スキル【等価交換】で異世界商会革命!元社畜、現代知識でざまぁ成り上がる!

かしおり

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第22話:再び裏路地へ

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リヴィアの的確な助言により、ユウトの石鹸ビジネスは新たな方向性を見出し始めていた。  
ターゲットを富裕層に絞り、価格を少し上げたことで、利益率は格段に向上した。  
また、リヴィアがどこからか仕入れてくる情報――ボルック商会の内部事情や、有力者たちの好みなど――は、ユウトの商売にとって非常に有益だった。  
彼女はまだ正式に「仲間」になったわけではないが、その存在は既にユウトにとって欠かせないものとなりつつあった。

そんなある日、ユウトはリヴィアと共に、さらなる情報収集と、新たなビジネスの種を探すため、再びミレルナの裏通りへと足を運んでいた。  
ルミアももちろん一緒だ。  
彼女は、ユウトとリヴィアの少し後ろを、周囲を警戒しながら静かについてくる。

「ボルック商会も、最近は我々の動きをかなり警戒しているようですわ。露骨な妨害は減りましたが、水面下で何かを画策している可能性は否定できません」

リヴィアは、周囲の喧騒に紛れるように、小さな声でユウトに報告する。

「そうか……。やっぱり、油断はできないな。何か、奴らの不意を突くような新しい商品か、あるいは情報が必要だ」

ユウトも気を引き締める。

彼らが、以前リヴィアを見つけた奴隷市場に近い、ひときわ薄暗く治安の悪い区画に差し掛かった時のことだった。  
どこからか、幼い子供のすすり泣く声と、それを庇うような少年の、か細いが必死な声が聞こえてきたのだ。

(この声は……? まさか、また……)

ユウトはリヴィアと顔を見合わせ、声のする方へと慎重に近づいていった。  
そこは、打ち捨てられた荷車の陰。  
二人の子供が、地面にうずくまっていた。

一人はまだ十歳にも満たないであろう少女で、顔は青ざめ、ぐったりとして時折苦しそうな浅い呼吸を繰り返している。  
その小さな体を、十二、三歳くらいの少年が必死に抱きかかえ、周囲を警戒するように睨みつけていた。  
少女の指先にそっと触れてみると、氷のように冷たかった。

二人とも、獣人だった。  
少年には狼のような耳とふさふさした尻尾があり、少女にも同じ特徴が見て取れる。  
その姿は、あまりにも痛々しく、そしてどこか既視感を覚えるものだった。

「その毛並みと耳の形状……おそらく、月光狼(げっこうろう)族ですわ。古い文献でしか見たことがありませんが、非常に希少な種族のはず……」

リヴィアが、眉をひそめて囁いた。

「それよりも、あの状態では長くは持ちますまい。特に妹御の方は、かなり衰弱しているように見えます。早急な手当てが必要ですわ」

(月光狼族……? 初めて聞く名前だ。だが、ルミアが……)

ユウトは、隣にいるルミアを見た。  
ルミアは、その兄妹を見つめ、微かに鼻をひくつかせ、背中の毛がわずかに逆立っている。  
そして、特に衰弱しているティナの方から、片時も目を離そうとしない。  
その蒼い瞳には、警戒というよりも、深い同情と、何か強い関心を示すような、不思議な色が浮かんでいるように見えた。

(ルミアが、こんな反応を見せるのは初めてかもしれない……。同族、というわけではないだろうが、何か感じるものがあるのか……?)

その時、兄妹の近くで、数人の男たちの下卑た笑い声が響いた。

「おい、まだ生きてたのか、このクソガキども。そろそろ見世物小屋の親方に引き渡す時間だぜ?」

それは、ボルック商会の使い走りと思われる男たちだった。  
彼らは、この獣人の兄妹を捕らえ、どこかへ売り飛ばそうとしているらしい。

(見世物小屋に……!? ボルック商会が、こんな人身売買まがいのことまで手を伸ばしているなんて……。市場の独占だけじゃ飽き足らず、こんな幼い子供たちまで……!)

ユウトの胸に、激しい怒りが込み上げてくる。

男たちの言葉に、少年は妹をさらにきつく抱きしめ、まるで親狼のように男たちを威嚇した。

「ティナには……ティナには、指一本触れさせるなッ!」

その声は震えていたが、そこには妹を守ろうとする必死の覚悟が込められていた。

ユウトは、再び胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。  
数日前、リヴィアを助けたばかりだ。  
今また、目の前で、か弱い者たちが理不尽な暴力に晒されようとしている。  
ボルック商会という、忌まわしい名前と共に。  
見過ごすことなど、できるはずもなかった。
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