スキル【等価交換】で異世界商会革命!元社畜、現代知識でざまぁ成り上がる!

かしおり

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第17話:奴隷市場の邂逅、紫水晶の瞳

そうしてミレルナの裏通りを彷徨ううち、ユウトは意図せずして、この街の最も暗く、そして深い闇と言える場所に足を踏み入れてしまった。
奴隷市場だ。

薄暗く、淀んだ空気が漂う一角。
鉄格子のはまった窓しかない建物が並び、その間には粗末な檻がいくつも置かれている。
そこには、様々な人種――人間だけでなく、獣人やエルフらしき者まで――が、家畜のように押し込められたり、錆びついた鎖で繋がれたりして、商品として並べられていた。
買い手と思しき者たちの品定めするような下卑た視線、奴隷たちの虚ろな目、そして時折響く鞭の音と、押し殺したような苦悶の声。
それは、前世の日本では決して見ることのできない、あまりにも残酷で非人道的な光景だった。

(これが……奴隷制度……。本当に、存在しているんだな……。見るに堪えない……)

胸が悪くなるような光景に、優斗はすぐにでもその場を立ち去りたかった。
しかし、足が竦んで動けない。
ここで背を向けたら、前世で理不尽に目を背け続けてきた自分と、何も変わらない気がしたのだ。
女神セレネが言っていた「アルザリエルの淀み」の一端を、今まさに目の当たりにしているのかもしれない。
そう思うと、何かを見届けなければならないという、奇妙な使命感のようなものが湧き上がってきた。

優斗は意を決し、奴隷たちが並ぶ通路を、一人一人の顔を見ながらゆっくりと奥へと進んでいった。
ルミアもまた、主人の意図を理解したのか、威圧感を抑え、静かに彼の後を追う。その鼻先は、微かにひくついている。この場所の空気が、彼女にとっても不快なのだろう。

市場の最も奥まった、ひときわ薄汚れた檻の中。
そこに、一人の若い女性が静かに座っていた。
長い銀髪は汚れ、埃をかぶっている。着ているものはボロ布同然だったが、その顔立ちは驚くほど整っており、何よりもその瞳――絶望に染まりきることなく、奥深くに強い意志と、まるで磨かれた紫水晶のような知性の光を宿した瞳が、優斗の心を捉えて離さなかった。
彼女は、他の奴隷たちのようにただうなだれているのではなく、じっと何かを耐えるように、あるいは何かを待つように、背筋を伸ばして前を見据えていた。

(あの人は……何か、違う……。他の人たちとは、纏っている空気が……。まるで、汚泥の中に咲いた一輪の白百合のようだ)

その時、一人の太った奴隷商が、その女性の檻の前に立ち、いやらしい笑みを浮かべて声をかけた。
その手には、短くしなる鞭が握られている。

「おい、リヴィア。お前もそろそろ年季が明ける頃合いだが……新しい買い手がつきそうだぜ? 今度の旦那様は、ちぃとばかり特殊な趣味をお持ちだが、お前ほどの美貌なら、きっと満足させられるだろうよ。ひひひ……」

リヴィアと呼ばれた女性は、奴隷商の言葉に眉一つ動かさず、ただ冷たい視線を返すだけだった。
その毅然とした態度が気に食わなかったのか、奴隷商は顔を歪め、手に持っていた鞭を振り上げた。

「なんだその目は! 少しは愛想良くしろってんだ! この売れ残りめが!」

鞭が、鋭い風切り音を立ててリヴィアの華奢な肩へと振り下ろされようとした、その瞬間――。

(やめろッ!)

優斗は、気づけば声を張り上げていた。
前世の自分なら、きっと見て見ぬふりをしていただろう。危険なことには関わらないのが賢明だと、自分に言い聞かせていただろう。
しかし、今の彼の中には、女神セレネから与えられた力への微かな自覚と、何よりもルミアという絶対的な味方がいる。
そして、セレネの「強欲という名の獣」という言葉が、目の前の奴隷商の卑劣な姿と重なって見えた。
ルミアは、ユウトが声を上げるまで、彼の意思を尊重するかのように静かに待っていたが、その瞳は鋭く奴隷商を捉え、喉の奥で低い唸り声を上げ始めていた。

奴隷商とリヴィア、そして周囲の他の奴隷たちの視線が、一斉に優斗へと注がれる。
優斗はゴクリと唾を飲み込み、一歩、また一歩と、リヴィアの檻へと近づいていった。
何か大きな運命の歯車が、今、静かに、しかし確実に回り始めたのを、彼は予感していた。

(俺に、何ができる……? 分からない。でも、この人を、このままにはしておけない……! ルミアも、きっと同じ気持ちのはずだ)

その決意が、彼の足を前へと押し進めた。
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