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 週三度王宮に通うようになって、その度にアルビオルの物を手で抜いてやっていた。
「っ………ん……」
 後ろから覆いかぶさって、アルビオルの物をしごくと、甘い声がもれる。最初より感度が増していて、今は魔力量二程度でもアルビオルのそこは反応するようになっていた。
(そろそろかな……)
 射精させようと強く握り込んだ時、アルビオルが体を捻って振り向いてジュンの頭を引き寄せた。両手が塞がっていて、抵抗が出来なかった。
「!」
 アルビオルに引き寄せられて、キスをされた。彼は唇をぎゅっと押し付けた後、はむはむとジュンの唇を食んだ。柔らかい唇の感触に脳がトロけるのを感じながら、ジュンは混乱していた。
(えっ、あっ? ああっ???)
 何故、自分はキスされているのだろう。ジュンが固まっている間も、アルビオルは一生懸命ジュンにキスをして来る。その様子がいじらしく感じられて、胸が締め付けられる。更に首を引き寄せられて、唇を舐められる。
 ジュンは自分の下半身が反応するのを感じる。
「口を開けろ」
「え」
 返事をしたつもりは無かったのだが、わずかに開けた口に舌が入って来た。薄い小さな舌が、ジュンの舌を撫でていく。甘い唾液が、口内に広がる。脳が溶ける、こんなの生殺しだ。けど、手を出したら首が飛ぶかもしれない。王様なんてのは気分屋だ、ジュンがノリ気になったらそんなつもりは無かったと、突き放されるかもしれない。だからジュンは、体を固くして我慢した。
 するとチュッチュッとキスをしていた、アルビオルが唇を離してムッとした顔をする。
「余は下手か?」
 初めてでどうすれば良いのかわからないけど、頑張った結果失敗してしまってバツが悪いと言った感じの羞恥の滲んだ、怒り顔だった。
「え、いえ、下手じゃないです」
「なら、何故、おまえは返して来ない」
「えぇ! いや、だって王様相手にさすがに、ペロチューは……」
「許す!」
 短い許可の言葉の後に、再び唇を押し付けられた。舌が入って来て、誘うようにジュンの舌をくすぐる。ジュンは、数秒の躊躇の後に自ら彼に口を押し付けて、キスを返した。
「!」
 アルビオルが驚いたように目を開けたが、もう後の祭りだった。
「んん……」
 舌を奥に入れると、アルビオルが呻いてジュンのシャツを握る。流し込んだ唾液がアルビオルの口の端からこぼれる。互いに舌を絡め、荒っぽいと言えるキスにお互い酔いしれた。アルビオルの目元が、気持ちよさそうにとろけて行くのを見ていた。
 長々とキスをした後、体を離す。アルビオルの下半身を見ると、張り詰めていたアレが小さくなっている。代わりシーツがしっとりと濡れている。彼はそれを見て、恥ずかしそうにそっぽを向いた。どうやらキスだけで逝ってしまったらしい。
(か、かわいい……)
 
 城からの帰り道、暗い夜道を歩きながらジュンは背を丸めていた。
(やっちゃった……)
 終わった後もアルビオルからのお咎めは無かった。むしろ、更に先をねだるような色気のある視線を向けられたが、気づかないフリをして、湯で体を素早く拭ってから帰って来た。
「はぁ……」
 頭の中で、アルビオルとのキスの光景が何度も蘇って再生される。こんなの、高校生以来の事である。
(すまん将紀……すまん……)
 ジュンは歩きヅラさを覚えながら、早足に家に帰った。


つづく

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