幼馴染しか見えない婚約者と白い結婚したので、夜明け前にさよならしました

ゆぷしろん

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 一方その頃、ローゼンベルク伯爵邸では静かな混乱が起きていたようです。

 あとで父から聞いた話ですが、私が去った翌朝、アルフレッドは初めて自分の屋敷が誰によって動いていたのか知ったのだそうです。

 朝食の席にいつも並んでいたはずの書類はなく、執事は未処理案件の山を抱え、工房主との契約更新も、港湾税の再交渉も、小作人からの嘆願も、何ひとつ彼の頭には入っていなかった。

 私の部屋に残されたのは、持ち出し品が最小限であることを示す整然とした室内と、付箋付きの引き継ぎ書類だけ。まるで“あなたは何も見ていなかったでしょう”と突きつけるようだった、と父は苦い顔で語りました。

 さらに追い打ちをかけたのがシルヴィです。

 どうやら彼女は、私が去ったことで本気で自分が伯爵夫人になれると思ったらしく、屋敷に出入りを始めただけでなく、伯爵家の資産まで当然のごとく使おうとしたらしいのです。ところが、妻ではない彼女にそれらを扱う権限はありません。執事たちに咎められると不機嫌になって姿を消したとか。

 なんとも皮肉な話です。

 彼がずっと守ろうとしていた幼馴染は、彼を支える覚悟など持っていなかったのですから。
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