【本編,番外編完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華

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やり直しはじまる

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 あれ? ここは私の部屋ね。

 確か毒入りチョコレートを食べて死んだはず。そうか、神様が望みを叶えてくれたのだな。

 ということは今はいくつだろう? 私はベッドを降りて鏡の前に立った。

 小さいわね。4歳くらいかしら? 確か殿下は9歳から毒を盛られたからその前に戻せって言っていたわね。

 よし、16歳の記憶を持ったまま4歳に戻ったなら殺されないように色々画策できるわ。殿下も記憶を持ったまま9歳に戻っているのかしらね?

ーコンコン

「お嬢様、朝ですよ」

 侍女のメラニーが入ってきた。

 メラニーは私が大好きだった侍女だ。私が12歳の時に遠くにお嫁に行ってしまった。

 またメラニーに会えるなんて嬉しい。

「あら、お珍しい。今日はおひとりで起きられたのですね。さぁ、お顔を洗って、お着替えをして、朝食にいたしましょう」

 私はメラニーに支度をしてもらいダイニングに向かった。

「ベル、おはよう」

「お父様おはようございます」

 父もなんだか若い。

 父が早く婚約解消させてくれていたら私は死ななかったのになぁ。まぁ、戻ったらいいか。

「ベル、おはよう」

「お母様おはようございます」

 お母様も若くて綺麗だ。

 久しぶりに料理長の美味しい食事に舌鼓を打つ。

「ベルは急にナイフとフォークの使い方が上手になってきたな」

「淑女教育の賜物ね。ベルは頑張り屋さんだもの」

 父母に褒められてちょっとうれしい。でも、今の私は16歳の記憶がある。テーブルマナーなどとっくに完璧なのだ。

 

 食事の後家令のセバスが手紙を持ってきた。

「旦那様、王家から登城して欲しいと文を持った使者が来て返事を待っております」

 セバスも若いな。登城か? なんだろう?

 父はセバスから渡された手紙を読んで首を傾げている。

「ベルを連れて登城せよとの事だ。なんだろうな?」

「まさかお妃様候補でしょうか?」

「どうだろう? 少し歳が離れているが、公爵家は男児ばかりだからベルに回ってくる可能性も無いとは言えないな」

 お妃様候補? 私が? 

 確かに、ジェフリー様と婚約する前に殿下と婚約したら殺されないわね。殿下も記憶を持ったまま巻き戻っていたのなら、話もしたいし、色々協力し合えばお互いに死ななくて済むわ。もう、口ばっかりのジェフリー様とは婚約したくない。

「ベル、もしも殿下がベルをお嫁さんにしたいと仰ったらどうする?」

 私はにっこりと父に微笑んだ。

「ベルは殿下好きです。お嫁さんになってもいいです」

 そうそう、私は1回目の世界でもジェフリー様より殿下派だったわ。幽霊の殿下は1回目に感じた優しいイメージと違って黒っぽかったけど、それも悪くない。

 
 私達はお城で国王陛下に謁見した。殿下も傍にいる。若いな。

「王国の太陽である陛下におかれましては……」

 父が挨拶をしている。

「クロフォード侯爵が長女、ベルティーユでございます」

 私もカーテシーをバッチリ決めた。


 この人がアデライド王女を溺愛し、野放しにしたから私は死んじゃったのよ。ダメな国王だわ。なんとかしなきゃね。

「クロフォード侯爵、今日来てもらったのは、我が嫡男のウィルヘルムの妃に、そちの長女のベルティーユを迎えたいと考えておる。異存はあるか?」

「有り難き幸せ。つつしんでお受けしたします」

 父はすでに私の気持ちを確かめているからか、なんの躊躇もなく了承した。国王は嬉しそうな顔で私達を見ている。

「そうか、有難う。これはウィルヘルムのたっての希望でな。そちの娘なら問題はない。よろしく頼むぞ」

「こちらこそよろしくお願いいたします」

 父はすこし緊張しているようだ。あんなやつでも国王だしな。

「ベルティーユ、お妃教育は私がやりますので頑張りましょうね」

 王妃様は優しく微笑んでいる。王妃様も若返っていてお肌がつるつるだわ。
 
 お妃教育か。まぁ、私だって16年+4年も侯爵令嬢やっている。お妃教育もなんとかなるだろう。

 それに王妃様は素敵な方だ。直接教えてもらえるなんて嬉しい。ほんとに側妃とはえらい違いだ。

 あんなケバい性悪な側妃を寵愛するなんて国王陛下の目は節穴か? こんな素敵な王妃様を裏切るなんて許せない。

 絶対側妃と王女に仕返ししてやるぞ!

「では、私達はこの先の予定の話をするので、ウィルヘルム、ベルティーユとお茶でもなさい」

 王妃様がウィルヘルム殿下に言う。

「ベル行こうか」

 殿下が手を差し出した。おっとこれはエスコートか?

「はい」

 私は殿下の手を取った。


 殿下が誰にも聞こえないような声で私に囁いた。

「ベル、記憶はあるか?」

「もちろんですわ」


 私達は悪い笑顔を浮かべ見つめ合った。

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