94 / 127
94 どこにでも湧くモノ
それから少しだけ変わった事があった。呪われた大地の真ん中に時たま金の光の柱が立つのだ。
たまに金の稲妻が落ちたりする。何かが上がったり降りたりしているように見える。
「ぎゅぎゅ!」
とある満月の夜にはマンドラの大群が結界の周りに集まっていた。
「しょうがないなぁー皆仲良くね?」
「きゅー!」
次の日の朝には全部どこかに消えていたので、近くに住む人は不審がったが放置した。
そして、荒廃した大地は何者かの手によって結界が張られ、周囲の街や村は脅威に晒される事が無くなった。
すると、どこからともなく湧く物だ、馬鹿な人間と言うのは。
結界が出来る半年前までは死の恐怖に晒されていたはずなのに、それがぴたりと止むと恐怖が薄れてしまうのか。
「でな、この大きな岩に封印の結界の基礎が刻まれてるとか言うけど、嘘じゃねえかって思ってんのよ、俺は」
「あー確かにな。誰がやったか分かんねえし、こんなでっかい結界なんて人間が張れるもんじゃねえもんな!」
「そうなんだよ~だからさ、この大地がもう呪いから解き放たれてヤバいもんがいなくなって思わねえ?」
「そうだな、俺もそう思うぜ」
この大地に近接していた下位貴族の息子が仲間数人と共に大岩を剣の先で叩いている。
「だから……こんな邪魔な大岩、要らねえんだよ!」
何のためにそうしたか、それはきっと誰にも分からない。でも彼は自慢の剣を抜いて、大岩を斬り付けた。当たり所がある意味良かったのかもしれない……キィン!と高い音がして、何かがはじけ飛んだ。基本的に内側から出てくるものを強固に止めるための結界。まさか要になる大岩を傷つける者がいるとは思わなかったのである。
「え……」
びゅう、と風が吹きつける。今まで見えない何かに遮られて、町の方には来なかった嫌な風が強く髪の毛を靡かせた。
ぞくりと背筋を凍らせる嫌な気配にその場にいた傍若無人の若者たちは、全員竦み上がる。
「な、なんかまずくないか……」
自分たちの仕出かしてしまった事の大きさを理解できたか出来ないのか。ただ、「まずい」事をしたのは全員が感じ取っている。
「ま、まさか……こ、この岩にちょっと傷をつけた……だけ」
そして岩を振り返り目を疑った。彼が斬り付けてほんの少しだけ傷がついた岩肌にはびっしりと古代文字で何かが書かれていたのだ。今まで目くらましでも掛けてあったのだろうか、何もなかったはずなのに、そこには緻密で精密な美しい模様のように数々の呪文が組み込まれた大掛かりな仕掛けが施されていた。
ただし、彼が傷をつけ、一つの文字が失われたことによって、全ての仕掛けが力を失って黒く染まっていたのだが。
「ひっ!」
「や、やばい!逃げろッ!」
大岩の辺りで粋がっていた少年と青年の中間の男たちは我先にと逃げ出した。
「まずいまずいまずい!」
時は昼間であり、まだ目立った変化は現れてはいないが、これから夜を迎えるのだ。不死者や魔物が本領を発揮する夜が。
半年平和であった荒廃した大地の傍の町は、半年前の恐怖と絶望を一瞬で取り戻してしまった。
たまに金の稲妻が落ちたりする。何かが上がったり降りたりしているように見える。
「ぎゅぎゅ!」
とある満月の夜にはマンドラの大群が結界の周りに集まっていた。
「しょうがないなぁー皆仲良くね?」
「きゅー!」
次の日の朝には全部どこかに消えていたので、近くに住む人は不審がったが放置した。
そして、荒廃した大地は何者かの手によって結界が張られ、周囲の街や村は脅威に晒される事が無くなった。
すると、どこからともなく湧く物だ、馬鹿な人間と言うのは。
結界が出来る半年前までは死の恐怖に晒されていたはずなのに、それがぴたりと止むと恐怖が薄れてしまうのか。
「でな、この大きな岩に封印の結界の基礎が刻まれてるとか言うけど、嘘じゃねえかって思ってんのよ、俺は」
「あー確かにな。誰がやったか分かんねえし、こんなでっかい結界なんて人間が張れるもんじゃねえもんな!」
「そうなんだよ~だからさ、この大地がもう呪いから解き放たれてヤバいもんがいなくなって思わねえ?」
「そうだな、俺もそう思うぜ」
この大地に近接していた下位貴族の息子が仲間数人と共に大岩を剣の先で叩いている。
「だから……こんな邪魔な大岩、要らねえんだよ!」
何のためにそうしたか、それはきっと誰にも分からない。でも彼は自慢の剣を抜いて、大岩を斬り付けた。当たり所がある意味良かったのかもしれない……キィン!と高い音がして、何かがはじけ飛んだ。基本的に内側から出てくるものを強固に止めるための結界。まさか要になる大岩を傷つける者がいるとは思わなかったのである。
「え……」
びゅう、と風が吹きつける。今まで見えない何かに遮られて、町の方には来なかった嫌な風が強く髪の毛を靡かせた。
ぞくりと背筋を凍らせる嫌な気配にその場にいた傍若無人の若者たちは、全員竦み上がる。
「な、なんかまずくないか……」
自分たちの仕出かしてしまった事の大きさを理解できたか出来ないのか。ただ、「まずい」事をしたのは全員が感じ取っている。
「ま、まさか……こ、この岩にちょっと傷をつけた……だけ」
そして岩を振り返り目を疑った。彼が斬り付けてほんの少しだけ傷がついた岩肌にはびっしりと古代文字で何かが書かれていたのだ。今まで目くらましでも掛けてあったのだろうか、何もなかったはずなのに、そこには緻密で精密な美しい模様のように数々の呪文が組み込まれた大掛かりな仕掛けが施されていた。
ただし、彼が傷をつけ、一つの文字が失われたことによって、全ての仕掛けが力を失って黒く染まっていたのだが。
「ひっ!」
「や、やばい!逃げろッ!」
大岩の辺りで粋がっていた少年と青年の中間の男たちは我先にと逃げ出した。
「まずいまずいまずい!」
時は昼間であり、まだ目立った変化は現れてはいないが、これから夜を迎えるのだ。不死者や魔物が本領を発揮する夜が。
半年平和であった荒廃した大地の傍の町は、半年前の恐怖と絶望を一瞬で取り戻してしまった。
あなたにおすすめの小説
記憶を失っている間に推しの婚約者になっていました
由香
BL
事故で記憶を失っていたルカは、ある日突然思い出す。
ここが前世で夢中になっていた恋愛ゲーム世界だということを。
しかも自分は、最推しだった第一王子アルベルトの婚約者になっていた。
甘すぎる距離感。
慣れたように落とされるキス。
そして見え隠れする、王子の重すぎる執着。
忘れていた恋を、もう一度始める貴族学園BL。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
ふたりの動画をつくりました!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
動画にはAIを使っていますが、小説にはAIを使っておりません
皆さまの応援のおかげで『もふもふ獣人に転生したら、最愛の推しに溺愛されています』書籍化、心から、ありがとうございます!
繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました
こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。
儚げ侯爵令息の怠惰な檻 ~前世が社畜だったので、公爵様の重すぎる溺愛が極上の福利厚生に見える~
千葉琴音
BL
前世で過労死した社畜男子が転生したのは、触れたら折れそうな超・美少年。 目指せ、究極の光合成ライフ! でも、隣にいるハイスペック公爵様の愛が、ちょっと(かなり)重すぎて……!?
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。