【完結】良い子な邪神に転生した俺は強すぎて封印不可?頑張って封印されます!

鏑木 うりこ

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94 どこにでも湧くモノ

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 それから少しだけ変わった事があった。呪われた大地の真ん中に時たま金の光の柱が立つのだ。
 たまに金の稲妻が落ちたりする。何かが上がったり降りたりしているように見える。

「ぎゅぎゅ!」

 とある満月の夜にはマンドラの大群が結界の周りに集まっていた。

「しょうがないなぁー皆仲良くね?」

「きゅー!」
 
 次の日の朝には全部どこかに消えていたので、近くに住む人は不審がったが放置した。
 そして、荒廃した大地は何者かの手によって結界が張られ、周囲の街や村は脅威に晒される事が無くなった。


 すると、どこからともなく湧く物だ、馬鹿な人間と言うのは。

 結界が出来る半年前までは死の恐怖に晒されていたはずなのに、それがぴたりと止むと恐怖が薄れてしまうのか。

「でな、この大きな岩に封印の結界の基礎が刻まれてるとか言うけど、嘘じゃねえかって思ってんのよ、俺は」

「あー確かにな。誰がやったか分かんねえし、こんなでっかい結界なんて人間が張れるもんじゃねえもんな!」

「そうなんだよ~だからさ、この大地がもう呪いから解き放たれてヤバいもんがいなくなって思わねえ?」

「そうだな、俺もそう思うぜ」

 この大地に近接していた下位貴族の息子が仲間数人と共に大岩を剣の先で叩いている。

「だから……こんな邪魔な大岩、要らねえんだよ!」

 何のためにそうしたか、それはきっと誰にも分からない。でも彼は自慢の剣を抜いて、大岩を斬り付けた。当たり所がある意味良かったのかもしれない……キィン!と高い音がして、何かがはじけ飛んだ。基本的に内側から出てくるものを強固に止めるための結界。まさか要になる大岩を傷つける者がいるとは思わなかったのである。

「え……」

 びゅう、と風が吹きつける。今まで見えない何かに遮られて、町の方には来なかった嫌な風が強く髪の毛を靡かせた。
 ぞくりと背筋を凍らせる嫌な気配にその場にいた傍若無人の若者たちは、全員竦み上がる。

「な、なんかまずくないか……」

 自分たちの仕出かしてしまった事の大きさを理解できたか出来ないのか。ただ、「まずい」事をしたのは全員が感じ取っている。

「ま、まさか……こ、この岩にちょっと傷をつけた……だけ」

 そして岩を振り返り目を疑った。彼が斬り付けてほんの少しだけ傷がついた岩肌にはびっしりと古代文字で何かが書かれていたのだ。今まで目くらましでも掛けてあったのだろうか、何もなかったはずなのに、そこには緻密で精密な美しい模様のように数々の呪文が組み込まれた大掛かりな仕掛けが施されていた。

 ただし、彼が傷をつけ、一つの文字が失われたことによって、全ての仕掛けが力を失って黒く染まっていたのだが。
 
「ひっ!」
「や、やばい!逃げろッ!」

 大岩の辺りで粋がっていた少年と青年の中間の男たちは我先にと逃げ出した。

「まずいまずいまずい!」

 時は昼間であり、まだ目立った変化は現れてはいないが、これから夜を迎えるのだ。不死者や魔物が本領を発揮する夜が。

 半年平和であった荒廃した大地の傍の町は、半年前の恐怖と絶望を一瞬で取り戻してしまった。




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