【完結】悪役令息の祖父のワシが神子をハメたら殿下がおかしくなった。溺愛とかジジィには必要ないです、勘弁してくだされ

鏑木 うりこ

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60 ワシ、裏切られる

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 オルトラ休火山の麓には我々には大人気スポット、オルトラ温泉郷がある。街の至る所から温泉が湧き、温泉卵や蒸し野菜から始まり、足湯スポット、源泉かけ流しの高級旅館などが立ち並ぶ。若者向けのヴィラや、ホテルもたくさんあるぞい。

 ワシはワクワクして……は、おらん。だってお隣に殿下がワクワクしながら座っているんだもん。

「リョカンでしっぽり、温泉でぬっぽり……」

 変なガイドブックみたいなものを握り締めて、極めてワシに不利な想像をしておるようにしか見えん。誰じゃ、殿下にそのような本を与えたのは!

「えへ」

「お前か!リドリー!」

 この裏切者め!

「だって~「恋人と過ごすオルトラ温泉郷♡夜は離れで二人の仲を深めちゃお!」って面白すぎでしょう?」

「こっちの「オルトラ温泉源泉かけ流しベスト10。効能別高級旅館ガイド」で良いじゃろ!」

「えー、だって殿下がこの6階ボスドロップの特殊配合最高級媚薬一回入りをめちゃくちゃ高値で買ってくれるって言うから、サービスで買って来ただけですし~」

 リドリー!謀ったな!?なんじゃその不穏当な発言は!?その媚薬ってあれじゃろ!中々でないゲームに登場した奴じゃろ!?

「あーーー!温泉楽しみだなぁ!」

「ワシは行きませんからリドリーと2人で視察して来て下され……」

 ワシが視察同行をお断りすると、関係各所の役人や侍従殿もすっ飛んで来て土下座された。

「おおおお願いしますーーー!セブスト殿下がこの先1ヶ月の予定を全部キャンセルすると暴れておいでですーーー!」

「わしゃ知らんし!!」

「お願いしますーーー!」

「嫌じゃい!」

 いつまでも黙っておればつけ上がりおって!ワシは殿下に言う事を聞かせるエサではないぞ!

「もー!バンドール家実家に帰らせて貰いますッ!」

「そこを何とかーーー!ダグラス様ぁーーー!」

「嫌じゃーーー!」

 泣きつく役人や侍従殿を腰にぶら下げて、家に帰ろうとしていると

「はははー!ダグラス様!往生際が悪いですよ!えいっ!」

「リドリー?!この裏切りものぉー!……」

 まさかリドリーに首トンされるとは思ってもみなかったよ、ワシは。

「さー!さっさとオルトラ温泉郷行きの馬車に詰め込んでしまいましょー!大丈夫ですよ、こう見えてダグラス様は優しいから、問題なく仕事してくれますよ!さ、拗ねてる殿下呼んできて!起きたらまた面倒くさくなりますよー!」

 こうしてワシらはオルトラ温泉郷への視察旅行に旅立ったのじゃった……。

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