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 秋、この町には一年を通して、いろんなお祭りがある。その中でも、奇祭と言って申し分ないお祭りが、『ルートホルム騎士団女装コンテスト』である。

 このコンテストの歴史はそこそこ古く、今年で既に二十年目になるらしい。厳つい騎士達に庶民が親しみを持てるように、こういう愉快なコンテストを開かれるようになったらしい。そのかいあってか、ルートホルム騎士団は町の人にとても好かれていた。

 そしてオレは、再び謎のクジ運を発揮してしまった。

「おまえの今年のクジ運ヤバクないか?」

 同僚のハイドに憐れむように見られる。オレは、丸の付いたクジを引き当ててしまった。今年の女装騎士(生贄)決定である。

「うそだぁあああ!!!」

 化け物のような仕上がりで、やけくそでステージに立つ先輩達の姿を思い出す。 

「そう、落ち込むなって! ほら、優勝したら、新しい剣が買って貰えるんだぞ!」

 そう、女装コンテスト。なんと優勝者には新品の剣が贈られるのだ。そう言うご褒美があるので、先輩達も嫌々ながら出るのである。

「優勝頑張れよ!!!」

 ちなみに勝敗は、市民の投票で決まる。毎年だいたい、一番面白い女装の騎士が優勝していた。

 オレは、同僚たちと服屋に行って、女物の服を選んで貰った。

「今年も楽しみね~♡」

 女装家の店主が、ニコニコしながらオレを見る。

「やっぱここは、制服だよな~ジオは清楚系だろ」

 ひらひらミニスカートの制服が、体にあてがわれる。

「いやいや、やっぱりロリータだろ。ジオは小悪魔系だろ」

 ピンクスカートにフリフリのついた服をあてがわれる。

「メイドとか良いんじゃないか……? ジオにご主人様って、言ってほしくない?

 同僚達の話し合いを、オレは遠い目をして、聞き流した。

(今日のオレはマネキン……ただのマネキン……)

 遠くで悲鳴が聞こえる。おそらく、同じく女装騎士に選ばれた騎士だろう。オレはその悲鳴を聞きながら、心を無にした。



 コンテスト当日、ばっちり化粧をされたオレは、女物のスーツを着ていた。短いスカートに、高いハイヒール。それから、眼鏡。

「大人しい顔のジオで、あえて、強い女を表現してみた。良い出来だ」
 オレを着飾った騎士達は満足気に頷く。後はステージに立って、市民達に笑いを提供したら終わりである。
「行って来る」
「よし、かまして来い!」

 応援を背に受けて、オレはステージに出た。

「さぁ、エントリーナンバー七番! ジオ = マイズナー君です!」

 観衆の目がオレに注がれる。早く終われ。

「おおっと、これは、また美しい姿だ。どうやらテーマは美人秘書のようです!」

 歓声が上がっている。ポーズをとって、眼鏡をくいっと上げる。再び上がる歓声。

(早く部屋に帰りたい。そして、この窮屈な服を脱ぎ捨てたい)

 その時、審査席にいるルーク団長と目があった。ルーク団長が目を見開いている。ジオの女装の酷さに驚いているのだろう。

(あぁ!! だから、嫌だったんだ!!!)

 ジオは内心泣きながら、一通りのアピールを終えた。
 ちなみに優勝はブルック副団長のダイナマイトボディな女海賊で、準優勝がスウェンの女児女装だった。ジオは三位だったので、商品も貰えず本当に踏んだり蹴ったりである。



 次の日、夜にルーク団長と二人で飲む。女装を見られてしまい、ジオは気まずかった。

「ジオ……」
「はい」
「あの衣装、とても良かったぞ」

(そんな事はないと思うなぁ!!!)

 ミニスカートから出たムキムキの足を、素晴らしいと思える人はそういないだろう。

「ルーク団長。無理にお世辞言わなくても良いですよ……」
「いや、世辞などではない!」

 ルーク団長が慌てる。

「俺は本当に良いと思ったんだ。特に……あの、ハイヒールが」

 ルーク団長は、オレの両手を握り、視線をそらしつつ顔を赤くして言う。

(え、ルーク団長……本気でオレの女装を……)

 以前、ジオが女性物の黒下着を着た時も、ルーク団長は全く萎えていなかった。むしろいつもよりやる気を出していた。ルーク団長の意外な嗜好にオレは動揺する。ルーク団長だって、ジオと出会わなければこんな特殊性癖を拗らせる事もなかっただろう。

(いや……けど……ルーク団長に望まれているのなら……ちょっと嬉しいかも……)

 ルーク団長がおもむろに、机の下からハイヒールを取り出した。物凄く見覚えのあるハイヒールである。これは昨日、控室のゴミ箱に投げ入れたはず。

「な、なぜそれがココに」
「処分される前に、回収したんだ。もう一度、履いて欲しくて」

 ルーク団長が上目遣いで言って来る。

(ルーク団長! オレが、団長のそう言う顔に弱い事を知ってて、わざとやってるでしょ!!!)

 オレは心の中で葛藤した。正直言うと、男としてハイヒールをもう一度履きたいとは思わない。だって、シュールだから。ムキムキの男の足に履かれたハイヒール。滑稽さしか感じない。

 けれど、オレはハイヒールを手に取った。ルーク団長に『お願い』されたからだ。オレはルーク団長に弱いのだ。

 ブーツを脱いでハイヒールを履く。そして、立ち上がる。グラグラしたので、ルーク団長の肩に手を置いた。

「おぉ」

 ルーク団長が感嘆の声を上げる。ルーク団長の手が、オレの太ももと尻を撫でる。

「やっぱり、ジオは尻から足にかけての体のラインが綺麗だな。ハイヒールを履くと、それがより際立つ」
「そ、そうでしょうか」

 ルーク団長は横から、オレの体をまじまじと見る。

(羞恥プレイぃぃぃ……!!!)

「ジオ」
「な、なんですか!」
「服を脱いでくれないか?」
「ぴゃっ!?」

 オレは固まった。

「ル、ルーク団長……それはさすがに……恥ずかしいです……」

 裸体にハイヒール、滑稽だ。

「そうか……」

 ルーク団長が残念そうな顔をする。

(だからぁ、その顔ぉ!!!!)

「では、等価交換しないか。俺の望みを叶えてくれたら、ジオの望みも一つ叶えよう」
「えっ!? それ、どんな事でも良いんですか!?」
「法に触れない事ならばなんでも良いぞ」

(本当にぃ!!!!!?) 

 オレははぁはぁと息が荒くなるのを感じた。だってオレの夢が叶うかもしれないのだ!

「そ、それじゃ、あの…………手袋をください!」
「手袋?」
「礼服着る時だけ着けてる、白い手袋です!」

 スチル絵で、白い礼服を着た時に白の手袋をルーク団長は付けているのだ。それをなんと言うか、かっこいい感じに歯で噛んで引っ張ているスチルイラストがある。あれを見て以来、オレはその手袋が欲しかった。むしろオレ自身が、その手袋になりたかった。ルーク団長に身に付けられて、八重歯で噛んで欲しかった。

「そんな物で良いのか?」

 深い劣情を帯びた妄想から、オレは戻って来る。

「ルーク団長の手袋がもの凄く欲しいんです!!!」
「そ、そうか」

 ルーク団長がクローゼットから手袋を取り出して戻って来る。

「ほら」
「ありがとうございます!!」

 オレは白の手袋を抱きしめた。

(あっ、ルーク団長の香りがする!!!)

 興奮で息が荒くなる。

「それで、俺の望みは叶えて貰えるのだろうか」

 はっと、現実に戻る。

(そうだった、オレ、服脱がないといけないんだった)

 手袋とハイヒールを交互に見る。

(が、がんばろう)

 手袋をテーブルに置いて、オレはゆっくりと服を脱いだ。まずは上のシャツから。ルーク団長は、残念ながら視線を反らしてくれなかった。むしろ、楽し気に鑑賞している。なんだか、ものすごくイケナイ事をしている気分になる。

(次は、ズボン、ズボン……)

 一旦ハイヒールを脱いでズボンを脱ぐ。パンツはさすがに脱がなかった。そこまでの羞恥心を捨てきれなかった。再びハイヒールを履いて、ルーク団長の前に立つ。

「どうですか」

 ルーク団長が上から下までじっくりとオレを見る。

(はずかしぃ!!!!!)

「とても良いよ」

 腕を引かれて、引き寄せられた。ルーク団長の膝の上に座る。

「コンテストは、ジオが一番かわいかった」
「あ、ありがとうございます……」

 キスされる。

「優勝は出来なかったが、代わりに俺が良い剣を贈ろう」

 オレは驚く。

「い、良いんですか!?」
「あぁ。誕生日も近いしな」

(オレの誕生日、把握されてるぅ!!!)

 嬉し過ぎて、泣いてしまいそうになる。
 首元にキスをされる。

「だが、やはり、騎士団の中にもおまえの事を憎からず思っている奴がいるようだな」

 ルーク団長が低い声でつぶやく。

「え、いや! 何言ってるんですか! そんな事ないですよ!」
「そうかな?」

 ルーク団長、笑っているけど、笑ってない。

「何かされたら、すぐに言うんだぞ」

 鎖骨にキスマークを付けられる。

(も、もしかして、コレは独占欲!)

 首や胸にキスマークを付けられながら、ジオははわわと天を仰いだ。

(ルーク団長がオレに独占欲を持ってくれるなんて……そんなの……嬉し過ぎる……)

 誰に言いよられようとも、ジオはルーク団長意外は見る気がない。
 沢山キスマークを付けられた後、抱えられてベッドに連れて来られた。ルーク団長も服を脱いで、覆いかぶさって来て、体をぴたりと付けて来る。

(うわ、わ! わ! 当たってる!! アレ当たってる!)

 大きなアレが存在を主張している。ちなみにジオのモノも、興奮で立ち上がっている。

「下着を脱がせても良いか」
「はいぃ……」 

 小声で返事をする。
 起き上がったルーク団長が、ジオの両足を持ち上げて下着を脱がせてしまった。これで完全に全裸にハイヒールになった。
 ルーク団長はジオの両足を開いて、股の間を見る。

(そ、そんなにしっかり見ないで!!)

「素股は知っているか?」
「し、知ってます……」
「そうか。では、やっても良いか?」
(ぴゃあああああああ!!!!!!)

 オレは内心の動揺を悟られないように頷いた。
 ルーク団長の太い物が、オレのモノの上に置かれる。ずっしり重みがある。そのまま足が閉じられる。

 ゆっくりと、ルーク団長が腰を動かす。

(あ、コレヤバい奴だ!!)

 瞬時に、この行為のヤバさをオレは理解した。太ももの間で、ルーク団長のモノが上下に動く。敏感な裏筋が、擦られる。

(き、きもちいい!!!)

「っ、んっ!!」

 わりとすぐに限界がやって来た。オレは、シーツを強く握って精を放つ。お腹に自分のモノがかかる。
 しかし、ルーク団長は止まらない。

「すまない、もう少し我慢していてくれ」

 ルーク団長はまだ逝ってなかった。ジオは逝った後も、刺激を受け続ける。

「うぅ、んん……!」

 すぐに、二回目の波が来る。

(やばい、やばい、やばい! また逝っちゃう!!)

 あまりにも刺激が強くて、二回目の射精をしてしまう。

「はぁ、はぁ、はぁ!」

 けれど、ルーク団長は止まらない。そのまま動くものだから、ジオの体は再び興奮の熱が高まって来る。

(む、無限ループだぁ!!!) 

 結局、その後ジオは五回逝った。

「ひあっ、あっ、あっ、んっ、ルーク団長! もうむりです! しぬぅ!」

 縋りつき、泣いて懇願して、ようやくルーク団長は逝ってくれた。
 終わった頃には、ジオは力が抜けきって、気を失った。



つづく
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