20年越しの日記

アユム

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ハヤテ君

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僕は小学3年生の頃からサッカーのスポーツ少年団に入った。

もともとサッカーが大好きで、お昼休みはいつもみんなと一緒にグラウンドでボールを蹴っていた。

この頃の将来の夢はサッカー選手だった。




いざ練習が始まると、小学6年生の体の大きさにびびった。

小学3年生と6年生の身長差は20センチくらいあっただろうか。

体格も全然違ったから尚更大きく見えた。

中でもハヤテ君という6年生は圧倒的に大きかった。

ご両親とならんでも身長差がほとんど無く、ほんとうに小学生なのかと疑った。

ハヤテ君からボールを取りに行こうとしてもすぐはじき飛ばされ、中には泣いてしまう同級生もいた。




お正月休み、保護者も参加してのイベントが開かれた。

大きな鍋で豚汁を作ったり、ビンゴ大会をしたりした。

イベントの最後には保護者対小学生達の試合が行われた。

ハヤテ君はでかいからという理由で保護者側のチームに入っていた。




試合が始まった。

あくまでもレクリエーションだったと思うが親が見てくれている数少ない機会だったから僕は真剣だった。

点を決めたい思いで必死にボールを追いかけた。

しかし人数が多く、上級生が試合を動かしていてまだ小学3年生の僕にはなかなかボールがまわってこなかった。

一回もボールに触れてないじゃないか

僕は親にいいところを見せたかった。




すると試合終盤、ボールはハヤテ君の元へといった。

ハヤテ君は僕の方へドリブルしながら向かってくる。

圧倒な体格差で恐怖を感じた。

けどここで逃げてしまっては親に格好がつかない。

一対一の勝負、僕はボールを奪ってやる。そう決意してハヤテ君のボールに向かって飛び込んだ。

ハヤテ君は僕がそんな動きをするのは想定外だったようで、大きく体勢を崩した。

そこに僕が突っ込んだので、ハヤテ君は大胆に転けてしまった。

やっとの思いでボールを取った僕はハヤテ君のことは気にすることなく相手のゴールに一直線だった。




結局点は決められず、その試合でボールを触ったのはその一回のみだった。

試合が終わり、家に帰る準備をしている時にハヤテ君を転けさせてしまったことを思い出した。


しまった!上級生を転かしてしまった!


急に不安になり、お父さんの元へ行き


「ハヤテ君を転かしてしまった!」


と言った。

謝って来いと言われると思ったがお父さんは僕の頭を撫でながら


「そうか、お前は大きな男になるわ」


と言った。

僕はこの時この言葉の意味がわからなかった。
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