【完結】虎の威を借りたつもりはないが、何か取られる狐の男子

鏑木 うりこ

文字の大きさ
1 / 21

1 俺、狐のβ

「ったく、やめろよなー!忠臣タダオミー」
「ん?」

 俺の名前は北山キタヤマカオル。来年大学生になる(予定)の高三である。そんで俺の後ろにいっつもいる、いや向き直ったから今は目の前にいる長身のイケメン野郎は大河内オオコウチ忠臣タダオミ。幼馴染であり、腐れ縁であり……まあ友人でちょっとボーッとしているけど悪い奴じゃない、けどな!

「お前のフェロモンで女の子が逃げたり寄って来たりして迷惑なの!」
「……それ、フェロモン関係ない、人間は逃げたり寄って来たり普通にする……」
「そりゃお前ん家が金持ちでお前が虎のαだからだよ!俺ん家みたいな普通の狐はそんな事起こらん!」
「そう?」

 忠臣は俺が3歳くらいの時に俺の家の隣に引っ越して来た。家もその時に建て替えたんだが、俺んちギリギリに建てるもんだから、俺の部屋の日照権は奪われた。

「ねえオミ君、オミ君ちって僕んちにすんごく近くない?僕の部屋の窓とオミ君の部屋の窓、ジャンプしたら飛び移れるじゃん」
「ん~……嫌?」
「別に嫌じゃないけど~オミ君は僕の友達だし、なんか面白いし」
「ん」

 まあウチの親も

「んーとなあ……いや、まあなんていうか。薫、嫌か?忠臣君の、その……こと」
「オミ君?別にやじゃないよ、だって友達だもん」
「友達、う、うーんそうか……まあうん」

 なんか子供心にはっきりしないなーと思ったけれど、きっと忠臣んちの設計ミスかなんかなんだろうなって。建て替えるのも莫大な費用がかかるし、まあ多少外が見えなくてもいいかなーってなったし。もしかしたらうちでも迷惑料とかもらってんのかもしんないし。
 まあちょっと窓を開けたら忠臣が見える生活になってしまっただけだしね。別にいいかーと思ったけど、ちょっと大きくなってから、忠臣はしょっちゅう窓から俺の部屋にやってくる。

「危ないって言ったの忠臣じゃん」
「俺、虎。虎、樹上いける。薫、狐。狐ダメ」
「俺だってぴょんってジャンプすればいけんのに!」

 そしたらちょっと真剣な顔して忠臣がいうもんで……やめた。

「俺の部屋は、虎穴。いらずんば、虎児を、得ちゃう、ぞ?」
「へ?」
「薫んとこの方が漫画いっぱいある、こっちがいい」
「あー……うん?」

 まあ何かよく分からないけれど、忠臣は俺の部屋にいつもいるし、俺の親も妹ももう慣れっこになっている。

「あーオミ兄ちゃんやっぱいる。じゃあねえ薫兄」
「恵梨香?なんか用だったの?」
「後でいい~」

 妹の恵梨香は忠臣の事を二人目の兄だと思っているみたいだし、親も

「忠臣君来てたの。夕飯食べてくわよね」
「あざす」

 普通にこんな感じがずーっと続いてる。もちろん俺が忠臣んちに遊びに行っても歓迎してくれるし、

「薫君かわいーわー!私わがままいって子供は忠臣一人にしたけど、女の子も作っとけばよかったかしらあ!」
「あは……」

 忠臣の両親は虎のα同士の結婚だ。背も高くて体つきもしっかりしていかにも肉食獣のαですって感じのご家庭に普通の狐の俺が入り込むと小っちゃく感じるだろうけど、俺は女の子じゃないぜ、おばさん!

「ったく冴子がそんなんだから親父やお袋に私が嫌味を言われたんだぞ、まあいいけど」
「あはっ総一郎そういうとこあるからねー!ごめんねー薫君、そんなんだから忠臣ってば子沢山を一族から願われててね!」
「はあ……?大変ッスね……?」
「そーなの、大変なのよ~~~、あ!ごめん。私、会議だわ。薫君、冷蔵庫の中身は好きに食べていいからね~総一郎行くわよー。忠臣~行ってきます」
「分かった、じゃあね、薫君。忠臣、約束は守るんだぞ」
「わかってる」

 忠臣の両親はいつもこんな感じでバタバタと出かける。駅前の一等地にビルなんかを構えているオオコオチグループのお偉いさんなんだからマンションとかすめばいいのに、住宅街の結構端っこの方にあるここに家を建ててるんだよな、不思議。

「ん、俺のわがまま」
「そなの?まあ学校は近いからな」
「ん」

 俺らの日常はこんな感じだった。

感想 11

あなたにおすすめの小説

政略結婚のはずが恋して拗れて離縁を申し出る話

BL
聞いたことのない侯爵家から釣書が届いた。僕のことを求めてくれるなら政略結婚でもいいかな。そう考えた伯爵家四男のフィリベルトは『お受けします』と父へ答える。 ところがなかなか侯爵閣下とお会いすることができない。婚姻式の準備は着々と進み、数カ月後ようやく対面してみれば金髪碧眼の美丈夫。徐々に二人の距離は近づいて…いたはずなのに。『え、僕ってばやっぱり政略結婚の代用品!?』政略結婚でもいいと思っていたがいつの間にか恋してしまいやっぱり無理だから離縁しよ!とするフィリベルトの話。

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

兄様の親友と恋人期間0日で結婚した僕の物語

サトー
BL
スローン王国の第五王子ユリアーネスは内気で自分に自信が持てず第一王子の兄、シリウスからは叱られてばかり。結婚して新しい家庭を築き、城を離れることが唯一の希望であるユリアーネスは兄の親友のミオに自覚のないまま恋をしていた。 ユリアーネスの結婚への思いを知ったミオはプロポーズをするが、それを知った兄シリウスは激昂する。 兄に縛られ続けた受けが結婚し、攻めとゆっくり絆を深めていくお話。 受け ユリアーネス(19)スローン王国第五王子。内気で自分に自信がない。 攻め ミオ(27)産まれてすぐゲンジツという世界からやってきた異世界人。を一途に思っていた。 ※本番行為はないですが実兄→→→→受けへの描写があります。 ※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。

僕の事を嫌いな騎士の一途すぎる最愛は…

BL
記憶喪失の中目覚めると、知らない騎士の家で寝ていた。だけど騎士は受けを酷く嫌っているらしい。 騎士×???

ゲーム世界の貴族A(=俺)

猫宮乾
BL
 妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!