僕達の恋は運命だと信じたい

ひな

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12話

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うん。覚えているよ。」

 たしか、その日は通り雨が近づいて雲行きが怪しなってアスファルトの匂いが漂っていた、春風が吹き肌寒い頃。
 『今日、練習休みみたいだ。彼女都合悪いみたいだから、映画でも見に行こうぜ!』ホームルームの時にスマホに届いたメッセージにスタンプでオッケーと送る。すると、『じゃあ、昇降口で待っとくからな。』とすぐに返信が届いた。その返信にもスタンプを送ろうとしたが送れなかった。なぜなら担任が僕のスマホを奪ったからだ。

「なにをしてるんだ大塚!本当に今の若いやつは常識がなっとらん。」

― 最悪。説教長いし、挙句に多分1か月くらいスマホ奪われるの確定してしまった。

「すいません。」

 一応謝ったが予想通り30分ほど説教をくらった。
しかもみんなの前で。
 説教が終わり外を見ると雨が降っていた。
― 雨降ってる。今日は災難だな。
 学校に傘を置いていないか念のため見る。
― お!ラッキー。傘あった。
 その傘を取り出し待っているであろう梓のもとへ向かう。

「おい!おせぇよ、バカ!」

梓の元へ駆け寄るとケツを軽く蹴られた。

「ごめんって。担任から説教受けててさ。」

 さっきの出来事を事細かに説明すると、

「災難だったな。まぁ、今回は許してやるぜ。」

 許しを得ることが出来た。

「雨降ってるから、駅までどうやって行く?」
「朗報だよ。ちゃんと傘持ってました。」

 背中の後ろに隠していた傘を見せる。

「ナイス!」

 ハイタッチをして喜びを分かち合った。帰ろうと門扉のほうへ目を向ける。
 すると、女の子が一人そこの前で、雨が降っているせいなのか身動きがとれないで突っ立っていた。
 彼女の柔らかそうな髪と少し短めなスカートが風でたなびいた。それはまるで桜のように綺麗で、どこか懐かしくて、彼女のことが気になって梓を昇降口に残し話しかけた。

「傘ないの?」

急に話しかけたせいか、少し戸惑いながらコクリと首を縦に振った。

「傘貸してあげるよ。」
 
 傘を差しだす。

「いや、いいよ。」
「家近いから。ほら、受け取って。」
「ありがとう。名前なんていうの?」
「翔、大塚翔。ちなみに1年1組。君の名前は?」
「花山歩美。1年3組。明日、1組に返しに行くね。」
「うん。待ってる。」

 二人とも笑顔で手を振り、花山さんが帰っていく後ろ姿を見送った。
― 嫌なことがあったけどあの子と話せてよかったな。

「おい!傘渡すなよ。結局濡れて帰らねぇといけなくなってまっただろ。」
「ごめん。なぁ、いっそのこと駅のホームまで走っちゃう?」
「はぁ?クソだる。」

 そう言われながらも、学校を一斉に飛び出した。 
 それから雨の日はなぜか必ず傘を忘れた彼女がそこで僕のことを待っていた。
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