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28 一欠片の未練もありません
「それにだ。アウラリスには新しい婚約者がいるんだ、もうリズティーアと婚約関係を戻すことはないよ」
「えっ?! リズティーアがこの年じゃ、絶対に新しい婚約者なんて決まらないからきっと泣きついてくる、困るっていってたのに?!」
……誰が誰に泣きつくって? 逆じゃないのか?? 困ってるのはリズティーアの方だろう。受け継ぐ資産もない三男を貰ってくれる家なんて今更ないだろうに何を言っているんだろう。
これにはアロウ様の高笑いが響いた。
「あはは! 君らはアウラリス・ディーズ侯爵令息の噂は耳に入っていないらしいな? ディーズ侯爵令息は非常に嫋やかで美しいと諸国で有名なのに。まあその幸運に浴せたのはありがたかったがね!」
「え……もしかして」
鮫島君はやっとアロウ様が何故ここにいるかという理由に考えがたどり着いたらしい。
「そうさ、アウラリスの新しい婚約者はこの私、アルバルスト・フィーラだ。以後お見知りおきを? そしてリズティーア・サウラスには見込みがないから諦めるよう伝えてくれると手間が省ける」
「え……あ、そ、そうなんだ……俺はてっきり、アウラリスも新しい婚約者が決まらなくて困ってて……本当はリズティーアとヨリを戻したいんじゃないかって思ってて……」
「そうなの、アウリー?」
そう尋ねるアロウ様に思いっきり激しく頭を横に振る。
「全然っ! まったくそんなことを考えてません! 私はリズティーアなんてもうどうでもいいですっ一欠片の未練もありませんよ!……アロウ様がいてくれるから……」
「~~っ!」
アロウ様の感極まって言葉が出てこなくなり無言で喜んでいる……可愛い方だなぁって毎回思う。ひとしきりぷるぷる震えたあと、こほんと一つ咳払いをしてから、鮫島君に顔を向けた。
「そういう訳で、私達の仲は良好だしこれからずっと仲良くやっていく。邪魔はしないでくれたまえ」
顔は鮫島君の方を向いて真面目だけど、腕は私の肩をぎゅっと抱き締めてくれている。何だか嬉しくなって、私もアロウ様の腰の辺りに抱きついた。あったかくていい匂い……脇腹辺りに頬をくっ付けると、ぷにりとしつつも中の方は筋肉で硬いんだなぁってすぐに分かった。そんな発見もとても楽しい。
「そ、そうなんだ……」
若干引いたような気がするけれど、鮫島君は理解してくれたようだ。これで付き纏われなくて済むかも!
「本当仲いいですよねぇ」
「うんうん!」
実は一緒にいたヨキシャとレンスンにも大きく頷かれてしまってかなり恥ずかしかったけれど、この二人の前でカッコつけたってしょうがないから恥ずかしさを黙って受け入れようと思う……一瞬で熱くなった頬をちょっと冷たいアロウ様のぷにぷにに押し付けた。
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