サイアイ

ガエイ

文字の大きさ
上 下
4 / 39
【最愛】-レイラ=フォード-

【最愛】第三話「ただの儚い夢なのだから」

しおりを挟む
 彼と出会った日の夜、夢を見た。

 興奮冷めやらぬなかで楽しい夢でも見るのかと思ったら、フラッシュバックのような、そんな一瞬で全てを見るような夢だった。

 彼と出会った影響だからなのか、それとも――


〇 〇 〇 。 。 。 。 


 これは定められた未来――

 赤と白で彩られた建物――

 その高層階、周囲には美しい夜景が見える――

 相対しているのは――誰?


『あなたがレイラ=フォードかしら……?』

『お前が――――か!』


 尋ねられた私は強い語気で相手の名前を叫んでいる。

 そこには黒と赤を基調として、レースやフリルが付いたゴシックロリータの服を着た女性が立っていた。目の下にはクマがあり、パーマのかかったミディアムヘア。

 こうサイを失った瞳がこちらをにらんでいる。

 私はどうして彼女と相対しているの……?

 ただ、彼女からは一生涯いっしょうがい――いや、死んでからもなお延々と続く因縁を感じる。

 それくらい私は彼女に対して強い憎しみを抱いているようだ。

 彼女が何かを話している。


 ――並行世界……? 世界樹……? レイラフォード……? ルーラシード……?


 聞いたことがない単語ばかりの、荒唐無稽こうとうむけいで馬鹿げた話だ。


 ――なんだこれは、わけがわからない。

 ――レイラ=フォードの人生という名の『物語』は理解ができないまま終わってしまうのか?


 これは理解の出来ない未来を受け入れろという予告か、警鐘けいしょうか――


〇 〇 〇 。 。 。 。


 これはただの夢、起きたらきっと全てを忘れてしまっているだろう。

 二度と思い出すことすらできない、ただの儚い夢なのだから……。
しおりを挟む

処理中です...