【完結】尻神様が降臨なされた。BL世界を何周もする俺の尻はミラクル!

鏑木 うりこ

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10周目 「何も持たない」魔王

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「王妃の腹から生まれいずる子を、魔王に捧げよ」

 バスチル王国に神託が下ったのは、アルトゥスが生まれる1年前だった。この世界は魔王に支配されようとしている。魔王は何も持たずに生まれてきた者だったから、何もなかったから、なんでも欲しがった。

 それは魔王以外の者には災厄であり、恐怖であり、闇だった。



「神は私に伴侶を与えると言うた。この私に!しかし、いつまでたっても伴侶は現れぬではないか!」

 何度も何度も同じ神託が下った。四方八方、言われるままに探し求めるが、伴侶となるモノの姿を見た事は一度もなかった。

「そのような者産まれませんでした!「アレは死にました……」「処分を……」「最初から生きておりませなんだ」

 どこの国でも同じ事を言われた。どの国ももうこの地上にはない。怒りに任せ消してしまったからだ。

「何も持たぬ私に神が遣わした伴侶であるぞ!何故、私に寄越さぬ!」

「し、しかし!魔王様……アレはとても貴方様の伴侶としては相応しくなく……」

 神が遣わしたものが相応しいか相応しくないか、それをお前が決めるのか?その国の国王だという男と一緒にすべてを吹き飛ばした。国があったという場所には大穴が開き、火竜がちょうどよいと住み始めた。赤赤と燃え滾る泥が気に入ったようだ。



「だー」

 その赤子は私の黒い髪を思いっきり握りしめた。

「も、申し訳ございません!魔王様ッ!アル様っ!アルトゥス様!!何をしてらっしゃるのですか!」

 その赤子の世話をしているという女は真っ青になって悲鳴を上げたが

「あー」

 赤子は髪を掴んだまま、私にぶら下がった。

「は、はは!ははははは!!!」

 まさかこの私が神に感謝する日がこようとは!私はその日初めて、私より「持たぬ者」に出会ったのだ。


「ふ、ふふ、ふふふ、こやつ、何故、「尻」しか持っておらんのだ」

「ぶー!」

 この赤子、私の言葉が分かるのだろうか。人は生まれながらに、たくさんの「モノ」を神に持たされて産まれてくるという。私は命とその他少しの物しか持たされなかった。恨んで恨んで恨んで、持たされなかった分、人から奪い取った。
 それがどうだろう!この赤子は「命」すら持たずに送り出されていた。

「ひいええ……アル様あ!魔王様に何をしていらっしゃるんですかああ……!」

 「命」すらこの盲目の女から分け与えられて生きている。儚いのに

「ぶぃーー」

 まるで「尻の何が悪い!俺の尻は最強なんだぞ!」と言わんばかりに、尻をこっちに向けている。そうだな、お前が唯一最初から持っていたものだからな、大事にしろよ。

「うぃ」

 答えたのか?まあいいだろう。コレが我が伴侶か、気に入った。

「変わらず大切に扱え」

「はひぃ!勿論ですぅ!」


 世界がコトリと音を立てて、回り始めた。

 
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