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第十四話 そのキック、きっくぅー
「でね、それからみんなアタシたちの事を裏切り者だって……」
「そうですか。それは大変でしたね」
「お父さんだって、きっと理由があると思うんだ。それなのに……」
「ええ、ええ。そうでしょうとも」
根掘り葉掘り聞かれているのはチャトの方であった。ついには俺も聞きづらかったことを掘り返され、全てを赤裸々に語ってしまっている。
「……それもスキルなのかい?」
「いいえ。違いますよ」
【聞き上手】みたいなスキルでもあるのかと思ったが。いや……【尋問】かな。
「アタシ、戦闘でも全然役に立てなくてさ……レキちゃんのキックすごかったから、ますますアタシの立場がなくなっちゃうんじゃないかって……」
「チャトさんにはチャトさんの良さがあります」
「そうかな……」
落ち込むチャトの肩を、レキスがぽんぽんと優しく叩く。
「あの蹴り技、日ごろの鍛錬によって身につけたものなのかい?」
「いえ、あれは【キック】というスキルです。ラトビ族は生まれつき持っていることが多いですね」
そういえば神様も言ってたな。スキルは生まれつき持っているもので、新しく覚えることはないんだったっけ。
「いいなぁ、アタシ、なんのスキルもないよ」
「……いえ、チャトさんもいくつかスキルを所持していますよ」
「え? ほんと?」
「ええ。私は【鑑定】スキルも持っているので、レベルと所持スキルを見ることができます」
「所持スキルって、自分ではわからないものなのかい?」
「そうですね。なので、自分のレベルとスキルがわからないまま一生を終えることもあるそうです」
「ねえねえ、あたし、どんなスキル持ってるの?」
「チャトさんは【俊足】【回避】【パンチ】【軟体】を所持していますね。レベルは15で私よりも高いです」
「……パンチ?」
チャトが右手で拳を作り、自分の頬に当てながら聞き返す。
「チャトさんは、今まで誰かを殴ったことはありますか?」
「えっ。……うーん、ないんじゃないかなぁ。あ、でも小さいときにお父さんのお腹を叩いたことはあるかも」
「なるほど、それで気が付かなかったんですね。では、試しにだじや氏を殴ってみましょうか」
「おいおい、なんてことを言うんだ君は」
「チャトさんの為です。犠牲になってください」
「勘弁してくれ……」
「では、私が殴られ役になりましょう。どうぞ」
無表情のまま、スッと自分の頬を差し出す。
「で、できないよそんなこと」
「わ、わかったよ。それじゃあこれでどうだい?」
俺は開いた右手を差し出し、チャトに叩いてみるよう目配せした。
「え、大丈夫なの?」
「チャトの為になるならいいさ。軽めに頼むよ」
「う、うん。わかった。それじゃ、いくよ」
チャトが立ち上がり、拳を握りしめる。その構えは妙に堂に入っており、じわりと嫌な予感がこみあげてくる。
「ちょっと待……」
「えーいっ!」
チャトが拳を突き出すと、パァン! と弾けるような音を立てて、俺の右手が勢いよく後ろに吹き飛ばされた。
「あいっ……たぁー!」
鋭い痛みを感じたと思ったら、すぐにそれは痺れへと変わっていく。感覚の消えかかった右手をふるふると振って、ちゃんと手首についているか確かめる。
「大丈夫!? ご、ごめんねれーいち。手加減したんだけど」
「……あれで加減したのか。いやはや、すごい威力だったよ」
「手が飛んだと思いましたが、くっついているようですね。残念」
「残念て君ね」
「とまあ、これが【パンチ】スキルです。弱い魔物ならほぼ一撃でしょう。拳で戦う場合は、傷めないよう、手袋などを着けた方がいいかもしれませんね」
「う、うん。わかった」
パンチの解説を終えたレキスが、テントの片隅に立てかけてある棍棒に視線を移す。
「もう一つ確認したいことが。チャトさんの使っている武器は、何かこだわりでもあるのでしょうか」
「えっ、あの棍棒? うーん、お父さんのお古をそのまま使ってるだけで、こだわってるってわけもないかなぁ」
「それなら、適正武器を使われたほうがいいですよ」
「「適正武器?」」
俺とチャトが同時に反応する。
「この世界の住人は、一人一人違う武器の才能を持っています。適正武器を持てば、すぐに扱えるようになりますが、適正のない武器を扱うためには、かなりの努力が必要となります」
「そんな仕組みがあったのか」
「41年生きてきて、知らなかったよ……」
「スキル以上に、気づかずに過ごす人が多いようですね。戦闘に関わらなければ、まず武器など持たないので。それに【鑑定】スキルがないと確認できませんから」
「レキちゃん、わかるの? あたしの適正武器って何かな?」
「それでは発表します。チャトさんの適正武器は……。ドゥルルルッルルッルルル」
つっかえながら口でドラムロールを刻むレキスを、チャトと共に固唾を飲んで見守る。
「ルルル……じゃん。【弓】です」
「えっ」
「弓、か」
棒を振り回してるイメージが強いので、飛び道具とは意外だったな。
……なんだか間違えて味方を射てしまいそうな気もするが。いや、それはさすがにチャトに失礼か。
「そういえば、子供の時狩りに行って弓を持たせてもらったとき、上手だねって褒められたことがあるかも。当たったの近所のおじさんだったけど」
「おいおい」
やっぱり射とるやないかい。
「どこかで弓を調達できると良いですね」
「なあ、俺にも適正武器ってあるのかい?」
「……異世界の住人であるだじや氏には、適正武器はおろか、レベルも存在しないようです。スキルもダジャレ魔法のみですね。不思議です」
「そうなのか……ガッカリだなぁ」
どうりで強くなった実感がないわけだ。森で倒したあの巨大食虫植物、けっこう経験値持ってそうだったもんな。チャトのレベルが高いのは、あいつを倒したせいだろうか。
「戦闘は私とチャトさんで頑張りますので、だじや氏は無理に戦おうとしなくていいです」
「うーん。男としてそれはなんとも情けないな……」
「いいんだよ、れーいちはいざという時すごいことするんだから」
「そ、そうかな」
「あのね、森ですごかったんだよ。おっきい植物がいたんだけど……」
その後、とりとめのない話で盛り上がり、俺が『そろそろ床についとこー』と言うと、二人は気絶するように眠りについてしまった。
そう、またしてもやってしまったのだ。チャトとレキスに毛布をかけ、俺は少し離れた所で横になる。さすがに女性の真横で寝るわけにはいかないからな。……二人ともちゃんと目覚める、よな?
若干の不安を抱きつつ、俺も寝ることにした。二人の穏やかな寝息を聞きながら、平原の夜は更けていった。
「そうですか。それは大変でしたね」
「お父さんだって、きっと理由があると思うんだ。それなのに……」
「ええ、ええ。そうでしょうとも」
根掘り葉掘り聞かれているのはチャトの方であった。ついには俺も聞きづらかったことを掘り返され、全てを赤裸々に語ってしまっている。
「……それもスキルなのかい?」
「いいえ。違いますよ」
【聞き上手】みたいなスキルでもあるのかと思ったが。いや……【尋問】かな。
「アタシ、戦闘でも全然役に立てなくてさ……レキちゃんのキックすごかったから、ますますアタシの立場がなくなっちゃうんじゃないかって……」
「チャトさんにはチャトさんの良さがあります」
「そうかな……」
落ち込むチャトの肩を、レキスがぽんぽんと優しく叩く。
「あの蹴り技、日ごろの鍛錬によって身につけたものなのかい?」
「いえ、あれは【キック】というスキルです。ラトビ族は生まれつき持っていることが多いですね」
そういえば神様も言ってたな。スキルは生まれつき持っているもので、新しく覚えることはないんだったっけ。
「いいなぁ、アタシ、なんのスキルもないよ」
「……いえ、チャトさんもいくつかスキルを所持していますよ」
「え? ほんと?」
「ええ。私は【鑑定】スキルも持っているので、レベルと所持スキルを見ることができます」
「所持スキルって、自分ではわからないものなのかい?」
「そうですね。なので、自分のレベルとスキルがわからないまま一生を終えることもあるそうです」
「ねえねえ、あたし、どんなスキル持ってるの?」
「チャトさんは【俊足】【回避】【パンチ】【軟体】を所持していますね。レベルは15で私よりも高いです」
「……パンチ?」
チャトが右手で拳を作り、自分の頬に当てながら聞き返す。
「チャトさんは、今まで誰かを殴ったことはありますか?」
「えっ。……うーん、ないんじゃないかなぁ。あ、でも小さいときにお父さんのお腹を叩いたことはあるかも」
「なるほど、それで気が付かなかったんですね。では、試しにだじや氏を殴ってみましょうか」
「おいおい、なんてことを言うんだ君は」
「チャトさんの為です。犠牲になってください」
「勘弁してくれ……」
「では、私が殴られ役になりましょう。どうぞ」
無表情のまま、スッと自分の頬を差し出す。
「で、できないよそんなこと」
「わ、わかったよ。それじゃあこれでどうだい?」
俺は開いた右手を差し出し、チャトに叩いてみるよう目配せした。
「え、大丈夫なの?」
「チャトの為になるならいいさ。軽めに頼むよ」
「う、うん。わかった。それじゃ、いくよ」
チャトが立ち上がり、拳を握りしめる。その構えは妙に堂に入っており、じわりと嫌な予感がこみあげてくる。
「ちょっと待……」
「えーいっ!」
チャトが拳を突き出すと、パァン! と弾けるような音を立てて、俺の右手が勢いよく後ろに吹き飛ばされた。
「あいっ……たぁー!」
鋭い痛みを感じたと思ったら、すぐにそれは痺れへと変わっていく。感覚の消えかかった右手をふるふると振って、ちゃんと手首についているか確かめる。
「大丈夫!? ご、ごめんねれーいち。手加減したんだけど」
「……あれで加減したのか。いやはや、すごい威力だったよ」
「手が飛んだと思いましたが、くっついているようですね。残念」
「残念て君ね」
「とまあ、これが【パンチ】スキルです。弱い魔物ならほぼ一撃でしょう。拳で戦う場合は、傷めないよう、手袋などを着けた方がいいかもしれませんね」
「う、うん。わかった」
パンチの解説を終えたレキスが、テントの片隅に立てかけてある棍棒に視線を移す。
「もう一つ確認したいことが。チャトさんの使っている武器は、何かこだわりでもあるのでしょうか」
「えっ、あの棍棒? うーん、お父さんのお古をそのまま使ってるだけで、こだわってるってわけもないかなぁ」
「それなら、適正武器を使われたほうがいいですよ」
「「適正武器?」」
俺とチャトが同時に反応する。
「この世界の住人は、一人一人違う武器の才能を持っています。適正武器を持てば、すぐに扱えるようになりますが、適正のない武器を扱うためには、かなりの努力が必要となります」
「そんな仕組みがあったのか」
「41年生きてきて、知らなかったよ……」
「スキル以上に、気づかずに過ごす人が多いようですね。戦闘に関わらなければ、まず武器など持たないので。それに【鑑定】スキルがないと確認できませんから」
「レキちゃん、わかるの? あたしの適正武器って何かな?」
「それでは発表します。チャトさんの適正武器は……。ドゥルルルッルルッルルル」
つっかえながら口でドラムロールを刻むレキスを、チャトと共に固唾を飲んで見守る。
「ルルル……じゃん。【弓】です」
「えっ」
「弓、か」
棒を振り回してるイメージが強いので、飛び道具とは意外だったな。
……なんだか間違えて味方を射てしまいそうな気もするが。いや、それはさすがにチャトに失礼か。
「そういえば、子供の時狩りに行って弓を持たせてもらったとき、上手だねって褒められたことがあるかも。当たったの近所のおじさんだったけど」
「おいおい」
やっぱり射とるやないかい。
「どこかで弓を調達できると良いですね」
「なあ、俺にも適正武器ってあるのかい?」
「……異世界の住人であるだじや氏には、適正武器はおろか、レベルも存在しないようです。スキルもダジャレ魔法のみですね。不思議です」
「そうなのか……ガッカリだなぁ」
どうりで強くなった実感がないわけだ。森で倒したあの巨大食虫植物、けっこう経験値持ってそうだったもんな。チャトのレベルが高いのは、あいつを倒したせいだろうか。
「戦闘は私とチャトさんで頑張りますので、だじや氏は無理に戦おうとしなくていいです」
「うーん。男としてそれはなんとも情けないな……」
「いいんだよ、れーいちはいざという時すごいことするんだから」
「そ、そうかな」
「あのね、森ですごかったんだよ。おっきい植物がいたんだけど……」
その後、とりとめのない話で盛り上がり、俺が『そろそろ床についとこー』と言うと、二人は気絶するように眠りについてしまった。
そう、またしてもやってしまったのだ。チャトとレキスに毛布をかけ、俺は少し離れた所で横になる。さすがに女性の真横で寝るわけにはいかないからな。……二人ともちゃんと目覚める、よな?
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