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しょっぱな。
であるからして。
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3.であるからして松蔭ケイによる ちんちんかもかも
「はっはっはぁ! ハデ好きで困るなぁ、ケイは! 今からそんなんじゃ、大人になって派手なアバズレに引っかからないかパパ心配だぞえー!?」
「その妙な語尾と今あんたが実況中継しながらプッシュした手のそれは何じゃあああぁぁぁ!?」
異様なフランクさで青年にダッシュしかけた玄朗佐めがけ、真糸は絶叫した。同時に、チャリンコに轢かれたカエルのようにへたばっていた状態から一気にでんぐりがえりし、ついで逆立ちする際に引き絞っていた腕力で思いっきり床を押しのけたことにより、玄朗佐の顔面に両足の底をねじ込む。
「ぎょぼおおおっっ!?」
微妙に悲鳴とは言いがたい奇声を空中に放ちつつ、ふっとんだ玄朗佐が元いた(っぽい)場所にめり込み直した。思った以上に深々と焦げた壁に突き刺さったように思えたが、真糸が前転で体勢を整えてすっくと立ち上がる頃には、玄朗佐ももっさりと姿勢を立位へ戻している。そうしてみてはっきりしたが、やはり二人とも無傷らしい。屋内の惨状を顧みると幸運を通り越して阿呆な展開としか思えなかったが、そのことを、奇跡的に……と表現して感謝する気にはなれなかった。なぜなら。
(奇跡は人造できる)
この世の誰ひとり、そいつの天然モノを拝んだことなんざ、ありゃしねえんだからよ―――
とのせりふは、先々週、宿敵バブローゾマの不幸な生い立ちに良心と涙腺を疲弊させながらも愛犬の死ならびに夕陽を背負って雌雄を決しにかかった満身創痍のキュンヘルさんからの受け売りだったのだが。
それでも、ありがたみもへったくれもなくなるその言葉を今こうして思い出したのは、玄朗佐がさっと背後に隠した小さなブリキ缶に、真っ赤なまるいボタンと『過激演出上等』というふせんが貼ってあったからに他ならない。
「この時点における最重要項目だけ繰り返すわよ。今あんたが実況中継しながらプッシュした手のそれは何?」
尋ねると、その声と共に極度の冷気でも吹き付けてきたかのように、玄朗佐がなんかぷるぷるしながら声を漏らした。
「さ、最重要?」
「死刑裁定が下るか否かは最重要でしょ。当人にとっては」
「パパ当人!? しかもダブルショックなことに『当人にとっては』って当人の娘である糸ちゃんの最重要項目からとうに除外済み!?」
つかつかとそちらに歩み寄りながらも、真糸は絶えず相手を睨みつけていた。その先で、玄朗佐は極めて神妙な顔つきをひきつらせつつ―――それは大蛇に捕食されるまでのカウントダウンを内心で開始したカピバラを思わせたが―――、ぶんぶか首を振ってみせる。
「いやいやいや。なああああにを言っているんだい。パパのおてては何ひとつ持ってないぞぅ。そーだ。そんなことより糸ちゃん、ぶっちゃけ歯から毛が生えかけてるよ」
「かけてないし!?」
なにはともあれ渾身から否定し、真糸は至極わかりやすく動揺している玄朗佐をしめ上げにかかった。
「あんたね! よりにもよって毛とか歯とか年齢的にも敏感に反応せざるをえないジャンルから無理矢理コラボさせなくてもいいでしょ! ウソにしても、もっとましなバリエーションからチョイスできないわけ!?」
「正直なパパのハートにはウソをストックしておく引き出しなんてないのさ」
「こ・の・オ・ヤ・ジ・はぁ~……!」
この期に及んでハードボイルにキメようとする玄朗佐の喉仏をひっつかみ、優勝カップでも振りかざすかのように中空で激しいシェイクを繰り返す。持ち上げた直後、その向こうに、爆風で真上の天井に突き刺さったちゃぶ台の腹が見えた。くろぐろと悲しげな影を帯びたそれに義憤を触発され、更に腕に万力をこめるのだが、どういう仕組みか全く効いていないらしい。イイ顔(当社比)を貼り付けた玄朗佐は、ぶん回されているというのに直立不動の姿勢を保持している。ななめ十五度くらい下を向いた感じで。
それこそブラック糸ちゃんとやらでも身の内に降臨しそうな心境であったが、ふとした拍子に、見えたものがあった。ぶち抜いた屋根裏から傾いで、危なげに揺れたちゃぶ台。その真下には、降りかかってくるほこりや木屑を払うこともせず、ずっとこちらを見詰めている青年の姿がある。こちらを。
どうしようもなく身体を強張らせ、真糸はその場で停止した。そしてそのまま、青年と目が合った状態で、数秒。相手は、わずかながら笑っているようにも見えるし、ただ目の前の成り行きをぽかんと見送っているようにも思えた―――つまりは、そのくらい判断に困る程度しか表情がなかったということだが、それは憤激する間際の唖然であると思えないことも無い。
「ええと、何? あの。そんで、」
意味もなくひとり勝手に追い詰められ、ばたばたと無意味な言葉が口を突いて出る。その中でとりあえず真糸は、手にしたままだった父親を力任せに放り投げた。実際かなり本気で投擲したつもりだったのだが、あろうことか玄朗佐は『たかいたかーい』とされて『わーい』と床に戻される幼児のようなヒコーキのポージングを優雅に決めて着地する。どう転んでも殺気と表現するしかない感情が一斉に喉もとの内側を引っかいてくるものの、第三者がいる環境は、真糸の理性に助力してくれた。息をつく。念のため、もう一度、息をつく……そして。
「はじめましてぇ自己紹介もまだですのに心苦しいんですけどぉもうしばらくお待ちくださいぃぃぃ」
社交能力を総動員して青年へ向けて一礼し、やおら玄朗佐の元まで駆け寄る。ちょっぴり残念そうに、襖と組んず解れつでぶっ飛んだ箪笥―――のはしっこからはみでたイタチの尻尾(こげてキツネ色)を眺めていた父親の前へと様々な破片を巻き上げながらスライディングし、真糸は明確な歯軋りを対象へ突きつけた。
「ちょっとこの なんちゃって不良中年!」
「え? チョイ悪オヤジ?」
「そーいう現代語訳すんじゃないわよ! ニュアンスとんちんかんのくせしてあんたに都合よさげに字ヅラかすってるだけにイラッとくるでしょーがぁぁぁ!」
悪気なくきょとんとしている―――それが最も腹立たしいのだが―――玄朗佐の肩を正面からわしづかみにして、怒りにしかめたヤクザ面を寄せる。……というのは実は、握りこんだ相手の肩があまりにもっちりしていて、どこか怒気の勢いが殺がれそうになったからだったが。とにかく、声を荒らげ続けた。
「今までの話を総合すると、あんたあたしの誕生日にお兄ちゃん役させるために雇ったってわけ? あの人」
「んー。ふたつ違う」
「ふたつ?」
「まずひとつ目。ケイはね。人じゃなくて、メカ」
問うべきことは―――
こちらもふたつになってしまった。今の言葉で。
どこか皮肉めいた言葉を疲労感と一緒くたに噛むと、それは随分ぱさぱさと渋く、真糸の奥歯から舌の根に沁みた。そんな中でなんとはなしに、増えたもうひとつについて聞いてみる。
「ケイ?」
「名前だよ。『兄』だから『ケイ』」
「うあ安直」
「そーなの?」
「疑問なんだ」
どこか不服そうにしゅんとする玄朗佐を前に、真糸は頭を抱えた。頭が痛いのは、父親のセンスについてではない……もしそうであったとしたら、世にごまんといる少女の大半は自分の味方だという根拠ない安心材料もあったのだが。納得しがたいことに、松蔭玄朗佐を父親に持つ少女は、この世に自分しかいない。
そのケイとやらを、ちらりと見やり……馬鹿馬鹿しくなって、あからさまに眺めやる。どうみたところで、そこにいるものは変わらない。長身に見合わないベビーフェイスを強調する、ひげの剃り跡など生涯で一度たりと残しそうもないのっぺりとした輪郭―――あわせて、どこぞの量販店で見繕ってきたと思われるジーンズとトレーナーを痩せた身体にひっかけている姿は、まるきりそこらへんにいる中高生だった。まかりまちがって真糸の通っている中学校の制服でも着ていたら、かなりの確率で見知らぬ先輩だと勘違いしていたに違いない。まあ、そう思えるくらいにはそいつが人間的だということであり……ついでに言うなら、自分とは似ても似つかない顔立ちだということだが。喜怒哀楽のどれともつかない、あるいはそのどれにでもなりえるような、ぺたんとした表情を見やり―――ついでその顔が、生死を巻き込む突発的な厄介事をただのイベント呼ばわりできる程度には遠隔地にいる野次馬たちの悪意ない悪人面のように思えた途端に、その印象は強くなる。もっとも、きょうだいを持つ友人の日々のコメントを思い出す限り、同胞間における容貌の相似に関して言うなら、そう特筆すべき感想でもないのかもしれない。
名状しがたい鈍痛のようなものが、身体の芯にある。それでも真糸は玄朗佐に向き直り、負けずに念押しした。
「……メカ? 人じゃないの? バイトを雇ったんじゃなくて?」
「違う。メカだよ。パパの専門は、アルバイトの雇用学とかそんなのじゃなくて、メカ系だもの」
こともなげに言う。
それが空気を読めない冗談であれば―――そのあと数分間の不快感はいかんともしがたいとしても―――結果的に、いくらか救いは望めただろう。それこそ世の中に無数に存在する父親というものは、良くも悪くも、若者世代の空気感にそぐわないよう出来ている。
だが、この松蔭玄朗佐という人間は、人間であるくせに、人間にすべからく存在するそういった常識・非常識をすっ飛ばしたところに存在している……くせに人間の発明家だった。発明家という職業が、この現代において妥当な自称なのかどうかは知るところではない。だが事実としてこの男は、古き良き常人が空想に基づいて肯定し、今の聞き分け良き常人が言われるがまま否定してきたような代物を、自分自身ですらよくわからない過程を経て発明する。
とはいえ、それが人の役に立っているかというと、かなり微妙な問題だった。少なくとも、真糸は役に立つ立たないと議論になっている光景さえ見たことはない。まずこの男は、他者から恒常的なニーズがあるようなものを作らない―――というか、自他共にこっそりニーズを抱きはするものの常識として恒常的に黙殺する、そんなものしか作らないというべきか。加えて、その発明意欲は突発的に暴発し、完成もひどく散発的なので、納期だ何だという一般的な企業では使い物にならない。大体が「人間だって一生は一回なのに機械にばっかぼろぼろ転生させてたら、ふははははついにこの時がミーは転生を繰り返すうちにようやく固着したまさしく貴様ら惰弱なサルどもが神とでも崇め奉るべき存在を内包したざぁます的な自我とか芽生えさせるぞそのうち。ビームとか撃ち始めたら要注意だ。慌てるな。まずはビーム袋を探せ」というやたらめったらな確信のもと、玄朗佐はほとんど同じものを作ろうとしないので、一般的な販売工程を組むことができない。ならば誰かがその部品でも拾って成果を掠め取りそうなものだが、「ロマンでしょ」という謎の信念により大方自爆装置とかついてるため、ほぼ失敗に終わっているらしい……らしい、というのは、多分そうなんだろうなぁという真糸の想像だからだが。とはいえ、ちょくちょく家を訪ねてくる、みずからをスポンサーの庶務課委託員と要約する鋭角サングラスに黒スーツの地味マッチョ集団が無言で差し出してくる英単語含ぶくみの名刺(っぽいものとしかいいようがない。読めないし)を見れば、自分の想像も、あながち的外れではなかろう。あの外人たちは、いざとなれば戦艦相手でも生身にヒノキの棒とかで木端微塵にしそうな空気がある。
が、どれだけ影に個々で映画の主役をはれそうな者共を(それと知らず)控えさせ、「糸ちゃーん。思いついたから、核爆弾とか水素爆弾とかあんなのプッて笑っちゃうくらいの作ってみたんだけどさぁ、よく考えたらこいつ目玉焼きも焼けないんだよね火のくせに。いらね」などと平気で言ってのける天才だったところで、玄朗佐は今ほど『アルバイトの雇用学』とかとんちんかんなことを口に出すことから分かるように、基本からしてのきなみとんちんかんである。
一言で済ますなら、始末に終えない。
真糸は羽虫のように不快に飛び交う記憶を見送って、口を開いた。
「……前から思ってたんだけど、専門っていいながら『系』って、やたら広くない?」
が、やはりあっさりと、玄朗佐。
「しょうがないじゃないか。書き連ねたら名刺それだけで終わっちゃうし」
「……まあ、名前が書いてない名刺なんて、名刺っていう名詞の意義に関わるものね。多分。かしら」
議論の余地を見つける気力もなく、げんなりと同意する。
そうなれば気にするよりしょうがなく、またしても真糸はケイの方を見やった。相手は相変わらず、瓦礫の中からこちらを静かに眺めて、突っ立っているだけだ。いっそその様子を気味悪く思えてしまえば楽なのだろうが、ただ単に性根のままトンマに呆けているだけにも見える面構えを遮二無二に逆恨みできるほど、自分は子どもではない。というか、むしろ大人になっていれば、こんなことにも後ろめたさなく割り切って取り掛かれるのだろうが。
十四歳。迷惑なこと限りない。
「中身はいつもみたく何となくやってみたらうっかり出来たんだけど、外見が大変だったよ~。なにせパパはチョイ悪とはいえオヤジだからね。パパのお部屋は一時期、十代向けのファッション雑誌であふれたよ。でも苦労の甲斐あって、ナウなヤングの流行りはピンポイントでゲットした。ヘアスタイルの代表格はソフトモヒカンとダブルチョンマゲ」
「ポイントする年代のピントが致命的にズレてるじゃないの! あんたのせりふ、中盤に差し掛かった時点から、四捨五入して十年は前っぽいネタしか登場してないわよ!?」
沈んでいた陰鬱から跳ね上がり、真糸は玄朗佐をはたき倒した。ぺこ、と安っぽく床に倒れる父親を尻目に、彼のヘアスタイル発言に基づく恐怖に駆られて、ケイに視線を走らせる。改めて見るまでもなく、相手の髪型は、そういったものではなかった―――とはいえそれは、試したけれど、毛質が柔らかすぎてワックスが効かなかったというだけなのかもしれない。黒坊主(五分ごぶ刈がり)至上主義を掲げてはばからない男が製作者であるにもかかわらず、ケイの髪は、その目元を充分隠せる長さの紅茶色である。なんというか、それは見事な現代風だと言えた……要は玄朗佐は、それこそ今後どんな形や色が流行しても対応できるよう、長さも色も極端でないものをスタンダードに据えただけなのだろうが。裏返しの意味まで察してしまえば、ありていに言ってぞっとしない。
どれだけ見られても騒がれても、ケイはやはり動かない。何かを待っているようにも思える。または、待ち終える時を見定めているような気もする。
と、ふと気付いて、真糸は動きを止めた。無意識ながら、声を上げる。
「―――ちょっと待って」
「いっぱい待ってもいいけど。とかとっさに言えちゃう懐の深いパパ。あ。糸ちゃん、メモ帳はどうしたの? ここはポイントだからチェックしとかないと。バレンタインデーにチョコレートに添えるカード書くときに困ちゃうよ?」
うきうきと胸ポケットからメモ帳を取り出そうとする玄朗佐を無視して、真糸は慎重に言葉を続けた。自分に残された、もうひとつの疑問について。
「……さっき、ふたつ違うって言ったわよね」
「うん」
「人じゃなくて、メカって言うのがひとつ目よね」
「そうだよ」
「あたしそれ以外に聞いたのは、『この人、イコール、お兄ちゃん役?』だけなんだけど?」
「そこなんだけどね」
玄朗佐が、わりかし気まずそうに目を泳がせる。この父がこんな風に言いよどむなど、尋常なことではない。嫌な予感に、真糸は背筋をつっぱらせた……父が白衣の中にしまおうとしているメモ帳がウインクした桃色にゃんこであるため、それがちらちらと視界にはいるたび、色々とぶち壊しになっているが。
「パパはさ、糸ちゃんが、欲しいものを聞かれたらまた『お兄ちゃん』って言ってくれると思って、こんな外見で作ったんだよね。ぜーんぶそれ用にセットアップしちゃってさ。あとは、核となるコマンド入力さえされれば、中枢がそれを基礎に情報を組んで、システムどおりに動き出してくれるはずだったんだけど……」
「コマンド」
「糸ちゃん、こう音声入力しちゃったよね」
と、続ける。
「『妹』って」
と。
その時、耳にし終えた音があった―――扇風機の音。
ずっと些細に鳴り続けていたので、逆に止まるまで気づかなかったらしい。だが、そんなものが秋場のこの部屋にあるはずはなく、まさかその音が聞こえてきていたケイの服の中にそんなものが内蔵されているわけもない。となれば、扇風機の羽根の回転が静まるように、自分の機能に一区切りつけた何かが次段階へとシフトしゆく音……ということか。たとえるなら、そう―――いやだ―――認めたくない―――だとしても―――そうだとするなら―――立ち上げたコンピュータの初期の頑張りがおさまって、やっとこさ本格的に起動し始めたかのような。
そして。
「おねーちゃあああああん!」
「いぎゃああああああぁぁぁぁ!?」
幼児が寝転がった親きょうだいによくかます腹プレスタックルを―――ただしそのほかのすべては優良青少年の猛烈な膂力と勢いと諸々のアレで―――仕掛けてきたケイをかわすすべなく、真糸は色気ない悲鳴を上げながら玄朗佐もろとも押しつぶされるしかなかった。
□ ■ □ ■ □ ■ □
ひとまず。
真糸ならびにその妹である兄ケイによるファイトのすべては、このはじまりを抜きにして語れるはずもない。つまり抜きにしなかった以上は語れるはずなので、はじまったのが終わるまでは頑張るしかないのだった。
「はっはっはぁ! ハデ好きで困るなぁ、ケイは! 今からそんなんじゃ、大人になって派手なアバズレに引っかからないかパパ心配だぞえー!?」
「その妙な語尾と今あんたが実況中継しながらプッシュした手のそれは何じゃあああぁぁぁ!?」
異様なフランクさで青年にダッシュしかけた玄朗佐めがけ、真糸は絶叫した。同時に、チャリンコに轢かれたカエルのようにへたばっていた状態から一気にでんぐりがえりし、ついで逆立ちする際に引き絞っていた腕力で思いっきり床を押しのけたことにより、玄朗佐の顔面に両足の底をねじ込む。
「ぎょぼおおおっっ!?」
微妙に悲鳴とは言いがたい奇声を空中に放ちつつ、ふっとんだ玄朗佐が元いた(っぽい)場所にめり込み直した。思った以上に深々と焦げた壁に突き刺さったように思えたが、真糸が前転で体勢を整えてすっくと立ち上がる頃には、玄朗佐ももっさりと姿勢を立位へ戻している。そうしてみてはっきりしたが、やはり二人とも無傷らしい。屋内の惨状を顧みると幸運を通り越して阿呆な展開としか思えなかったが、そのことを、奇跡的に……と表現して感謝する気にはなれなかった。なぜなら。
(奇跡は人造できる)
この世の誰ひとり、そいつの天然モノを拝んだことなんざ、ありゃしねえんだからよ―――
とのせりふは、先々週、宿敵バブローゾマの不幸な生い立ちに良心と涙腺を疲弊させながらも愛犬の死ならびに夕陽を背負って雌雄を決しにかかった満身創痍のキュンヘルさんからの受け売りだったのだが。
それでも、ありがたみもへったくれもなくなるその言葉を今こうして思い出したのは、玄朗佐がさっと背後に隠した小さなブリキ缶に、真っ赤なまるいボタンと『過激演出上等』というふせんが貼ってあったからに他ならない。
「この時点における最重要項目だけ繰り返すわよ。今あんたが実況中継しながらプッシュした手のそれは何?」
尋ねると、その声と共に極度の冷気でも吹き付けてきたかのように、玄朗佐がなんかぷるぷるしながら声を漏らした。
「さ、最重要?」
「死刑裁定が下るか否かは最重要でしょ。当人にとっては」
「パパ当人!? しかもダブルショックなことに『当人にとっては』って当人の娘である糸ちゃんの最重要項目からとうに除外済み!?」
つかつかとそちらに歩み寄りながらも、真糸は絶えず相手を睨みつけていた。その先で、玄朗佐は極めて神妙な顔つきをひきつらせつつ―――それは大蛇に捕食されるまでのカウントダウンを内心で開始したカピバラを思わせたが―――、ぶんぶか首を振ってみせる。
「いやいやいや。なああああにを言っているんだい。パパのおてては何ひとつ持ってないぞぅ。そーだ。そんなことより糸ちゃん、ぶっちゃけ歯から毛が生えかけてるよ」
「かけてないし!?」
なにはともあれ渾身から否定し、真糸は至極わかりやすく動揺している玄朗佐をしめ上げにかかった。
「あんたね! よりにもよって毛とか歯とか年齢的にも敏感に反応せざるをえないジャンルから無理矢理コラボさせなくてもいいでしょ! ウソにしても、もっとましなバリエーションからチョイスできないわけ!?」
「正直なパパのハートにはウソをストックしておく引き出しなんてないのさ」
「こ・の・オ・ヤ・ジ・はぁ~……!」
この期に及んでハードボイルにキメようとする玄朗佐の喉仏をひっつかみ、優勝カップでも振りかざすかのように中空で激しいシェイクを繰り返す。持ち上げた直後、その向こうに、爆風で真上の天井に突き刺さったちゃぶ台の腹が見えた。くろぐろと悲しげな影を帯びたそれに義憤を触発され、更に腕に万力をこめるのだが、どういう仕組みか全く効いていないらしい。イイ顔(当社比)を貼り付けた玄朗佐は、ぶん回されているというのに直立不動の姿勢を保持している。ななめ十五度くらい下を向いた感じで。
それこそブラック糸ちゃんとやらでも身の内に降臨しそうな心境であったが、ふとした拍子に、見えたものがあった。ぶち抜いた屋根裏から傾いで、危なげに揺れたちゃぶ台。その真下には、降りかかってくるほこりや木屑を払うこともせず、ずっとこちらを見詰めている青年の姿がある。こちらを。
どうしようもなく身体を強張らせ、真糸はその場で停止した。そしてそのまま、青年と目が合った状態で、数秒。相手は、わずかながら笑っているようにも見えるし、ただ目の前の成り行きをぽかんと見送っているようにも思えた―――つまりは、そのくらい判断に困る程度しか表情がなかったということだが、それは憤激する間際の唖然であると思えないことも無い。
「ええと、何? あの。そんで、」
意味もなくひとり勝手に追い詰められ、ばたばたと無意味な言葉が口を突いて出る。その中でとりあえず真糸は、手にしたままだった父親を力任せに放り投げた。実際かなり本気で投擲したつもりだったのだが、あろうことか玄朗佐は『たかいたかーい』とされて『わーい』と床に戻される幼児のようなヒコーキのポージングを優雅に決めて着地する。どう転んでも殺気と表現するしかない感情が一斉に喉もとの内側を引っかいてくるものの、第三者がいる環境は、真糸の理性に助力してくれた。息をつく。念のため、もう一度、息をつく……そして。
「はじめましてぇ自己紹介もまだですのに心苦しいんですけどぉもうしばらくお待ちくださいぃぃぃ」
社交能力を総動員して青年へ向けて一礼し、やおら玄朗佐の元まで駆け寄る。ちょっぴり残念そうに、襖と組んず解れつでぶっ飛んだ箪笥―――のはしっこからはみでたイタチの尻尾(こげてキツネ色)を眺めていた父親の前へと様々な破片を巻き上げながらスライディングし、真糸は明確な歯軋りを対象へ突きつけた。
「ちょっとこの なんちゃって不良中年!」
「え? チョイ悪オヤジ?」
「そーいう現代語訳すんじゃないわよ! ニュアンスとんちんかんのくせしてあんたに都合よさげに字ヅラかすってるだけにイラッとくるでしょーがぁぁぁ!」
悪気なくきょとんとしている―――それが最も腹立たしいのだが―――玄朗佐の肩を正面からわしづかみにして、怒りにしかめたヤクザ面を寄せる。……というのは実は、握りこんだ相手の肩があまりにもっちりしていて、どこか怒気の勢いが殺がれそうになったからだったが。とにかく、声を荒らげ続けた。
「今までの話を総合すると、あんたあたしの誕生日にお兄ちゃん役させるために雇ったってわけ? あの人」
「んー。ふたつ違う」
「ふたつ?」
「まずひとつ目。ケイはね。人じゃなくて、メカ」
問うべきことは―――
こちらもふたつになってしまった。今の言葉で。
どこか皮肉めいた言葉を疲労感と一緒くたに噛むと、それは随分ぱさぱさと渋く、真糸の奥歯から舌の根に沁みた。そんな中でなんとはなしに、増えたもうひとつについて聞いてみる。
「ケイ?」
「名前だよ。『兄』だから『ケイ』」
「うあ安直」
「そーなの?」
「疑問なんだ」
どこか不服そうにしゅんとする玄朗佐を前に、真糸は頭を抱えた。頭が痛いのは、父親のセンスについてではない……もしそうであったとしたら、世にごまんといる少女の大半は自分の味方だという根拠ない安心材料もあったのだが。納得しがたいことに、松蔭玄朗佐を父親に持つ少女は、この世に自分しかいない。
そのケイとやらを、ちらりと見やり……馬鹿馬鹿しくなって、あからさまに眺めやる。どうみたところで、そこにいるものは変わらない。長身に見合わないベビーフェイスを強調する、ひげの剃り跡など生涯で一度たりと残しそうもないのっぺりとした輪郭―――あわせて、どこぞの量販店で見繕ってきたと思われるジーンズとトレーナーを痩せた身体にひっかけている姿は、まるきりそこらへんにいる中高生だった。まかりまちがって真糸の通っている中学校の制服でも着ていたら、かなりの確率で見知らぬ先輩だと勘違いしていたに違いない。まあ、そう思えるくらいにはそいつが人間的だということであり……ついでに言うなら、自分とは似ても似つかない顔立ちだということだが。喜怒哀楽のどれともつかない、あるいはそのどれにでもなりえるような、ぺたんとした表情を見やり―――ついでその顔が、生死を巻き込む突発的な厄介事をただのイベント呼ばわりできる程度には遠隔地にいる野次馬たちの悪意ない悪人面のように思えた途端に、その印象は強くなる。もっとも、きょうだいを持つ友人の日々のコメントを思い出す限り、同胞間における容貌の相似に関して言うなら、そう特筆すべき感想でもないのかもしれない。
名状しがたい鈍痛のようなものが、身体の芯にある。それでも真糸は玄朗佐に向き直り、負けずに念押しした。
「……メカ? 人じゃないの? バイトを雇ったんじゃなくて?」
「違う。メカだよ。パパの専門は、アルバイトの雇用学とかそんなのじゃなくて、メカ系だもの」
こともなげに言う。
それが空気を読めない冗談であれば―――そのあと数分間の不快感はいかんともしがたいとしても―――結果的に、いくらか救いは望めただろう。それこそ世の中に無数に存在する父親というものは、良くも悪くも、若者世代の空気感にそぐわないよう出来ている。
だが、この松蔭玄朗佐という人間は、人間であるくせに、人間にすべからく存在するそういった常識・非常識をすっ飛ばしたところに存在している……くせに人間の発明家だった。発明家という職業が、この現代において妥当な自称なのかどうかは知るところではない。だが事実としてこの男は、古き良き常人が空想に基づいて肯定し、今の聞き分け良き常人が言われるがまま否定してきたような代物を、自分自身ですらよくわからない過程を経て発明する。
とはいえ、それが人の役に立っているかというと、かなり微妙な問題だった。少なくとも、真糸は役に立つ立たないと議論になっている光景さえ見たことはない。まずこの男は、他者から恒常的なニーズがあるようなものを作らない―――というか、自他共にこっそりニーズを抱きはするものの常識として恒常的に黙殺する、そんなものしか作らないというべきか。加えて、その発明意欲は突発的に暴発し、完成もひどく散発的なので、納期だ何だという一般的な企業では使い物にならない。大体が「人間だって一生は一回なのに機械にばっかぼろぼろ転生させてたら、ふははははついにこの時がミーは転生を繰り返すうちにようやく固着したまさしく貴様ら惰弱なサルどもが神とでも崇め奉るべき存在を内包したざぁます的な自我とか芽生えさせるぞそのうち。ビームとか撃ち始めたら要注意だ。慌てるな。まずはビーム袋を探せ」というやたらめったらな確信のもと、玄朗佐はほとんど同じものを作ろうとしないので、一般的な販売工程を組むことができない。ならば誰かがその部品でも拾って成果を掠め取りそうなものだが、「ロマンでしょ」という謎の信念により大方自爆装置とかついてるため、ほぼ失敗に終わっているらしい……らしい、というのは、多分そうなんだろうなぁという真糸の想像だからだが。とはいえ、ちょくちょく家を訪ねてくる、みずからをスポンサーの庶務課委託員と要約する鋭角サングラスに黒スーツの地味マッチョ集団が無言で差し出してくる英単語含ぶくみの名刺(っぽいものとしかいいようがない。読めないし)を見れば、自分の想像も、あながち的外れではなかろう。あの外人たちは、いざとなれば戦艦相手でも生身にヒノキの棒とかで木端微塵にしそうな空気がある。
が、どれだけ影に個々で映画の主役をはれそうな者共を(それと知らず)控えさせ、「糸ちゃーん。思いついたから、核爆弾とか水素爆弾とかあんなのプッて笑っちゃうくらいの作ってみたんだけどさぁ、よく考えたらこいつ目玉焼きも焼けないんだよね火のくせに。いらね」などと平気で言ってのける天才だったところで、玄朗佐は今ほど『アルバイトの雇用学』とかとんちんかんなことを口に出すことから分かるように、基本からしてのきなみとんちんかんである。
一言で済ますなら、始末に終えない。
真糸は羽虫のように不快に飛び交う記憶を見送って、口を開いた。
「……前から思ってたんだけど、専門っていいながら『系』って、やたら広くない?」
が、やはりあっさりと、玄朗佐。
「しょうがないじゃないか。書き連ねたら名刺それだけで終わっちゃうし」
「……まあ、名前が書いてない名刺なんて、名刺っていう名詞の意義に関わるものね。多分。かしら」
議論の余地を見つける気力もなく、げんなりと同意する。
そうなれば気にするよりしょうがなく、またしても真糸はケイの方を見やった。相手は相変わらず、瓦礫の中からこちらを静かに眺めて、突っ立っているだけだ。いっそその様子を気味悪く思えてしまえば楽なのだろうが、ただ単に性根のままトンマに呆けているだけにも見える面構えを遮二無二に逆恨みできるほど、自分は子どもではない。というか、むしろ大人になっていれば、こんなことにも後ろめたさなく割り切って取り掛かれるのだろうが。
十四歳。迷惑なこと限りない。
「中身はいつもみたく何となくやってみたらうっかり出来たんだけど、外見が大変だったよ~。なにせパパはチョイ悪とはいえオヤジだからね。パパのお部屋は一時期、十代向けのファッション雑誌であふれたよ。でも苦労の甲斐あって、ナウなヤングの流行りはピンポイントでゲットした。ヘアスタイルの代表格はソフトモヒカンとダブルチョンマゲ」
「ポイントする年代のピントが致命的にズレてるじゃないの! あんたのせりふ、中盤に差し掛かった時点から、四捨五入して十年は前っぽいネタしか登場してないわよ!?」
沈んでいた陰鬱から跳ね上がり、真糸は玄朗佐をはたき倒した。ぺこ、と安っぽく床に倒れる父親を尻目に、彼のヘアスタイル発言に基づく恐怖に駆られて、ケイに視線を走らせる。改めて見るまでもなく、相手の髪型は、そういったものではなかった―――とはいえそれは、試したけれど、毛質が柔らかすぎてワックスが効かなかったというだけなのかもしれない。黒坊主(五分ごぶ刈がり)至上主義を掲げてはばからない男が製作者であるにもかかわらず、ケイの髪は、その目元を充分隠せる長さの紅茶色である。なんというか、それは見事な現代風だと言えた……要は玄朗佐は、それこそ今後どんな形や色が流行しても対応できるよう、長さも色も極端でないものをスタンダードに据えただけなのだろうが。裏返しの意味まで察してしまえば、ありていに言ってぞっとしない。
どれだけ見られても騒がれても、ケイはやはり動かない。何かを待っているようにも思える。または、待ち終える時を見定めているような気もする。
と、ふと気付いて、真糸は動きを止めた。無意識ながら、声を上げる。
「―――ちょっと待って」
「いっぱい待ってもいいけど。とかとっさに言えちゃう懐の深いパパ。あ。糸ちゃん、メモ帳はどうしたの? ここはポイントだからチェックしとかないと。バレンタインデーにチョコレートに添えるカード書くときに困ちゃうよ?」
うきうきと胸ポケットからメモ帳を取り出そうとする玄朗佐を無視して、真糸は慎重に言葉を続けた。自分に残された、もうひとつの疑問について。
「……さっき、ふたつ違うって言ったわよね」
「うん」
「人じゃなくて、メカって言うのがひとつ目よね」
「そうだよ」
「あたしそれ以外に聞いたのは、『この人、イコール、お兄ちゃん役?』だけなんだけど?」
「そこなんだけどね」
玄朗佐が、わりかし気まずそうに目を泳がせる。この父がこんな風に言いよどむなど、尋常なことではない。嫌な予感に、真糸は背筋をつっぱらせた……父が白衣の中にしまおうとしているメモ帳がウインクした桃色にゃんこであるため、それがちらちらと視界にはいるたび、色々とぶち壊しになっているが。
「パパはさ、糸ちゃんが、欲しいものを聞かれたらまた『お兄ちゃん』って言ってくれると思って、こんな外見で作ったんだよね。ぜーんぶそれ用にセットアップしちゃってさ。あとは、核となるコマンド入力さえされれば、中枢がそれを基礎に情報を組んで、システムどおりに動き出してくれるはずだったんだけど……」
「コマンド」
「糸ちゃん、こう音声入力しちゃったよね」
と、続ける。
「『妹』って」
と。
その時、耳にし終えた音があった―――扇風機の音。
ずっと些細に鳴り続けていたので、逆に止まるまで気づかなかったらしい。だが、そんなものが秋場のこの部屋にあるはずはなく、まさかその音が聞こえてきていたケイの服の中にそんなものが内蔵されているわけもない。となれば、扇風機の羽根の回転が静まるように、自分の機能に一区切りつけた何かが次段階へとシフトしゆく音……ということか。たとえるなら、そう―――いやだ―――認めたくない―――だとしても―――そうだとするなら―――立ち上げたコンピュータの初期の頑張りがおさまって、やっとこさ本格的に起動し始めたかのような。
そして。
「おねーちゃあああああん!」
「いぎゃああああああぁぁぁぁ!?」
幼児が寝転がった親きょうだいによくかます腹プレスタックルを―――ただしそのほかのすべては優良青少年の猛烈な膂力と勢いと諸々のアレで―――仕掛けてきたケイをかわすすべなく、真糸は色気ない悲鳴を上げながら玄朗佐もろとも押しつぶされるしかなかった。
□ ■ □ ■ □ ■ □
ひとまず。
真糸ならびにその妹である兄ケイによるファイトのすべては、このはじまりを抜きにして語れるはずもない。つまり抜きにしなかった以上は語れるはずなので、はじまったのが終わるまでは頑張るしかないのだった。
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