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第一章 幼な妻の輿入れ
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しおりを挟む「ヘコむ……」
午後の会議のために、夜にアポイントを取り直していったん退室したものの、リリアの冷たい視線が頭から離れず会議もうわの空になってしまった。
「あっはっは!!
その渾身のギャグに笑わないなんて、リリア様やるなぁ!」
「うるさい」
「殿下は……少々残念なお方だったんですねぇ……」
「カロリーナ。もう少し俺に優しくしてくれ」
「私はいつでも殿下には優しくしておりますよ」
「俺もなんか違うと思ったが、他に思い当たらなかったんだ」
会議はとりあえず終わったし、書類仕事は溜まっているが締め切りは少し先だし、どうせ手につかないので今日はもう一度リリアを訪ねて―――出来れば何か無理矢理にでも食べさせてから眠りたい。
「……何か彼女の喜びそうなものはあるか」
「申し訳ありません、分かりません……リリア様は王都にいらしてからずっとお勉強ばかりで……」
「マティアスよりは付き合い長いでしょ、何かない?嬉しそうにしてたこととか楽しみにしてたこととか」
「………リリア様は、マティアス様とのご婚礼をお喜びのように見受けられました」
「側室なのにか」
そして虫を見る目なのにか。
「どっかでマティアスに惚れたのかな?」
「まさか。顔合わせで初対面だぞ」
「だからお前、割と国中の女の子に人気あるんだって」
「いえ、はっきりと聞いてはいませんが、想う殿方は他にいらっしゃるようです」
「えっカロリーナそれ言っちゃダメなやつでは」
「マティアス様はリリア様と離婚なさるおつもりなんでしょう?」
では何故、彼女はあんなに必死だったのか。
腹の立つあの男に一度、何を口約束したのか問い詰めるか?
そして可能ならその約束を履行してから―――
―――いや、違う。
これは政略結婚ではあっても、政治の取り引きではないのだ。
多分、彼女に正面から尋ね、答えを貰うべきなのだ。
例え虫と思われていても。
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