即席異世界転移して薬草師になった

黒密

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第2章 変わりゆく者達

第十三話 狂気との対面、追加されし力

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「な、なにぃ!?」

 男は自分の招待がばれて驚いていた。

「さて、これでもまだ言い逃れをするかい? 偽物さん」

 そう聞くと、偽物は俺を睨み付けてきた。
 正直早く終わらないかな? 相手していると結構疲れるんだよねこういうやつ。

「うぐ......まさかばれるとはな......」

 どうやら、ようやくあきらめてくれたようだ。
 これなら早く終わりそうだ。
 俺はそう思っていると、偽物は妙な色をした丸薬を取り出して笑みを浮かべた。

「ふん、まだこちらにも策はあるわ!」

 そういうと、奴はその丸薬を飲み込んだ。
 何だか嫌な予感がする......
 俺は、そう思うと予想通り奴の体に異変が起きた。

 体の色が緑色になって顔は爬虫類のような顔になり、尻尾が生えていた。
 うわ~、気持ち悪い。

 顔が例えるならカメレオンでその下が人間でしかも尻尾つき、おまけに全身緑色とか気持ち悪いとしか言いようが無かった。
 しばらくすると、奴は俺たちに襲い掛かってきた。

「くそ、あの野郎最後の悪あがきで化け物になりやがった!」

 見た感じもう話は通用しないようだ。
 俺は兵士から剣を借りて奴の腕を切りつけた。
 しかし......奴の腕はすぐに生えてきた。

 どうやら自己再生能力が付いているようだ。

「シン! よけて!」

 しまった!? 俺は隙だらけだった。
 そして奴は、その腕に生えた太い爪で俺を切りつけてきた。

「ぐはっ......]

 くそ、なんてことだ......一回食らっただけでライフを半分近く持ってかれた気がする。
 今のままではまずいと思い、俺は鞄から煙薬を投げてリアン達を連れてホールから出て鍵をかけた。

 しかし、どうしたものか......
 傷口を見ると、痛々しい爪痕が残っていた。
 うわ、早く回復薬を飲まないとな。

 俺はランク三の回復薬を飲んだ。
 すると出血が止まり、傷口がふさがった。

「なんとか逃げれたがいつまで持つかな]

 俺は考えているうちにある作戦を思いついた。
 そして、その作戦をリアンに伝えて俺達はホールの中に入った。

 すると奴は、真っ先に俺を狙ってきた。
 知能は低くても俺を恨んだ記憶だけあるのか、リアンには目もくれず俺を狙ってきた。

「俺ばっか狙ってきてるな、ならこいつはどうだ!?」

 俺は奴に向かって麻痺薬を投げた。
 すると、奴の動きが少し鈍くなっていた。
 リアンは、動きの鈍くなった奴の足に向かって氷の魔法で足を止めた。

 ここまでは作戦通り、後は奴の口にあるだけの爆薬を口に突っ込むだけだ。
 しかし、奴は自ら足を切り落として俺にまた襲い掛かってきた。

 俺はとっさの判断で横に回避した。
 そして気が付くと奴の足がまた生えていた。
 恐ろしい生命力だな、とにかく奴を仕留めるにはすぐに奴の口に放り込まなければならないようだ。

 すると奴は首が二つに増殖していた。
 うえぇ、気持ち悪いな。
 なんかさっさと仕留めないとめんどくさそうだ。

「リアン、氷の魔法で奴の足をもう一度封してくれ!」

 そういうと、リアンは頷きもう一度呪文を唱えた。
 すると奴は攻撃対象をリアン変えた。

「させるか!」

 俺は落ちていた剣で、奴に切りつけた。
 すると、奴はまた俺を狙い始めた。
 そうしている内に、リアンが奴の足に向かって氷魔法を放った。

 さっきよりも少し威力は高めのようだ。
 動きが止まっている内に俺は、今度こそ爆薬を取り出して奴の口に放り込んだ。

 すると奴は、木っ端微塵になった。
 俺は目の前の化け物が完全に再起不能になったのを確認すると、ホッと安心した。

「さすがにもう再生はしないようだな......」

 どうやら、こいつにもスライム同様のコアがあったようで、そのコアの破片が飛び散っていたので、もう復活はしないようだ。

「ふう、ようやく終わったな」

 俺は、リアンの方を見ると疲れた表情から、微笑んでこっちを見てきた。
 疲れたな、とにかく奴は片づけたので俺たちは、王室にいるクラット王にこの事を伝えた。

 すると、クラット王は安心したのか緊張していた表情が和らいだ。

「君たちには本当に助けられたね、何かお礼をしなければ......]

 すると、リアンは王にある事を聞いた。
 それは火災で焼け野原になった村の跡がどこにあるのか、という質問だった。

 あれ? 何か夢で見たような気がするなその内容。

「うーん、申し訳ないけどその火災のあった村はこの大陸ではないよ」
「そうですか......」

 リアンは、そう聞くと少し落ち込んでいた。
 もしかしてあの時、ユーリが見せてきた夢はリアンの夢だったのか?

 だとすると聞いた方がいいのだろうか? 
 俺は色々考えたが聞くことをやめた。
 よく考えれば、まだ確証が無いし下手にそういうことは聞かない方がいいと思ったからだ。

「君たちはこれからどこへ行くんだい?」

 クラット王にそう聞かれ、俺達は戸惑っていた。
 何故なら、まだ行く先は決めていなかったからだ。

「もし行く先が無いならしばらく君たちが使っていた部屋を使っていいよ」

 マジか、それならしばらくお世話になるかな?
 俺は、リアンにそう聞くとシンに任せると言ってきた。

 なら決まりだな。
 俺達は、しばらく宮殿の客室を使わせてもらうことにした。
「ふぅー、やっぱり気持ちいいなぁ、ここの風呂は」

 俺はあの後、クラット王達と夕食を摂り、そして今は入浴中なのだ
 しかし、結局何で奴はクラット王に化けていたんだろう?

 やっぱり、何か理由があるのだろうか......ともあれ無事で何よりかな。
 あ、でもそうえば俺脇腹を爪でひっかかれていたっけ?

 でもまあ回復薬で治っているし、まあいいか。
 俺はその後、一時間くらいして湯船から上がった。

「さてと、今何時かな?」

 近くの時計を見ると、針は二十三時を指していた。
 明日は何をしようかな?
 そう思いながら俺は部屋に向かった。

「え? なにコレ?」

 部屋に着くと、目の前にはユーリがテーブルで紅茶を飲んでいたのだ。
 あれ? ここは夢の中なのか?

 俺は頬を抓ってみたが普通に痛かった。
 ってことは現実?
 でも何故、ユーリが現実に?

 そう思っていると、ユーリが口を開いた。

「夢の中で話すのもいいけど、たまにはこっちで話すのもいいかな? って思ってね」

 でも、リアンはユーリの事を知らないからなんて言おう......
 そう思っていると、ユーリが、心配ないよっと言ってきた。

 一体どういうことだろう?
 俺は部屋の中に入ると、リアンはベットで熟睡していた。

 なるほど、でも話していると目が覚めるんじゃないか?
 すると、ユーリは微笑みながら言った。

「心配ないよ、前にも言った通りこの世界の大半を管理しているんだ、彼女がいつ目を覚ますかなんて普通にわかるんだよ」

 何でそんなことまでわかるんだよ......
 俺は呆気に取られていると、ユーリが指を鳴らしてコーヒーを入れてくれた。

 取りあえず席に座ってコーヒーを飲むことにした。

「それにしてもお疲れさま、僕もまさか奴があんな姿になるとは思わなかったよ」

 ん? でもこの世界の大半を管理していて、リアンがいつまで寝ているかもわかるなら、奴が次に何をするか何て手に取るようにわかるのではないだろうか?

 そう思っていると、ユーリが一口紅茶を飲んで話した。

「君は勘がいいね、確かにこの世界の事を大半管理している僕からすれば、奴の動きも手に取るようにわかると君は思うだろう」

 すると、ユーリは真剣な表情で話を続けた。

「だけどそれは、この世界の人間であればの話なんだけど、僕は彼の情報を読もうとすると何かに邪魔されて読むことができなかった、これが何を意味しているか......君ならわかるだろう?」

 ユーリですら情報が読めない奴、とすると奴はひょっとして俺と同じ異世界の人間?
 すると、ユーリが頷いてきた。

「そういうこと、だけど彼の情報が読めないとすると何か別の力が働いているんだと思う」

 別の力? 
 しかし、奴の情報をユーリでも読めないなんて。
 一体何者なんだ......

「それに、何故かは知らないけど奴はまだ生きているよ」

 は? あの時俺は確かに奴の息の根を止めたはず......

「確かに、君はあの時奴を爆薬で木っ端微塵にしたけど、まだ肉片が残っていたからそこから復活したんだろうね」

 マジかよ、奴を完全に葬り去るには、肉片も残らないように消せってことかよ。

「でも、今は人の姿に戻っているみたいだよ、とにかく僕が奴について分かるのはここまでだよ」

 うーん......この先もまた奴に会う可能性は十分あるようだな。
 何か対策を取らないとな......

「とにかく、新しくチート能力をアップグレードしてあげるけど何か希望はあるかい?」

 新しいチートか、って言われても何か思い浮かばないな。
 そう思っているとユーリが笑みを浮かべて口を開いた。

「なら君の今の薬草師のチートに付け足しで、自分が望んだ効果を持つ薬を作れる能力をあげようか?」

 なんだそれ、望んだ効果? 

「簡単に言うと、この世界には無い薬を自分で創造する能力だよ」

 かなりのチートだなそれ、要は常識では実現不可能な事も薬で効果を得れば可能になるってことだよな。

「まあ、この能力で作る薬には必ずクリスタルを五個使用するけど、君の友人のリアンさんは魔力でクリスタルを生成することができるみたいだから、基本彼女の協力があっての力だよ」

 なるほど、それでも十分にチートだな。
 そうえばユーリに聞こうと思っていたことがあったんだ。

 俺はユーリにこの前の夢の事を尋ねた。

「そうえばこの前、ユーリが俺に見せた夢、あれってもしかしてリアンの夢か?」

 そう聞くと、ユーリは微笑みながら答えた。

「仮にそうだとして君はどうするつもりだい?」
「できることなら俺はリアンの力になりたい、といってもあの夢がまだ本当にリアンのかまではわからないけど」

 そう言うと、ユーリは俺の言葉を聞いてふと笑うと少しずつ透けていき、しばらくすると消えていた。

 何だか話していたら、だいぶ時間がたっていたようだな。
 時計の針を見ると深夜の三時を指していた。
 俺は時計を見た後、そろそろ寝るかと思いベットに入り眠りについた。
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