無機質のモノローグ

朝疲労

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突如、電柱が詩を詠んだ夜

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それは、冬の終わりの、肌寒い夜のこと。私は近所のコンビニへ向かう途中、ふと見上げると、いつも見慣れた一本の電柱が、異様に輝いている。まるで無数の蛍が群がっているかのように、淡い光を放っている。
私は立ち止まり、その光景に見とれていると、電柱からか細くも澄んだ声が聞こえた。
「ああ、風よ…我は、この地に根ざし、遥か高みを目指す者。
日ごとに変わる空の色を見つめ、移ろいゆく季節の詩を紡ぐ…」
耳が怖くなった。電柱が、詩を詠んでいる。しかも、その声は、まるで遠い昔から存在していたかのような、深遠で、それでいてどこか寂しげな響きだった。
電柱は続ける。
「幾千の雷雨に打たれ、幾万の風に揺られ、
それでも我は、人々の営みを照らす光を繋ぐ。
孤独と、使命と、そして…見果てぬ夢を胸に抱いて…」
その詩は、電柱が今まで耐え忍んできたであろう風雪や、そこに流れる電気を通じて、人々の生活を支えてきた歴史を物語っているようだった。普段はただの循環の一部としてしか見ていなかった電柱が、こんなにも豊かな内面を持っていることに衝撃を受けた。
あたりを通り過ぎる人々は、誰も電柱の詩に気づいている様子はない。彼らは携帯電話を見たり、急ぎ足で歩いたり、ただ日常の中に埋もれていた。私だけが、この奇妙で美しい瞬間に立ち会っている。そんな不思議な感覚だった。
電柱は、最後の詩句を詠み上げると、光の輝きを少しだけ弱めた。
「いつか、この地に新たな芽吹きが訪れ、
我の役目を終えるその日まで…
我は、語り続けよう。
この星の鼓動と、生命の輝きを…」
私はコンビニに行くことも忘れ、その場でしばらく電柱を見上げていた。それ以来、私は電柱を見るたびに、その無骨な姿の奥に、壮大な詩と大事な物語が隠されているような気がしてならない。もしかすると、この世界のありとあらゆるものたちが、それぞれの言葉で、私たちに語りかけているのかもしれない、と考えるようになったのだ。
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