スキル【等価交換】で異世界商会革命！元社畜、現代知識でざまぁ成り上がる！

第45話：街への貢献と、ミカド商会の使命

商業ギルドマスター、バルガスからの予期せぬ依頼。
ミレルナ市の公衆衛生向上事業への協力――それは、ユウトにとって、あまりにも大きな、そして重い問いかけだった。
一介の商人である自分たちが、街全体の未来に関わるような大役を担えるのだろうか。
その責任の大きさに、ユウトは一瞬、言葉を失った。

（俺たちに、そんなことができるのか……？）

脳裏に浮かぶのは、ブラック企業でただ無力に働き続けた前世の記憶。
誰の役にも立てず、ただ消耗していくだけだった日々。
あの頃の自分には、こんな選択肢など想像もできなかっただろう。

だが、今は違う。
隣には、最強の相棒ルミアがいる。
ミカド商会には、リヴィアという頼れる右腕がいる。
そして、レンとティナという、守りたい、そして共に成長していきたいと願う大切な仲間たちがいる。

「……バルガス様」

ユウトは、ゆっくりと顔を上げ、バルガスの目をまっすぐに見据えた。
その瞳には、もう戸惑いの色はない。
あるのは、静かな、しかし確かな決意の光だった。

「そのお話、ミカド商会として、謹んでお引き受けいたします」

ユウトの言葉に、バルガスは満足そうに頷いた。
彼の鋭い目が、わずかに細められる。

「そう言ってくれると信じていたぞ、ユウト殿。それでこそ、ミカド商会の代表だ」

「ですが、条件が一つだけございます」

ユウトは続けた。

「ほう、条件とな？」

バルガスが興味深そうに問い返す。

「はい。この事業は、ミカド商会だけで行うものではありません。ギルドの皆様、そしてミレルナの市民の皆様のご協力があって初めて成り立つものだと考えます。どうか、その点をご理解いただき、我々をサポートしていただけますでしょうか」

ユウトの言葉には、謙虚さの中に、確固たる信念が込められていた。
これは、自分たちの手柄にしたいのではなく、本当に街のためになることをしたいという、純粋な想いの表れだった。

バルガスは、ユウトの言葉をしばらく黙って聞いていたが、やがて、フッと息を吐き、にやりと笑った。

「はっはっは！ 面白い！ 若いのに、よくそこまで考えているな。よかろう！ その条件、ギルドマスターとして約束しよう。商業ギルドは、ミカド商会の活動を全面的に支援する。必要な人員も、情報も、可能な限り提供しよう」

「ありがとうございます！」

ユウトは、深々と頭を下げた。
大きな責任を伴う仕事だが、それ以上に、大きなやりがいを感じていた。

商業ギルドを後にしたユウトは、少し浮き立つような気持ちでミカド商会へと戻った。
待っていたリヴィアに事の経緯を話すと、彼女は最初こそ少し驚いた表情を見せたものの、すぐにいつもの冷静さを取り戻し、深く頷いた。

「……ユウト様らしいご決断ですわね。そして、ミカド商会にとっても、これはまたとない好機となるでしょう。街全体の衛生環境を改善するという大義名分は、我々の商売をさらに大きく飛躍させる追い風となりますわ」

リヴィアは、商売人としての視点も忘れずに付け加える。
だが、その瞳の奥には、ユウトの決断への深い信頼と、そして、彼が目指す「誰かの役に立ちたい」という想いへの共感が宿っているように見えた。

「ああ。利益ももちろん大事だけど、それ以上に、俺たちの仕事が、この街の人たちの生活を少しでも良くできるのなら、こんなに嬉しいことはない」

ユウトは、窓の外に広がるミレルナの街並みを見つめながら言った。
前世では、ただ社会の歯車として使い潰されるだけだった自分が、この異世界では、誰かのために、そして街全体のために、何か大きなことができるかもしれない。
その事実に、ユウトの胸は熱く込み上げてくる。

「ミカド商会の新しい使命、か……。よし、リヴィアさん、早速具体的な計画を練ろう！ レンとティナにも手伝ってもらって、最高の衛生改善プランを作り上げるぞ！」

ユウトの言葉に、リヴィアは力強く頷いた。

「はい、ユウト様！ このリヴィア、全力でお支えいたしますわ！」

それは、ミカド商会が、単なる利益を追求する組織から、地域社会に貢献し、人々の生活を豊かにするという、より大きな使命を担う組織へと進化を遂げる、新たな始まりの瞬間だった。
ユウトの心には、女神セレネが言っていた「世界に波を起こす」という言葉が、以前よりもずっと鮮明に、そして力強く響いていた。
その波は、まだ小さいかもしれないが、確実にミレルナの街を変えようとしていた。