捨てられた錬金術師と暇な魔王の日常

satomi

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捨てられた錬金術師と暇な魔王の

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「お前はこのPTに要らない。なんで錬金術師?笑えるんだけど?」
そんなの知らないし、好きで錬金術師なわけではない。

「そういうわけで、このPTからさようなら~」



そうして俺はPTに捨てられた。
錬金術師……何ができるんだろう?
錬金術か……色んな物理・化学の法則的にはあり得ないことをしちゃうんだよなー。

俺はサラサラと流れる川を見ながらボケーっとしていた。
手を川の水に入れてみた。
(べっつに川に水がいきなり金に変わるわけないし……)


川に手を突っ込んでいた。涼んでるのだ。
涼しいなぁ。
キラッと光ったと思うと、手に重量感を感じた。
おいおいと手の上を見ると、金があった。
通常はモンスターを狩って、金を貯めて……って感じだけど、俺は水に手を突っ込んだだけ?


この調子だと数日で超豪華な装備ができるなぁ。……俺のレベル知らないけど。



数日後――
わかっていた。わかっていたよ(泣)
錬金術師が装備できるものはたいしてないってこと。
あー、この金どうすっかなぁ。寄付?……慈善家じゃないしなぁ。



その頃、俺を追い出したPTは……
馬車の中で
「いやぁ、PTの中に錬金術師っていて参った。使えねーじゃん。魔法使いとか僧侶とかもっとマシな職業の奴だと思ってたんだけど。使えねーって追い出しましたよ。はははっ」
とおのれの武勇伝のように話すが、周りのPTから

「錬金術師を捨てた?ありえねー。どこだよ?うちのPTが拾う!」

「抜け駆けすんなよ、俺のPTだ」

「いや、俺のだ!」

「えー、錬金術師ですよ?使えないじゃないですか?」

「馬鹿か?金が楽にたまるじゃねーか。いるだけでいーんだよ!」
「「そうだ!そうだ!」」
「??」
「知らないで追放?お前らバカだな?錬金術師はその名の通り、なんでも金になるんだよ。そこら辺の砂でもな!」
「……そんな」
無知とは罪である。




そんなこととはつゆ知らず、俺は余った金をどうするか考えていた。
「あー、川の水に戻そう。うん、水量だって大事だしな」
一人旅……独り言が増えた……。


「うーん、MAX装備だしなぁ。いっちょ、もう魔王の所に行っちゃう?」
もちろん全部独り言。もう慣れた。悲しくもある。

「錬金術師……そうだよ!錬金術師なんだから、自分の装備を自分で作ればいーじゃん。俺天才?」(誰に聞いてるんだろ?独り言ですよ、奥さん)
「うーん、錬金術師っぽい装備……。とりあえず、なんでも防げるマント~!毒でも麻痺息でも防げちゃう!
 
あ・と・は……特に要らないんだよな~。胸当て?心臓はガードしたいな。あと頭もガードしたい。頭をガード……兜は戦士じゃないから装備無理だし。もう俺特製☆猫耳つけちゃう?(誰に聞いてるんだろ?独り言ですよ、奥さん パート2)
 
モンスターに遭遇したら、速攻で触れればそいつを銅像にできるし。いや、銅像じゃなくてもいいんだけど、なんとなくね。
一応、運動しやすい靴。何といっても速さで勝負だしね。触れられないとどうしようもない。
他は普段着でいいかな?洗濯とか楽だし。綿100%っていいよね」


よって、装備は なんでも防げるマント 胸当て 俺特製猫耳 運動しやすい靴 にとりあえずのところ決まった。


「そして魔王の所に行っちゃう?(誰に聞いてるんだろ?独り言ですよ、奥さん パート3)
他にやることないし。そうしよう。うん」


俺は道すがら遭遇したモンスターを手あたり次第銅像にしていたので、俺の通り道はバレバレ。
いや、銅像じゃなくても土に還してもよかったんだけど、なんとなくね。なんか祀られてるやつとかいるけど。……そいつモンスターだけどいいのかな?


一番最初にスライムに遭遇した時は焦った~。
可愛らしい銅像になると思ったのに。
触れたら『じゅ~』って。
『じゅ~』って手が火傷するの。怖いね。
困ったから、言葉通じるようなの(通訳出来るやつ?)を即席で作って、説得をした。
『自分はできれば殺生はしたくない』『魔王の所に行きたい』など。


人間やればできるもんだ。
それからというもの、スライムという種族は遭遇しなくなった。


『銅像』ってのも俺が殺生したくないからだ。
あ、そういえば武器って持ってないな。剣みたいな?


「どうすっかな~?」(誰に聞いてるんだろ?独り言ですよ、奥さん パート4)
そう思いながら(口に出てるけど)、魔王の所まで行った。


それからというもの、モンスターの案内もあり、俺は魔界に到着した。
ほう。ここが所謂魔界というやつか。
実に空気も水も清浄。多種多様な種族がいるなー。
むしろ今までいた世界の方が空気も水も汚い。


俺、猫耳つけてるから獣人族っぽいのかな?
思いっきり人間なんだけど。


なんの祭りなんだろ?
屋台が出てる。
しかも、おいしそうだ。


『ゴミはゴミ箱へ』とな。うむ。
モラルがしっかりしてる。なんか以外。しかしなぁ、罰則『両手切断』って怖いんですけど……。


この世界の王に会うわけかぁ。難しそうだなぁ。
今まで会えた『勇者』とかっているんだろうか?


罰則の『両手切断』にやられてそう……。
この世界の警察?って強いな。


えーと、王に会うためにはどうすればいいだろうか?
前の世界だと、小市民は『褒章』みたいのがないと会えない。
うーむ。ここはひとつ警察に聞いてみよう!


「すいません」

「なんだ?小僧、忙しいのに」
忙しいのか……。

俺は小僧なのか……。そうだよな、魔族はスゲー長生きだもんな。それに比べりゃ俺なんかひよっこ、ひよっこ。ピヨピヨ。
「魔王に会うにはどうしたらいいですか?」
「はっはっは。小僧、酔ってんのか?俺達ゃ市民が畏れ多いってもんだ。なんか武功あげないと無理だろう。はっはっは」


武功……錬金術じゃだめかな?面白いから。


「おい、小僧。今、何したんだ?面白いじゃねーか!今日は祭りだ。せっかくだから、飛び入りで、見世物小屋にでも行けよー」
この警察の人の方が酔っているように思うんだけど、黙っていよう。うん。


しかし、スライムに遭遇した時の通訳できるやつ役に立ってるなぁ。多分。
異種族間で会話って難しい……。


見世物小屋かぁ。俺なら錬金術でマジックショーみたいなのができそうだなぁ。いっちょやってみるか。


そして、俺は‘RENKIN SHOW’というマジックショーみたいなのをやった。


ウケた。ツボがわからないが。
とりあえず、綺麗なお姉さんに花をステージからプレゼントした。
お姉さんはエルフ族。そりゃあ、キレイなお姉さんだったさ。


他にも、ステージからその種族に合わせて即席でプレゼントを渡したら喜ばれた。
「どういう仕組みでこうなってんだ??」
「サクラってヤツじゃないのか?」
などの噂がありましたが、こちらは初対面です。


そんなことをしていたら、ついに念願の魔王からお声がかかった!
「登城せよ」とな。

ここは腕の見せ所!
全装備を久しぶりにして、いざ魔王の元へ!


ほぇ~、魔王の城ってこんななってんだ~。
と、俺は完全にオノボリさんだった。初めてだしね。
THE ONOBORISAN !!


普通の貴族の屋敷がさらに清潔で、かつ、広大って感じ。

強いて文句を言うなら、「何でトイレ(個室)が広い(舞踏会場くらい)んだー!!」
落ち着かないじゃないか。便器から壁までなんで距離が……。鬼気迫る時(超トイレに行きたいとき)困るじゃん!等と小市民な感想を持っていた。




そして魔王と謁見した。
「余と初めて会うな」

「初めまして。これでも人間で、錬金術師です」

「ほう。皆の者、下がって良いぞ」

あぁ、威厳はあるし、何といっても、魔王は竜!ドラゴン!DRAGON!
正直、コワイ……。


「えーと、用件なんだがなぁ。錬金術師か。丁度いい。あのな、実は……内緒だぞ……。耳がかゆくてなぁ」

は?

耳が痒い?かけばいいじゃないか。

「ほら、俺の手って竜だし、爪あるじゃん?耳に刺さるから耳が痒いのが辛くてなぁ」

「はぁ」
俺の意気込みを返してくれ!

「錬金術師なら何とかできそうじゃん?ああ、言葉遣いは普段はこっち。一人称が‘余’とかないよね~(笑)」

いやいや、思いっきり発言してたし。

「えーと、耳の奥が痒いんですか?」

「そうなんだよー。爪がねー。あ、敬語とかもめんどくさいからなくていいよ」

フランクすぎるだろ?いいのか魔界……。
俺はとりあえず、綿棒(デカい、長い)のを作成した。

「おう、ジャストフィット!あ~気持ちいい~。これ使い捨て?」

「そうだけど……。」
綿棒は使い捨てだよな?

「また耳痒くなったら困るから、君、宰相補佐とかやってよ」
そんな理由で?はぁ?!すごい面倒なポストじゃん。補佐だからまだマシなのかなぁ?
「自分の能力的には造幣局とかが向いてるかと思うけど……」

「あー、造幣局はここから遠いから綿棒がなくなった時に困るもん。そういうことでよろしく」
『~もん』って語尾でも全く可愛くない。

「ところで、‘魔界’ってなんなの?いろんな種族いるし、自然豊かだし……」

魔王は居住まいを正した。今までが、綿棒の恩恵で崩れすぎてたんだけど。
「あぁ、そうだなぁ。人間がいるとこを‘人間界’というのか?そこから追い出されたものが集まるところ。みたいな?」

みたいな?じゃねーよ。もう、何か慣れた。

「いろんな種族がいるけど、そいつらも追い出されたもんだな。奴隷として残ってたりもするけど。それはそいつの運だな」

そんなもんなのか……。

「人間が至高・善で、その他が悪だろ?存在すらも許されないみたいなかんじするけど?」

まぁ、そうだな。

「妖精もこっちに来たけど、それは人間界が自然を壊すから妖精が嫌がってな。そんでこっちに来たんだ。たまーに人間界でもいるなぁ。そいつらは神のようにあがめられるんだろ?不思議だよな」

「人間は妖精と会話ができないですからね」
……妖精……あんなに可愛いのに言葉遣い悪いんだよな。

「んで、魔族は必要悪なんだろ?」

「多分」

「放っておけばいいのに、手を出すからケガする。こないだもなんかPT組んで魔界に来たなー。生活態度が悪くて、ポイ捨てするんだよ。信じらんなくねー?」

あぁ、魔界はそういうのキッチリしてるから……。魔王に会う前に魔界の警察にやられたのかな?罰則きついよな……。
俺は遠い目をしてしまった。きっと警察に両手切断とかされたんだろうな……。

「しかも‘勇者’とか言うんだぜ?自分で恥ずかしくないのかねぇ?勇者って何かすごいことを成し遂げた人につける二つ名みたいなもんだろ?」

そっか、そう考えるとすごい恥ずかしいな。

「ま、結局のところ勇者という二つ名をもつ剣士だったんだけどね」

魔界の警察にやられちゃったのか……。

「どうしてまた‘人間界’にモンスターが行っちゃうんですか?」

まだ耳掻いてるよ……。よっぽど耳痒かったんだね。綿棒万歳!

「うーん、それはだなぁ。言いにくいんだが、所謂迷子ってやつ?」

いやいや疑問形で言われても。
「だってよぉ、こっちの方が住みやすいじゃん?水も空気もキレイだし、安全は確保されてるし、モラルもしっかりしてるし」
うん、わかるー。
「あ、綿棒は燃えるゴミ?」
「一応全体を燃やせる素材で作りました」
「燃えるゴミでいいな。スペアの綿棒作ってください!」
魔王なのに礼儀もしっかりしてるなぁ。向こうの王様はなんだか傲慢で偉ぶってる感じだ。自分は何もしてないのにさ。フンッ。

「で、その『勇者』ってのはどうやって決めるんだ?」
「自分で名乗る感じでしょうか?今も‘人間界’には5人くらいいると思いますよ」
「恥ずかしくないのかね?」
「恥ずかしいですよねー。周りがおだてるんじゃないですか?」
「おだてられた豚か……。モラルもなってないしな」
「豚……?」
「あー、‘人間界’の端っこの国の言葉だ」
「了解。モラルはなぁ。勇者を名乗るならモラルはきちんとしてほしいですよね」
「そうだな、って俺は会ったことないんだけどな。ここに来る前に魔界警察に捕まっちゃうんだもん。モラルのせいで」
なんかプリプリ怒ってる。会いたかったのかな?実は暇……とか?まさか~『魔王』に限って!




俺は魔王にとある提案をしてみた。
「‘人間界’に行ってみませんか?あ、他意はないですよ。観光みたいな?」
「うーん、でもわざわざ水とか空気とか汚いところに行くのはなぁ……それより!俺と魔界観光しね?」

へ?死ね?

「ま・か・い・か・ん・こ・う!そっちの方が楽しそうじゃん」
あ、俺の聞き違いか。マジで死を身近に感じたよ……。
「俺はいいんですけどー。魔王さん、めっちゃ目立ちませんか?竜だし……」
巨体で『お忍び』は無理でしょー。
「甘いな、実に甘い!なんと竜の姿から俺は各種族に変身できるのです!」
マジかよ……。っていうか、俺に言っていいのかよ。

「ほれ」
と言って、魔王は竜の姿から、人間・エルフ・ドワーフ・吸血鬼・スライム・妖精etc.なってくれた。っていうか、人間の姿になって思う存分耳を掻けばよかったのでは?と思うけど、黙ってよう。うん。
「はい、質問!」
「なんだね?」
「吸血鬼さんは魔界でどのように生活しているのですか?」
「あー、やつらなぁ。日に当たるのダメじゃん。で、自分で日当たり悪い空間作って陰気に生活してるよ。たまーに人の血を吸うみたいだけど、別にそいつを僕にしたいわけじゃないし。何も食べなくても数百年は生きるし。今のブームは野菜らしい。自給自足の完全オーガニック」
‘人間界’でのイメージぶち壊し。特にラスト。


年に何度か種族の長が集まる会合みたいのがあるらしい。
そこで、何してるー。だのとまぁ世間話をするようで、そこで魔王も知った様子。
「じゃ、とりあえず妖精の所にいってみよー!観光だから俺は人間の姿になる。うーん、『マークン』とでも俺のことは呼んでくれ」
妖精……可愛いのに口悪いとこか……なんか気が重い。



―――――――――


「着きましたね。マークン」
「おう」
「で、見所は?観光なんですから、案内してくださいよ!」
「妖精が可愛いのに口が悪いところかな?」
もう知ってるし……


「何よ!人間風情が!!」
「そーよ!文句があるなら来るなって言うのよ!」
「だいたい、人間界の汚いこと!なーんか人間自体の根性が汚いですーってかんじよねー」
「ちょっといいかな?」
「「「長老様‼」」」
思ってたのと違う…。半裸の中年オヤジが出てきた。オヤジ?長老だからもっと長生きしてるのかな?


「魔王様とお見受けします。お姿を変えていらっしゃっても私にはわかります」
「よいよい」
いいのかよ?バレたのに?
それより…半裸の中年。なんかこしみので、何で胸のとこに貝殻のがあるんだ?俺からみたら変態なんだけどなぁ。そして魔王はその変態と対談してるし。ごく自然に。



半裸の中年との対談も終わり、俺と魔王は妖精族の所からエルフ族の所へ行った。
  



なんだ!ウワサ通りキラキラしてる!変態(※重要)はいない。
一人の男性が近づいてくる。美丈夫というのか?キラキラしてるし。手足長っ。顔小さっ。……弓上手い。俺と魔王が狙われた。
的は俺かー!!

「魔王様と共にいるとは魔王様の命を狙っているものか?」
「落ち着けー!!お忍びで魔界観光しているだけだ」
「失礼しました。私はエルフ族の長をしております。長と申しましても、最近は異種族間の婚姻が増えましたので、族長など古い慣習になるでしょうな(笑)」
俺を的にした事への謝罪はないのか……。


しっかしまぁ、エルフは美形が多いなぁ。
族長曰く、エルフの女性の悩みは胸が小さいこと。
弓を扱うから先祖代々小さくなったらしい。遺伝には敵いません。
胸小さくても、長生きで超美形だからいいじゃん。

考えていることが顔に出ていたのか?心が読めたのか?女性のエルフに射かけられた。
「はぁ、これこれ。この方は魔王様のお連れの方だ。無下に扱わないように」
「しかし族長!我々女性の悩みを長寿で解決されたんですよ?」
「それでも我慢。直接セクハラされたわけではないのだからいいではないか?」
「はぁ……まぁ」
とりあえず謝っておこう。
「悪かった。悩みは悩みだよなぁ。俺も悩みはあるよ。‘もっと美形だったら’って。時間も解決してくんないしさ。遺伝には勝てないからさ」

 
俺はエルフと心を通じた!


「最近、好きな子いるんだ……」
おぉ、恋愛相談ですか?なになにっ?
「ドワーフ族の子なんだけど」
なんと?!ドワーフの女の子ですか?
「そりゃあ、エルフに比べたらキラキラ要素はないよ?」
うん知ってるー。
「でも、なんていうか……一緒にいたい・支え合える感じ?」
俺に聞くな。
「俺は性格重視なんだよね。すっごいいい子なんだ。家族とか親戚いっぱいいるけど小さい子の世話が上手で家事も頑張ってて……」
うーん。モジモジしながら惚気ているような?乙女だなぁ、男だけど。これがオトメンというやつか?
「わかった。次にドワーフの所に行くと思うから、手紙があれば持ってくよ」
「ありがとう。それじゃあ、コレ」
俺は一瞬引いた。札束のようなものが目に入った。それは手紙ではない。手紙+賄賂?
「彼女の事を思うと、吟遊詩人のように言葉が浮かんで……」
純・手紙ですかい。うん。病気だね。
「あずかった。ドワーフの所に行ったときに渡すよ。で、彼女の名前は?」
「チョコ」
俺の頭の中で、『猪子』と変換された。
「可愛い名前だな」
「可愛いのは名前だけじゃない!!」
「わかった。あずかったコレは確かに渡すよ」

うーん、コレ……。相思相愛じゃなかったら、嫌がらせレベルの手紙……。





ドワーフの国にもついた。
どうしてバレるんだ、魔王。お忍びの意味ねーじゃん!

「すいませーん、『チョコ』って名前の女の子知りませんか?」
俺は約束は守る男だ。

「『チョコ』って名前はドワーフの女に多い名前なんだよ」
 マジかよ?どうすんだよ、この分厚くて重い(いろんな意味で)ラブレター(多分)。
「最近、エルフ族の男性と親しくしている『チョコ』って名前の子は?」
「んあぁ?エルフ族?あーんな優男と親しくするって相当モノズキだよなー。あっはっは」
うーん、ドワーフとエルフは仲が悪いようだ。


「……あの、それ私……」
おおっ、名乗り出てくれた!ありがたやー。紙って重いんだよね。ラブレターだから別の意味でも重かったし。
俺は彼女に封筒の束を差し出した。
「わざわざありがとう」
へー、内面綺麗な子なんだなぁ。エルフは外面美形だけど。
遠くから信じられないものを聞いた。
「はぁ?吟遊詩人かよ?言いたいことあんならハッキリ言えよ。なんでこんなに紙使ってんだ?言いたいことは一行で済むんじゃねーの?」
……恐ろしいものを聞いた。聞かなかったことにしよう、うん……。
それは禁句ですよ。


俺はドワーフの職人に俺の装備について訊いた。
「錬金術師ねぇ。特に戦闘に参加しないんだ、コレが。よって装備の必要ナシ」
「魔王に綿――――」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ、綿で作った服をもらったケド、サイズ合わなかったんだよなー?」
魔王に綿棒の話はするなと言われた。沽券に関わるらしい。だからって綿で作った服って……もっと金属的なものだと思うよ。魔王に献上するんだから。



「さて、もう城に帰るか」
「そうですね、ちなみにこれまで派遣された勇者はどうなったんですか?」
「魔王軍にやられたりって、モラルを守らないでポイ捨てする方が悪い。あと、こっちの方が空気とか水とかキレイだからって居ついてたりする」
「はぁ、なるほど。何度も勇者が派遣されてるのになぁと思ってたんですよね。別に魔王が殺してたりとかじゃないんですね」
「そうだなぁ、あっちの自業自得。若しくは、居ついちゃうパターンだな」
そうこうしてるうちに城に着いた。


「はぁ、やっぱりこの姿の方がラクチーン」
「魔王の威厳を持ってくださいね」


「俺……宰相みたいのやるんですか?」
「おう!」
 返事がいい。のはいいけど、どうしたもんか。
「宰相って何すればいいんですか?」
「……雑用?」
 疑問形で答えられても困るし。
「なんか欲しい時に、錬金でなんか作ってや」
 あ、それならできる。

「とりあえず、耳かきください」
「丁寧語じゃなくていいんじゃないですか?」
耳痒いのは我慢できないんだ。

俺は綿棒(魔王用)の作り置きを結構作っておいた。


「そういえば吸血鬼がなぁ。昼でも日が当たらない空間を自分で作ってるのはいいけど、魔力を消費するから何とかしてくれってお前に依頼してたぞ」
それは、魔界観光行ってる場合じゃなかったのではないのではなかろうか?
「日に当たらないとカルシウムを吸収するビタミンを体内で作れないんですよ。吸血鬼さんは作れるのかな?人間は作れないけど」
「作れないとどうなるんだ?」
「カルシウムが吸収されないんですよ。恐ろしいですね。ちょっと肩たたいただけで粉砕骨折です。歯ももろくなるでしょうね」

「それはよくある‘当たり屋’というやつに当たると骨が砕けるのか?」
「うーん、ちょっと違うんですけど「兄ちゃん、肩がぶつかったすげー痛い。病院代払えや」ってやつ。すげー痛いどころじゃなくて、骨が砕けてますからね」
「俺なんか牙が……」
「人間とドラゴンの生態は違うのかもしれませんよ?」
吸血鬼さんも日に当たらないで長生きできてるし、きっと大丈夫なんだろう。

うーん、黒いビニールで覆ってしまえばいいけど暑いんだよなぁ。
「日光って照り返しもありますし、難しいですね」
「テリカエシ?なんだそりゃ?」
「えーと、地面に当たった光がまた光るって話です。例えば、地面が鏡だとしましょう。上を日光で当たらないようにしても、覆っている部分以外から光が当たりますね?」
「ふーむ。難しいんだな。吸血鬼自体を覆ってしまえば……」
「動けないでしょう(笑)」
「吸血鬼さんは昼に何をしたいんですか?」
「流行ってる菜園じゃないか?」
「野菜は日光が不可欠ですね。モヤシは必要ないですけど。長袖・長ズボンに麦わら帽子・サングラス・軍手・マスクを装備して菜園をやってもらうしかないかなぁ?」

「吸血鬼さんに会いに行けませんか?どういうのがほしいのかとか聞きたいし」
「魔王たる俺に不可能はない!」
そこなの?そこ威張るとこなの?



@吸血鬼さんのところ
「うわー、暗いですねー。菜園って俺が思ってた野菜と違う。暗くても育ってるし」
「ジメジメしていて、俺は好まん。さっさと吸血鬼と面会だ」


「初めまして。錬金術師です。日光の下でも平気なものをご所望とか?」
「初めまして。吸血鬼です。ロウソクの明かりは平気です。ニンニクは嫌いです」
 礼儀正しいなぁ。
「どんなものがいいんですか?このままだと、The農作業ルックの長袖・長ズボンに麦わら帽子・サングラス・軍手・マスクって装備になりますけど?
日光の光線にも種類がありますよね。どれがダメなんですか?ロウソクが大丈夫ってことは可視光線の赤と赤外線、遠赤外線は大丈夫そうですね。
炭火は大丈夫ですか?炭で焼くと肉も魚も美味しいですよね!」
「生肉が好きだから、焼いたことない」
そうだった……。
「日焼けは今までしたことなさそうですね。すっごい色白ー」
「馬鹿にしているのか?」
「いいえ?感動しているんですよ。色白に。透き通るような白さじゃないですか!」
実際透き通ってるし、血管が。採血しやすそー。
「日焼けなんてとんでもない!死んでしまう」
「では、どのようなものをご所望なんですか?」
最初からこれ聞けば、話が早かった。
「俺は日焼けさえしなしなければいいんだろうか?」
そんなら簡単だ。
「服を作りますね?あと、軍手と養蜂家のような麦わら帽子も作ります。採寸するのでご協力をお願いします」
 
俺は吸血鬼さんの採寸をしていた。
ん?なんかいい匂いがする。

「暇だから俺の尻尾の肉を焼いてみた」
七輪持ってきたのか……。用意がいいな。
「尾なんてすぐ生える。うまいぞ、ほれ食え」
「おいひいです」
熱いです。
「吸血鬼は生の方がいいのか?生でほれ?それともレアで焼くか?」
引いてるよ……。魔王がそんなことをするのはちょっと……だよなぁ。

無事に採寸も終わり、あとは俺が頑張ればいいだけだ。

吸血鬼さんは恥ずかし気に言う。
「できればでいいんだ、できればで。……牙を磨ける歯ブラシが欲しい」
あー、そういう悩みありそう。既存の歯ブラシだと、牙を磨いただけで歯ブラシの毛が割ける。みたいな?
「牙用の歯ブラシを作りましょう。その方が確実です」
 

あー、種族によってはこういう地味な悩みがあるんだなー。魔王が耳かき欲しがったり。耳かきは重要だけどさ。耳痒いのは辛いよなぁ。

花粉症の花の妖精もいそうだし、弓が苦手なエルフだっているだろうなぁ。


「吸血鬼さん!希望の服できましたよ。これで、昼間も外で動けるはずです。何か不都合があったり、改善してほしい点があればおっしゃってください。こちらはその方が助かります。―――あ、あと牙用の歯ブラシも作りましたよ?はい、どうぞ」
「助かる。何か困ったことがあったら言ってくれ。俺で良ければ助けになる」
吸血鬼さんに助けを求めるようなこと?


その後俺は花粉症の花の妖精(意外にもオッサンだった)のための薬だったり、弓が苦手なエルフのために簡単な銃だったりを作った。
代価は俺が困ったときに助けるということで収まった。

今後俺は困ることがあるんだろうか?








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