僕達の恋は運命だと信じたい

ひな

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14話

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 家に着いてすぐ、歩美が消毒液で僕のケガした膝を手当てしてくれた。
ー 体育祭の時もこうして怪我の手当てしてくれたな。
 あれは高校で2回目の体育祭での出来事。

「足、挫いてしまった。」

 サッカー部に入っているせいか、問答無用でリレーのアンカーを任せられていたが、前の種目の綱引きで足を捻挫してしまい、急いで水で足を冷やす。
ー 地味に痛いし、捻挫してるかな?

「クラス対抗リレーに参加する人は入場口に集まってください。」

ー まだ足は痛いけど放送で呼ばれたし行かないと。
 急いで入場口に行こうとする。

「ちょっと待って!翔君、足怪我してるでしょ?」

ー 歩美ちゃん、なんでその事知っているんだ?

「大丈夫。少し捻っただけだから。」
「そうなの?でも、湿布貼っといた方がいいと思うの。足貸して?」

 湿布を貼ってくれて少しだけだがマシになった気がする。
ー 歩美ちゃんって本当に気がきくよな。このリレー勝ったら告白してもいいかな?

「ありがと。あのさ、このリレー勝ったら伝えたいことがあるんだけど。」
「どういたしまして。...うん。絶対勝ってね!」
「おう!これ、預かっといて。」

 タオルを渡しす。

「翔、早く来いよ!俺に負けるのが怖いのか?」

 梓が僕に喧嘩をふっかけにくる。

「何言ってんだよ。絶対勝つのはこっち。歩美ちゃん、また後で。」

 大好きな人に手を振りながら、二人で向かう。
ー 絶対負けられない。優勝するぞ。

 
 バンとピストルが鳴り一斉に走り出す。

「歩美ちゃんと何を話していたんだ?」

 待っている時に梓に話しかけられ、自分でも分かるくらい顔が真っ赤になる。

「お前にもやっと春が訪れたか。」

 肩にポンと手を置かれる。

「うっせぇ。バーカ!」
「そんな照れんなよ。」
「女癖悪いお前には分かんないよ。」
「言いがかりはするなよ。俺はただモテるだけなんだから。」

ー 何がモテるだけだ。今も女子にチャラチャラ手を振りやがって。

「あっそう。もうすぐ出番だよ、モテ男くん。」

 そんな話をしているとリレーアンカーの番になっていた。

「うっせ!よし、勝負だ。」
「負けねぇよ。」

 白線の上に立つ。
ー くそ!1組より2組の方が早いな。しかもビリかよ。でも、これで抜かしたら梓の負け顔を拝める。

「2組、アンカーにバトンが渡されました。」

 放送が流れ、梓が走り出す。
ー 流石だな。すげぇ早い。

「1組もアンカーにバトンが渡されました。」

 バトンを渡され、追いつこうと必死に喰らいたく。
 なんとか四人抜かして、ラストは梓だけになった。
ー ちくしょう。後もうちょっとで追いつきそうなのに。コイツ足早すぎだろ。 

「2チーム並んだ!どちらが勝つのでしょう。」

 諦めかけたが、それでも必死に喰らいつき、ゴールテープ付近で抜かした。

 ゴールしたのと同時に、二人とも一緒に倒れこむ。

「翔、早すぎるぜ!ビリから優勝するなんて。」

 悔しがる姿を見て、

「梓も早いよ。後もうちょっとで追いつかないところだった。」

 お互いの健闘を讃え合い、退場する。

「お疲れ様!」

 小走りで、さっき渡したタオルを持ってきてくれた。

「ありがとう、歩美ちゃん。」

 タオルを受け取り、汗を拭く。
 さっきまで一緒にいた梓はいつのまにかいなくなっていた。多分、あいつなりに気を使ったんだと思う。

「歩美ちゃん、優勝したから伝えたいこと今言ってもいい?」

 少し顔が赤く色づいた好きな人が頷く。
ー 告白されたことはあるけど告白したことがないから緊張するな。落ち着け、僕。 

「初めての好きだっていう感情をくれたのも、その優しい笑顔も全部大好きです。付き合ってください。」

 汗をかいている僕に飛びつくように抱きしめてくる。

「私も大好き!」

 そのまま抱き上げ、一周回った。

「絶対幸せにするからな!」
「私もぜっーたい、幸せにしてあげる!」

 幸せすぎるせいか、いつの間にか足の痛さは無くなっていた。
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