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5.その頃の故国
その頃のタフラス王国は荒れていました。主に王宮が。
「お前は……『聖女』として召喚したリカではなく、そこにいるヴィオル=カースター侯爵令嬢と婚約をしたのか?」
「はい。リカはなんだか色々と干渉をしてきて正直なところ鬱陶しかったです。ヴィオル侯爵令嬢は見た目はもちろんのこと、教養・マナー・品格など全てにおいて国母に相応しい女性です」
「まぁお恥ずかしい」
「『聖女』を召喚したならば『聖女』と婚約するのが因習だ!」
「そんなのはただの習わしでしょう?『聖女』と婚約しなかったからどうだというのですか?」
「お前というやつは……この国の惨状を知っているのか?地方の村では冬を越せるのかどうかもわからないほどの不作。原因不明の凶作。天候不順により、農作物の実りもよろしくない」
「それがどうしたというのですか?」
「国全体としての税収に関わるんだよ?きちんと勉強しなかったのか?」
「勉強したつもりです!」
「――――勉強したならみすみす『聖女』を手放すという愚行をしなかっただろうな…。近衛兵!『聖女』リカの行方を一刻も早く探すように」
「恐れながら陛下!『聖女』リカは隣国キャプ帝国にいるという話です。しかも第2皇子に気に入られ、皇宮で生活しているとか……」
「うむむ。流石、キャプ帝国第2皇子。『聖女』を懐に入れたか。これではなかなか戻って来いとは言えないな。それもこれもギャラン!お前が不甲斐ないから!」
「ええ~!」
王宮はこの荒れ具合だったが、地方の村ではいつもなら森で生活しているハズの獣が畑に侵入し、少ない収穫量をさらに減らしている。
『聖女』の恩恵を受けることができなくなったのは獣たちも同じで、森の木の実の実りも今年は少なく、獣はやむを得ない状況で人里に降りてきている。
地方の村の収穫量が減っているので、税収も減る。
だからと言って税率を上げると、国民の不満が募る。
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人件費を削ることで、一人一人の負担が増え、邸内でのボイコットなどが増えた。それでも高位貴族に収入源はないので、ただただ使用人が減っていく。
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