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第二部
34.聖女の事後処理4
「事故の調査は当然行われたのですよね?」
私の質問に、お答えはいただけませんでした。
「――関係者は分かっていますね?」
「……あ、ああ……」
どうにも陛下は事態の解決に消極的といいますか、少し及び腰になっているようです。権力闘争に振り回されているようです。その調子で、真偽不明なリュクレース・ガーヌを、言われるままに受け入れてしまったわけですか。
そのせいで大混乱だったわけですが。
その件に関わった人間の多くがガーヌ公の縁者だったようで、陛下は既に処分は済んだと思っているようです。
……つまり、三十年近くも放置していたわけですよね?
しかも、次の聖女様の後見人にまでした。はっきり言って不安しかありません。
穢れによる環境汚染は、世界的にも問題視されていましたよね? 陛下はそれもご存じでしたよね? なのに、権力闘争に翻弄されて最悪の結果を導いてしまったわけですか……。
「陛下は、今後このような事案を起こさないために、どのような対策をされているのですか?」
「え? あ、それは……」
随分と心許ない返答です。ここはきっぱりと即答していただきたかった。
三十年も経ってから臭い物に蓋をして、それで終了として――それで問題ないと考えるなんてありえません。陛下のお側には、この状態に危機感を覚える方はいなかったのでしょうか?
「陛下に不遜な物言いはしたくはないのですが……この国の国民であることに、一抹の不安を覚えてしまいます。国が無くならなければご理解いただけないのでしょうか?」
私は別に「国滅ぼすぞ!」と言ったわけではないのですが、陛下は顔面蒼白になってしまいました。陛下は統治者としての教育を何一つ受けてこられなかったのでしょうか?国家の運営について言及する気はありません。
――ですが、かけられた迷惑分はしっかりとお灸を据えたいと思います。
「陛下のお母様は聖女様でしたよね……なのに、大精霊の導きはいただけていなかったご様子。ワタクシでよろしければ、お願いさせて頂きましょうか?
大精霊の『祝福』を――――――」
◇◆◇ ◇◆◇
「本当に……すまなかった」
謁見の間から移動をして、今はフレデリック殿下の私室にジャン様と三人でいます。リシュタンジェル公は謁見の間に残り、陛下と『残りの話』を詰めているところです。
陛下には、今後の聖女様の処遇に対する法律と、貴族への罰則強化に関する法律の草案をまとめてもらっています。
正式に決定するのは、来月から行われる『議会』で取り上げられてからとなります。ここで、他の貴族議員を御することができなければ……もう、終わりです。
「殿下がそのようなことを仰る必要はありませんよ。次にあの王冠を継承されるのは殿下なのですから、それまでには精進して下さいね? 戴冠式に無様な真似をさらすことのないように」
「あ、ああ……」
陛下は現在、謁見の間で喜びむせび泣いております。
教皇、枢機卿、陛下と高貴な方々はやはり違いますね。マクマに文句一つ言わないのですから。文句ばかり言っていた私とは違いますね!
『あれは本来、穢れに取り込まれぬよう神聖魔術を強めるためのものだ! なんでどいつもこいつも痛みを生じているのだ!』
殿下の私室は広いので、大きな馬がいても邪魔になりません。
大きな黒馬状態のマクマが部屋の隅ですねています。
「アンタの術が未熟だからじゃないの?」
『…………』
……マクマが壁にめり込み始めました……。
城内に設置されている、解呪不可能な『諱箱』についてですが、私や精霊たちにできることはもう何もありません。ですからこれからも……王家の皆様はこれからもこの呪具と向き合っていかなければならないのです。
この国が、滅ぶまで。
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