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ピクニック

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「マユちゃんもう大丈夫?急に倒れたからびっくりしたんだぞ。」
 アキラくんは顔を合わせるなり、体調を気にかけてくれた。
「ぐっすり眠って、もう大丈夫だよ。ありがとう。」
「今日は雲1つない青空の下で食事しながらゆっくりしようぜ!」
「うん!気持ちいいだろうなぁ。」
「ピクニックにぴったりの丘があるんだ、移動しよう!」
 アキラくんが明るい声で言った。レイくんがほうきを出したので、それを見たわたしは口を開いたが、
「前。」
 何か言う前に、レイくんがほうきの前をわたしに向けた。
「…はい。」
 やっぱり今日も前らしい。

 アキラくんが連れてきてくれた場所は一面緑が茂っていて、お花も咲いている。太陽の光を遮るものはなく、とても気持ちが良いところだった。大きく深呼吸してみる。緑の爽やかな空気と花の甘い空気が身体中を巡り、とても良い気分になった。
「気に入ってくれたようで良かったよ。」
 そんな私の様子を見たアキラくんも嬉しそうにしている。
「お腹空いたし、とりあえずご飯にしようぜ!」
 シートを敷いて、持たされたご弁当箱を広げていく。
「全部おいしそう…!」
 わたしは歓声を上げた。おにぎり、サンドウィッチ、唐揚げ、卵焼きとお弁当の定番がきれいに詰められている。
「「「いただきます!」」」
 私たちは美味しいごはんを食べながら、私が休んでしまった日の授業の話もして、ゆっくり時間が流れていくのを楽しんだ。
「…あれ?」
 ふと花が不自然に揺れたような気がして、目を凝らす。
「どうかした?」
 そんな私の様子にすぐ気が付いたレイくんは気にかけてくれた。
「花が揺れた気がして…。」
 レイくんは注意深く周りを見渡し始めた。
「…何かいる。」
 レイくんのその一言でアキラくんも警戒態勢に入る。
「少しずつこっちに近づいて来ていないか?」
 アキラくんも気付いたようだ。草の揺れがこちらに向かって来ている。レイくんが杖を構えて何か呟くと風が起こり、草を掻き分けた。
「あれは…トカゲ?」
 私が知っているトカゲよりやはり大きい。
「火吹きトカゲだ。」
 一目見るなり、レイくんが呟く。
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