることもない。
 でも、亡霊の皆さんを見るにはもってこいの術なんだ。俺の話を信じてもらうには誰かが死霊術師になって視てもらうのが一番早いんだけど……。

 責任をもってこの城の宰相と言う人が手を上げた。宰相が死霊術師なんて……良いのかなー大丈夫かなぁ~。もう死んだあの人の顔がもやもやと浮かび上がるけど……?
 その人から譲り受けた死霊術の禁忌書を手渡す。これを一通り読めばあら不思議。貴方もいっぱしの死霊術師だよ!

「あんまり広めて良い物じゃないだろうから……少人数でお願いします」

「……本当に存在していたんですね、死霊術の魔道禁忌書なんて」

「……」

 貰ったんだもん。まあこれがどれくらいの価値がある物か俺には分からないけれど、読んだだけで死霊術のなんたるかは分かるんだから、価値はありそう……。分厚い本だから読むのに時間がかかりそうだけどね。

「まあ……多分俺に暗殺者を向けても駄目だと思う。あとこの城で内緒話とかそう言うのは無理だよ。歴史が古い分、この城は驚くほど亡霊が多いんだ。その亡霊が全部見て、全部聞いている。その情報を全部俺に教えてくれるからね。誰と誰が浮気してるとかもホントは全部知ってるんだけど……聞きたい人いる?」

 ここまで教えてやると皆、顔を青くして俯いた。誰一人として俺にまっすぐな目を向けてくる奴はいなかった。なんだ、ほとんど全員後ろ暗いのか?しょうがねえなあ。

「俺の部屋に食べる物だけ持って来て欲しい。後は……あの人が亡霊さんとやり取りが出来るようになってからにしよう。ちゃんと食べられる物、持って来てね?」

 それだけ伝えて、俺は会議場を後にした。これからどうなるか分からないけれど、フォーリと一緒に部屋に戻った。

「……なんて言うか、貴族ってどこもこうだよな」

「そうなの?俺は平民以下だから分かんないや。そーれ魂ぶっこ抜き!」

 キャー!ナナちゃんのその技こわーい!フォーリが近くで布団をかぶってガタガタしてる。あはは!

「はぁ、騎士になったのに、なんで亡霊に心臓握られて死ななきゃなんないのんだろう」

「仕える人を間違えたねえ」

「俺達もナナちゃんみたいな人に仕えれば良かったんだなぁ」

「それもどうかな~?俺は人に良くしてもらう価値なんてない人間さ。まあ、このまま地上にいたって良い事あんまりないだろうし次の人生を送ると良いと思うよ」

 そうだな、といって暗殺者として差し向けられた騎士達は風船に掴まって飛んでいく。ちょっとスッキリした顔をしているからやっぱり暗殺なんて向いてる人たちじゃなかったんだろうね。きっと皆どうせ死ぬなら戦場で……きっと前の王様のトライフトと一緒に戦って死んでいきたかったんだろうなあ。

「あ、入って左の壁一面隠し部屋で向こうからこっちの部屋が丸見えだからね」

「あの鹿の剥製の頭の目からみてるんだ」

「あの剥製目つぶししといた方が良いよ」

「わぁお!フォーリお願い」

 フォーリに頼んで鹿の頭……ハンティングトロフィー?っていうんだっけ?アレを壊してもらった。まあなんかこっち見てて気持ち悪いなーって思ってはいたんだ。

「おっけー……どうも~?」

「ひっ!?」

 壁の向こうの隠し部屋に誰かいたみたい。目が合っちゃったよ、ってフォーリが笑いながら戻ってきた。

「あんなところにいてこっちをみてるなんて……エッチすぎる!」

 この部屋を用意した父親、ホント何考えてたんだろ?良い王様だったんじゃないのかな……違うのか?


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