ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃

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社会人 編

それぞれの再会

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 大学の苦い思い出から、数年経った。

 数年経ったというのに、オレの胸は、この頃再び痛みを思い出していた。

 なぜなら。

「ねー、この雑誌のモデル、リオウだっけ。めっちゃカッコイイよね! 本名かな?」
「本名らしいよ、ほら、SNSに書いてる。あ、次はメンズの化粧品のCMに出るって」
「最近、本当によくみるよなあ。ベータのオレから見ても、確かにワイルドなイケメンだし」

 ざわざわとした、昼休みの喫茶店。
 通路を挟んだ反対側の席で、スーツをきた男女が数人、わいわいとお喋りをしていた。
 その声の大きさに、つい目をやると、ちょうど該当のページを女性が開いて持ち上げ、みんなに見せていた。

 灰色のなのに艶めく髪、サングラスからチラリと覗く緑に輝く瞳をもつ、青年。
 どこか影があるが雰囲気のあるイケメンが、表情とポーズを決めて、映っていた。
 間違いない。
 大学時代の後輩、あの、狼谷かみや 凛旺りおうだった。

 もう、忘れたと思っていた。
 あの痛みも、罪悪感も。
 だけど、顔を見た瞬間、鮮やかにあの日々がよみがえり……痛みも思い出した。

 楽しかった事の方が多かったのに、決定的に別れてしまったあの日が、どうしても頭の大部分を占めてしまう。
 あの時の、狼谷の軽蔑したような、冷たい瞳が、忘れられない。

 ひゅっと、息を飲んでしまった。

「大丈夫、宇佐木くん」

 と、それを見たオレの同席者が、声をかけた。

「っ、あ、だ、大丈夫です」

 オレの様子がおかしいと感じたのか、オレの目線の先を見る。その人も、その人物が見えたのだろう、ああ、と納得したような顔をした後、オレを心配そうに見た。

「……まだ、苦しんでるんだね」

 オレは、その人に何と言っていいのか、わからなかった。
 大丈夫だと言いたいのに、久しぶりに感じた胸の痛みが、苦しみが、息を詰まらせる。

「い、いいえ。それより、打ち合わせ、しましょう。有馬さん」

 何とか首を振り、目の前のテーブルに置いたタブレットに目を落とす。そこには、オレの次回作の構想を書いたネームが表示されていた。

「もうちょっと落ち着いてからでも良いよ、宇佐木くん」

 一方、目の前に座るシュッとした黒髪のイケメン……元アニメ研究会部長の有馬さんは、首から出版社のネームプレートを下げていた。

 そう。

 オレたちは何の因果か、仕事相手として再会したのだった。





 オレは大学を休んだ後、実家に呼び出された。
 そうしたらなんと、親父が詐欺に騙されて借金をした事を聞かされ、もう大学に行くような状況じゃ無くなっていた。
 オレは大学を休学し、親父の自己破産も視野に入れつつ、とりあえず働ける所どこでも働いた。
 何とか、数年で完済できるメドがたった。
 そこで、無理がたたったのだろう。

 オレは、体と精神を壊した。
 両親はオレにずっと謝っていたが、仕方ないとしか思わなかった。

 大学への復学も諦め、何とか持ち直した実家でオレは、家でできる仕事を探した。
 すると意外な事に、オレにはマンガの才能があったらしい。
 絵は確かに下手くそなんだが、ネームにして見せると、沢山の人が、話しが面白いといって褒めてくれた。
 気を良くして、ネットにネームをアップすると、そこそこ人気になった。
 嬉しかった。
 お金になるとは思わなかったが、ダメな奴だとか、出来損ないとかさんざん言われていたから、みんなの賞賛と優しい言葉が、オレを救ってくれた。

 間違いなく、マンガはオレを救ってくれた。

 そして、いくつか書いた短編のネームが、出版社の目に留まったらしい。
 ネット経由で、作画を付けて出版しませんかと出版社から連絡がきた。

 さんざん悩んだが、オレの社会復帰の一歩という意味も込めて、担当さんに会いにいくと、なんとそこにいたのが、有馬さんだったのだ。

 有馬さんは大学卒業後、この大手の出版社に入社し、今はマンガの部署にいるだと、はじめて打ち合わせした時に教えてくれた。

 はじめての打ち合わせでは、お互い積もる話がつきなかった。有馬さんはあの話し方を止めて、容姿もちゃんと今風にしていた。あれは、大学までの恰好として決めていたらしい。

 そして、オレのネームをすごく褒めてくれた。
 知り合いだから、ではなく本当に面白いから、売り出していきたい、と。
 有馬さんのおかげで、オレは言うならば原作者として、お金が入るようになった。

 だから、今日も仕事の一環として打ち合わせにきていただけなのに。

 大学の事をまだ引きずっていると思われるのは、恥ずかしい。
 オレはなけなしのプライドで、今日の打ち合わせを終わらせたのだった。
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