【完結】転生悪役っぽい令嬢、家族巻き込みざまぁ回避~ヒドインは酷いんです~

鏑木 うりこ

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8 下級生から紅薔薇様って呼ばれるタイプですね

 
 私が寝込んでいる間に、その噂は駆け回ったみたいだった。

「王太子殿下はニーナのことを愛している」
「今の婚約者は余りに意地悪で、未来の王妃に相応しくない」
「王太子殿下は婚約者を捨て、ニーナ・ハヴェルを新しい婚約者にすると約束したそうだ」


「驚きました」

 倒れた私は寮ではなく、実家であるリンデンドール家へ戻っていて、カリンも付き添ってくれていた。そして馬車で登園して来るとこれである。

「おはようございます、エイミア様」
「……おはようございます、ティアリエ様」

 馬車から降りた私に一番最初に声をかけて下さったのは、ティアリエ・ウォル侯爵令嬢でした。
 ざわざわと人混みが揺れる中、私とティアリエ様は並んで歩き始める。一学年下のカリンは私達の後ろからついて来る。それで正しいマナーだもの、何も言わなくてももうカリンのマナーは完成されている。

「面白いのでしてよ?」
「なぜ、とお伺いしても?」

 ティアリエ様は真っ赤な髪の強気な美女。気の強さがその金の瞳にも現れたのではないか? と噂はされる程の方だが、私はこの方が好きだ。

「馬鹿を炙り出す良い囮なの」
「誰も手を上げたがらない仕事ですものね」

 内部調査とでも言うべきか。誰だって懇意にしている身内の能力を計り、使えないと思われたら捨てられる……そんな計測官をやりたいとは思わないだろう。

「一年の下位クラスは使えないクズばかりよ」
「まだ一年生であることを差し引いても?」
「ええ」

 真っ赤な長い髪をふわりとかき上げる。とても美しい姿だ。ただ仰っている内容は苛烈……こんな所で目の粗いふるいにかけられるなんて思っていなかった子女達だろう。

「子飼いの子爵家のいくつか切ったわ。あんな根も葉もない戯言に踊らされるなんて。我が家の名前に傷が着く前で良かった。感謝しますわ、エイミア様」
「私は何もしておりませんわ」
「ふふ、未来の王妃の人徳ですわ」

 これは……ティアリエ様のウォル侯爵家はグウェイン様と私を支持してくれると言う確約をくれたと言うことだ。とてもありがたい、私はグウェイン様には強い国王陛下になって貰いたいと常々思っている。
 
「流石ティアリエ様だわ……こういう不測の事態も利用する……私ったらまだまだなのね……頑張ろう!」

 後ろからカリンの小さな呟きが聞こえて来る。そうね、こんな噂に踊らされて、高位貴族であるリンデンドール家にケンカを売るような真似は子供でもしてはいけないわ。
 これがその家の総意であればあり得ることだけれど、確認もなしに騒ぎ立てるなんて……切られた家門は可哀想だとは思うけれど、自業自得と言わざるを得ない。
 子供の教育に手を抜いたツケが回って来たのだし、今学生の彼等が大人になり、当主になったら間違いなく問題を抱えるだろう。
 カリンの独り言を小耳に挟み、ティアリエ様は小さく笑った。

「エイミア様の妹は可愛いわね」
「ティアリエ様にそんなお言葉を貰えるなんて、カリンが舞い上がってしまいますわ」

 少しだけ後ろを見ると、顔を真っ赤にして口をぱくぱくさせているカリンがいるわ。ティアリエ様は下級生の憧れですものね? そんな方から褒められたら誰だってこうなってしまう。

「ぴゃああ……皆からつつかれちゃうぅ……!」

 嬉しそうにしちゃって。カリンにはこれが大きなご褒美になったわね。

「他は騒いでおりませんので、ゆっくり勉学に励めると思いますわ」
「ありがとうございます、ティアリエ様」

 なるほど。ニーナというヒロインかも知れない子は本物のヒドインのようね。




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