【完結】虎の威を借りたつもりはないが、何か取られる狐の男子

鏑木 うりこ

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15 しんみりいいえ、キモイです

「世紀末救世主ネックガード」
「うるせぇ、見てたんか」

 友達に揶揄われたりしたけど、皆そんなに忠臣のことを嫌ってないし、避けているようでもない。

「なー大河内。フェロモン?とか嗅いだらどんな感じなん?」
「んー……なんか、こう……ぐわーっときてがーーってしてムラムラする」
「分かるような分からんような?」
「まーどうせ北山にしか向かって行かないんだから良いか?」
「うん」
「うんじゃねーよ!! 」

 まあ、忠臣は真っ直ぐ俺に向かって飛びかかって来るな。最悪人的被害を受けるのは俺だろうし……良いのか?!

「俺、薫がいて良かった」
「はあ?」

 そして結局学校から一緒に帰って来て、家庭教師が来るまで俺の部屋でゴロゴロしながら漫画読んでる。俺にも危機感ねーけど、いつもっていうのは中々変えられない。

「多分、俺。薫に会えなかったら……凄く嫌で迷惑で……感じの悪い人間になってたと思う」
「はあ?」

 なんか呟く忠臣に俺は気の抜けた返事を返している。

「俺の家、母さんも父さんも仕事が忙しい。ついでに二人とも仕事が好きだ」
「あー分かる。忙しいって言いながらイキイキしてるよな」
「だから、北山の美香おばさんと幸太郎おじさんがいなかったら飯とかコンビニ弁当ばっかりだったと思う」
「あー……」

 それはあり得る話だ。俺と忠臣が一緒にご飯を食べたり、風呂に入ったりしてるということは忠臣は親とそういう事をしてないってことだ。

「恵梨香ちゃんもいて、兄ちゃんって呼んでくれて……。俺が人と喋んの面倒がってたら、薫がケツを叩いてくれたし」
「面倒がるなよ……」
「俺が俺になれたのは、全部薫のお陰。感謝してる」
「あー……うん」

 何だ、やけにしんみりしちゃって。

「お前、ボーッとしてる割に色々考えてるんだな」
「あー……あれは大体、薫のこと考えてるー」
「は?!」
「今日も可愛いなとか、今日は寝癖がないなとか」
「きもっ!」
「?!」

 
「ねー忠臣君、薫君?今日喧嘩したの?空気悪いんですけどー」
「すいません」
「喧嘩じゃないです」

 今日の勉強はちっとも捗らなかった。家庭教師のせんせーにも悪い事をした……。

 でも忠臣が悪いと思う!!


「……」
「……」
「やーね、辛気臭い。ケンカ?」
「ちげーし、忠臣がキモいだけだし」
「ごめん」

 勉強の後、忠臣を大河内家に置いて家に帰って来たけど

「晩御飯だから忠臣君に早く来るように言って」
「……うぇい……」

 並んで座って豚カツ食べてる。サクサクの豚カツは美味いはずなんだけど、今日はイマイチだ。

「えーオミ兄キモくはないでしょボーッとしてるけど」

 恵梨香からツッコミが来るもんで反論してしまった。

「だってそのボーッとしてる時、俺のこと考えてるとか言ってんだぞ!キモいだろ!」
「え?知ってた」
「え」

 恵梨香、何言ってんの?!

「あーそうね。大体薫のこと見ながらボーッとしてるもんね。ほら、忠臣君おかわりよ」
「うす」

 どんぶりに米、山盛りである。ウチの米は冴子おばさんが美味しいお米を取り寄せてくれてるやつだからすげー美味い。
 忠臣はいっぱい食うけど、大河内家から大量の食料や食費も貰っているみたいだ。

「私、料理が苦手だから、美香さんに頼るしかなくて申し訳ないわ……」
「あら!良いのよー!うちの食費まで持って貰ってて、そっちの方が申し訳ないわ」
「米は炊かなきゃ食べられないの。本当に嬉しい……」

 そんな話を良くしている。家の母さんは料理するのが好きみたいで、いつも何か作ってるイメージがある。
 ……俺らが端から食べて行ってるイメージもあるけど。今日の豚カツも何枚揚げてるか分かんないし、多い分はカツサンドにする為にパンも買ってあるの知ってる。
 ついでに冴子おばさんも総一郎おじさんもうちに来てご飯を食べて行く。大河内家の冷蔵庫には飲み物とかアイスとか……母さんの作った作り置きおかずとかが入ってる。

「母さんは忠臣君のアレ、可愛いと思うわよーうふふ」

 母さんまで忠臣の味方かよ!


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