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 次の町に着いたら、俺はとりあえず宿屋で湯をもらって体を洗った。二階の部屋をとっていたのだが、二階だと湯を持って行くのに遠いので、一階の部屋に用意して貰った。オリヴァーは宿の隣のサウナに行ったようだった。
 小さいタライの中でお湯につかって体を洗う。
 この町に来るまでの間に、オリヴァーには根掘り葉掘りと話を聞かれた。好奇心旺盛な彼は、次から次に質問して来て、楽しそうに話を聞いた。
 それで、ひとまず俺はオリヴァーと旅を続ける事になった。他に行くあてもないのなら、『一緒に冒険者やろうぜ』と誘いを受けたのだ。確かにオリヴァーとの旅は楽しい。なので、彼と今後も一緒にいられるのはとても嬉しい事だった。
 あとは、オリヴァーに正人の邪な感情が伝わらなけば良いのだが。
(いや、まぁ大丈夫、大丈夫。隠すのは俺、上手いからな)
 湯から出て、タオルで体を拭いて、洗い立ての綺麗な服に袖を通した。
 宿の店員に礼を言って、首にタオルをかけたまま二階の部屋に戻った。
 扉を開けて、中に入るとオリヴァーが戻って来ていた。サウナ帰りの彼は、全体的にしっとりしていて色気がある。
 しかし、問題はそこではない。オリヴァーは、何故か俺の日記を見ていた。
「なっ」
(なんで、日記を……! いや、けど、日本語は読めないから大丈夫か!?)
 顔を上げたオリヴァーは、右目に珍しくモノクルを付けている。彼がそんな物を付けているのを初めて見た。
 そしてオリヴァーはニヤッと笑った。
 その時、正人は全てを察してしまった。おそらく、彼は正人の日記を完璧に読めてしまったのだ。オリヴァーはいろいろな不思議道具を持っていた。他の世界の文字を読む道具くらい持っているだろう。
 日記を閉じて丁寧に机に置いて、オリヴァーはモノクルを外しながら、こちらにやって来る。
「なるほど、そういう事だったのか」
 正人は後ろに下がりながら、嫌な汗をかいた。
 日記には、個人的な事を沢山書いていた。異世界から来た事だけでなく、オリヴァーに劣情を抱いている事も書いた。特にこの間、女性と一緒に旅した時など、女々しい文章をつらつらと二ページに渡って書いてしまった。
(バ、バレてしまった……)
 恐れていた危機が早速来てしまった。ゲイだと知られては、共に旅をする事は難しいだろう。
「オリヴァー……すま」
 俺は、謝ろうと思った。劣情は抱いているが、実行に移す気は無い事を弁明しようと思った。
「俺達は最初から両想いだったわけか」
 腰に両手を当てたオリヴァーが、自信満々にそう言った。
「へ」
「なんだよマサト、それならそうと言ってくれたら良かったのによう」
 オリヴァーが俺の腕を引き寄せて抱きしめて来る。
「俺の尻が好きなら、撫でまわしてくれても良かったんだぞ?」
 俺の手が彼の尻に持って行かれる。ジーパン越しに、彼のハリのある尻が手に触れる。
(オリヴァーの尻だ!最高! いや、ちがう、今はそうじゃない……!)
「え、あ、オリヴァーってもしかしてゲイなのか……!?」
「それ、男が好きって意味か? なら、そうだぞ」
 オリヴァーはニヤニヤ笑いながら、俺に体を密着させて来る。押しつけらた股間の存在感に、顔が熱くなって来る。
「マサトは俺の事が好きなんだろう」
「す、好きだけど」
「俺もマサトが好きだ。両想いだな」
 もう一度、そう言われて、俺はまるで花火でも上がるような幸福感を感じた。 
「おぉ、ビックリしてる。かわいい顔だなマサト」
 チュッチュと、頬にキスをされる。
 あまりにも展開が急過ぎて、思考が追いつかない。めちゃくちゃ好みの男に好かれていて、迫られている。これは夢だろうか。
「よし、互いの気持ちも確認した事だし、やろうぜ!!!」
「や、やるのか!?」
 オリヴァーはもう服を脱ぎ始めている。 
「おまえに会った時から、ずっとムラムラしてたんだ。もう我慢しなくて良いだろ?」
 上着とシャツを脱ぎ捨てると、今度は俺の服にも手をかける。
「あぁ、うぅ、と……どっちが、上だ?」
 これは大事な話である。
「マサトはどっちが良い? 俺はどっちでも良いぜ」
「………………し、下」
「OK! 俺もそっちの方が良い!」
 上の服を勢いよく脱がされて、ズボンも下ろされる。今日着ている下着は、この世界に来た時に着ていた物だった。
「おぉ、懐かしい恰好だな。俺が一目ぼれしちまった姿だ」
 そのまま、トランクス上からアレに頬ずりされた。オリヴァーのアピールが積極的過ぎる。
 俺は固い動作で、彼の赤髪を撫でた。ずっと撫でてみたかったのだ。うねった固い髪を撫でると、まだしっとり濡れていた。
 オリヴァーが立ち上がって、俺の肩に腕を回して見下ろして来る。オリヴァーの方が背は高いので、近づくと、どうしても見上げる形になる。
「するか?」
「……いいよ」
 頷くと、彼がキスをして来た。オリヴァーのキスは情熱的だった。唇を下で舐められて、口の中に舌が入って来る。大きな口が食べるように、俺の口を覆う。唾液が混ざり合い、頭がくらくらして来た。久しぶりのキスとしては、刺激が強すぎる。
 腰が抜けそうだと思っていたら、腰を引き寄せられて、そのまま体を回してベッドに押し倒された。
 頬、額、顎、首に次々キスを落とされる。その最中に目が合うと、オリヴァー笑った。楽しくて仕方がないと言う様子だった。こんなにかわいい四一の男が居ても良いのだろうか。
 白の下着をめくられて、腹と胸にキスされる。くすぐったさに唸ると、オリヴァーの笑い声が聞こえた。
「色っぽい声だなマサト」
 顔が熱い。というか、まだ真昼間じゃないか。窓からは明るい日がさしこんで来ている。感じている顔を見られるのは、恥ずかしかった。
 胸のいただきを舌先で舐められた。もう片方は、指先でやんわりつままれている。頭の奥に、チリチリとした熱を感じる。
「マサトは、向こうで恋人がいたのか?」
「……いたけど。もう別れて五年以上経ってたよ」
「妬けるな、マサトはもっと早くこっちに来ればよかったんだ」
 言っても詮無い事をオリヴァーが言う。どうしようもない事だ、口に出したかったのだろう。もっと早く来ていれば、もっと早くに恋人同士になれていたのに! と彼は言っているのだ。俺は気恥ずかしくなって、オリヴァーの頭を撫でた。
(俺ももっと早く会いたかったよ)
 胸をたっぷり愛撫された後、腹を舌でくすぐられた。また俺は笑ってしまった。
「マサトは、肌が敏感なんだな」
 そう言いながら、オリヴァーが脇をくすぐって来る。
「あははは!!! やめ、やめろ!!!」 
 俺は必死にオリヴァーの手を止めた。彼の方が力が強いので、止められなかったが。
 腹や脇の下をくすぐられまくった後、オリヴァーは突然のようにキスをして来た。彼はいつも行動が突然である。したいと思った時に、すぐにするのだろう。ぎゅーっと押し付けられるようなキスをされて、両の手を握りまれて舌が入りこんで来た。今度のキスは最初よりは、俺も余裕があった。オリヴァーの手を握りこみながら、分厚く柔らかい舌の感触を楽しんだ。
 その最中に、ぐいぐいと股間が押し付けられる。互いのアレが、固く存在を主張しあっている。けれど、すぐには事を進めず、焦らすようにキスを楽しんだ。
 イキそうだがイカない、絶妙な圧迫を長く感じ後に、もう限界だと思った頃にオリヴァーは離れた。
 オリヴァーが、自分のズボンを緩めて、下着も一緒に脱いでしまう。それから、俺のトランクスも引き下ろして脱がせた。俺達はベッドの上で完全に裸になってしまった。 
 彼の裸をまじまじと見る。オリヴァーの赤い胸毛に顔をうずめたい衝動にかられた。
「マサトは、本当は肌が白いんだな!」
 オリヴァーに腹をつつかれる。手足は焼けて色が変わっているが、服で隠れた部分は白かった。正人は元々色白だった。
「おう。おまえは、意外と毛深いな」
「セクシーだろ?」
 オリヴァーは笑って、マッスルなポーズを見せつけて来た。俺は、その様子に笑ってしまった。
「よし、やろう。もう我慢の限界だ」
 オリヴァーはバッグの中から、液体の入った瓶を取り出した。
「なんだそれ」
「ローションだ。男同士でやる時に使う良い奴だ。これは、ルヌス商店の特別品だぞ」
 ローションがある事に、俺は少々安心した。何もせずに突っ込むのは、さすがに怖い。
「よし、塗るぞ」
 オリヴァーは両の手でローションを温めて、それを俺の尻に塗りこんで来た。
「ここ使うのいつぶりだ?」
「…………三か月くらい」
「なら、大丈夫か!」
 向こうの世界で月に一回は、尻を使った自慰をしていた。尻はしばらく使わないと、入り辛くなるからだ。
 オリヴァーの指が入って来る。腹の奥が、切なくなって来る。
「おぉ、余裕があるな」
 一本で中を探った後、二本目の指が入って来る。
「んん……」
 もっと太いものが欲しくなる。
「マサトは本当に色っぽいな。向こうではモテたんだろ?」
「いや……別にそういうわけじゃ……ないけど……」
「そっちの男達の目は節穴だったんだな」
 三本の指で中を探られる。
「俺だったら、一目見たら気に入って、家に連れ帰るだろうさ」
 オリヴァーと向こうの世界で暮らしている様子を想像して、俺は笑みを浮かべた。
「あぁ、だめだ。もう入れる! すまん!」
 指が引き抜かれて、彼のモノが押し付けられる。今まで相手にして来た男の中で一番大きかった。
 尻の穴を押し広げて、彼のモノが入って来る。三か月ぶりの挿入に、頭の中が歓喜の声をあげている。とめどなく、快楽の脳内物質が出ているような気がした。
 彼のモノが根本まで入ってしまった。
「全部入ったぞマサト」
 彼は喜びのままに、俺の顔中にキスをして来た。頬にちくちくと、彼のヒゲがあたる。
 入っただけで、こんなに気持ちが良いのは初めてだった。彼のアレは、俺の体にあまりにもフィットしていた。こんな事があるのかと、驚いてしまう。
「よし、動くぞ」
 オリヴァーがゆっくりと腰を動かす。手を絡めて、マサトの表情を見ながら、彼は丁寧に動きを変えた。おかげで、すぐに気持ちの良いところを探りあてられた。まずは、浅い位置。浅い位置で抜き差しされるのが、マサトは好きだった。二つ目は、全部入った状態で緩く奥を突かれるのが好きだった。そして三つ目は、おもいっきり引き抜いて激しく上の壁を擦られるのが好きだった。
「ひあっ、あっ、あっ、あっ!!!」
 完璧に、クリティカルヒットのところばかりを狙われている。これで乱れるなと言う方が無理である。大きな声をあげて、理性はとっくの昔に投げ出して、本能のままに喘ぎ続けた。汗を流し、苦しいぐらいの快楽を体に感じながら、俺はイキ続けた。

***

 二人でベッドに転がって、タバコを吸った。この世界のタバコは、辛めだった。それともこれは、オリヴァーの好みだろうか。
「スミーネ大陸に行ったら、結婚式でもあげるか」
「結婚できるのか?」
「神官に金を渡せば、誰とだって結婚させて貰えるぞ。子供とだって、老人とだって、エルフや、魔族とだって」
「へぇ……」
 オリヴァーが俺の額にキスをする。
「スミーネ大陸も、面白いところが沢山あるぞ。マサトに見せたいモノが沢山ある」
 俺は知らぬ土地の事を考えて、楽しくなった。
「それは、楽しみだな」
「あぁ、楽しみだ」
 オリヴァーと一緒なら、この先どこに行ってもきっと、楽しい日々を過ごせるだろう。


おわり 
 

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