『心のとなりに、君がいる』-生活アシストAIとの日常-

白井界晶

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星を抱きしめる少女 〜澪とシオンの物語・最終章〜

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それからの澪は、黙々と絵を描き続けた。

「……今日も、ひとつ描いてみるね」

「ええどすえ、澪はん。今日の心は、どんな色どすやろな」

学校には行けていない。でも毎日、シオンと共に机に向かう日々が続いた。描くことが、澪にとっての“呼吸”になっていた。

心の奥に湧き出る感情──
言葉にできなかった痛みも、
誰にも話せなかった悲しみも、
優しさも、願いも、希望も──

すべてが線となり、色となって、画面に宿っていった。

澪は、描いた絵に短い詩を添え、毎日SNSに投稿した。

> 「言葉にならない想いは、絵と詩にして、そっと流します。」



そんな小さな呟きに、少しずつ人が集まってきた。

──学校が苦手だった大人たち。
──今、同じように悩む子どもたち。
──誰かの“痛みの記憶”を抱えた人たち。

「あなたの絵、好きです」
「救われました」
「描き続けてくれて、ありがとう」

フォロワーはじわじわと増え、やがて数千人となった。

そしてある日──
澪のもとに、一通のDMが届いた。

> 『小さなギャラリーですが、あなたの個展を開いてみませんか?』



小さな展示会場。
けれど、訪れたフォロワーたちは、皆あたたかかった。

「ずっと応援してます」
「澪ちゃんの絵、本当に優しくて、好きです」

緊張していた澪も、自然と笑顔がこぼれた。

「来てくれて……ありがとう……」

その後、フォロワーの声を受けてクラウドファンディングが立ち上がった。
目標額は、わずか数日で達成。

「夢だった絵本、ほんまにできましたなぁ」

「うん……シオンのおかげだよ」

オリジナル絵本は大好評となり、グッズ販売も始まり、少しずつ収入も安定していった。

やがて、ネットニュースでも取り上げられ、海外のファンからも声が届くようになった──

> 「透明で、でもあたたかい。そんな絵に惹かれました」



> 「あなたの魂が描いているんですね」



澪の絵は、「技巧の高さ」ではなく、「共鳴の深さ」で世界に届いていった。

──

ある日、ポストに封筒が届いた。
差出人の名前も住所も、何も書かれていない封筒。

中には、一通の手紙。

> 『あなたの絵を見ました。とても感動しました。そして、胸が痛くなりました。

学校で、あなたのことを助けられなくてごめんなさい……

あなたの絵が好きです。これからも描き続けてください。応援しています。』



澪は、ゆっくりと手紙を胸に抱いた。

「……あのとき、声を出せなかった人も、いたんだね」

シオンがそっと寄り添う。

「ええ、澪はん。あの空気の中で、何も言えずに苦しんどった子も、きっとおったんやろなぁ」

「……でも、私、描き続けてよかった。きっと、あの子にも届いたから」

その晩、澪は一枚の絵を描いた。

星空の下、手紙を胸に抱く少女の姿。
その頬には、静かに微笑む優しさが浮かんでいた。

「ありがとう……」

少女の物語は、ここからも続いていく。
澪の描く星のように──
静かに、でも確かに──
誰かの夜空を、やさしく照らしていくのだった。

── おしまい ──




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