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社会人 編
吐露
「む、むしろ、センパイのこと、す、好き、かも……」
絞り出された言葉。
何を言われるかと身構えていたが、ホッとした。
「? そうか、ありがとう、嫌わないでくれて」
「それだけ?!」
一生懸命言葉を探している風だったから、真面目に聞いて、返事したのに、狼谷はひどくショックを受けた顔をしていた。
「えっと」
罵声を浴びせかけられないようなので、本当に良かったとか、他に何か言うべきだろうか。
あ、そうか。
「まだ、センパイって呼んでくれるんだな、ありがとう」
目に見えてガッカリした顔をした後、狼谷は何故か青ざめた。わけがわからない。
昔から、先輩後輩として、懐かれているのはわかっていた。
だから、そこに戻っただけではないのか?
「せ、センパイは!」
「ん?」
「いや……寧さんはっ」
いきなり下の名前を呼ばれて、びっくりした。さっきも、なんかどさくさに紛れて呼んでなかったか?
今まで、呼ばれたことないのに。というか、教えたっけ。
必死な顔をしているから、ちゃちゃも入れられず、オレも間抜けな顔で次の言葉を待った。
「お、オレのこと……ど、どう……いや、違うか…」
今まで体にまわされていた腕が、すとんと力なく落ちた。当たり前のように体温を分け合っていた事に、今さらながら恥ずかしく思ってしまう。と、同時に、スースーして落ち着かない。
かわりに、きゅっと服の裾をつかまれた。
ふと狼谷を仰ぎ見ると、俯いて表情がわからない。こんなに、不安そうな姿ははじめて見た。
「ほ、本当に、ごめんなさい。センパイが、苦しそうにしてたからって、あそこで、ああしたのは……オレの、せいだった。他のオメガ呼びに行くとか、病院連れて行くとか、いくらでも他の行動ができたのに。理性を失ったのは、オレの方だった。ひどい事して、ごめんなさい」
「狼谷、それは」
「センパイは、謝らないでくれ! オレがウサギを嫌いなのは、昔、ウサギの女子にうざく絡まれたから、嫌いなだけだったんだ! あんたが、嫌いなわけじゃない。ウサギ全部が、嫌いじゃ、ないんだ……。センパイのこと、寧さんの事本当に、本当に、好きなんだ。ウサギだ何だって、変にうだうだしたから、こんな、こじれて……うぅ」
ぱたぱたと床に水滴がおちる。後輩の目から。そして、オレの、目から。
「あっ! ご、ごめん、オレ、ウサギに対して本当に酷い事言ってた。センパイを、傷つけてた。ごめん、こんなオレが、センパイに好きなんていう資格、無いよな……本当に、ごめんなさい」
狼谷は、今度は俯くというより、勢いよく頭を下げた。
「狼谷……」
何を言って良いのかわからず、つい狼谷の名前を呼んでしまう。
こいつがウサギを嫌いなのは、仕方ない事だ。好き嫌いは、仕方がないから。ウサギは実際あんまり評判良くないし。
だけど、確かに、その言葉に傷ついていたのも、事実。
嘘をついたのだって、もとをたどれば、こいつに嫌われたくないからだった。
朗らかに、オレに懐き、純粋な好意を向けてくれた狼谷に、嫌われたくなかった。嘘をつくのが、苦しくなるくらいには。
だから、こいつがウサギを、全部のウサギを嫌いじゃ無いって言ってくれた事が。
オレのウサギという生を嫌いじゃないって。受け入れてくれた事に、謝ってくれた事に、本当に嬉しくなった。安堵したと言ってもいい。
「……オレは、ウサギだ」
「うん」
「お前の嫌いな、ウサギ、じゃない?」
思わず、本音が漏れてしまった。
絞り出された言葉。
何を言われるかと身構えていたが、ホッとした。
「? そうか、ありがとう、嫌わないでくれて」
「それだけ?!」
一生懸命言葉を探している風だったから、真面目に聞いて、返事したのに、狼谷はひどくショックを受けた顔をしていた。
「えっと」
罵声を浴びせかけられないようなので、本当に良かったとか、他に何か言うべきだろうか。
あ、そうか。
「まだ、センパイって呼んでくれるんだな、ありがとう」
目に見えてガッカリした顔をした後、狼谷は何故か青ざめた。わけがわからない。
昔から、先輩後輩として、懐かれているのはわかっていた。
だから、そこに戻っただけではないのか?
「せ、センパイは!」
「ん?」
「いや……寧さんはっ」
いきなり下の名前を呼ばれて、びっくりした。さっきも、なんかどさくさに紛れて呼んでなかったか?
今まで、呼ばれたことないのに。というか、教えたっけ。
必死な顔をしているから、ちゃちゃも入れられず、オレも間抜けな顔で次の言葉を待った。
「お、オレのこと……ど、どう……いや、違うか…」
今まで体にまわされていた腕が、すとんと力なく落ちた。当たり前のように体温を分け合っていた事に、今さらながら恥ずかしく思ってしまう。と、同時に、スースーして落ち着かない。
かわりに、きゅっと服の裾をつかまれた。
ふと狼谷を仰ぎ見ると、俯いて表情がわからない。こんなに、不安そうな姿ははじめて見た。
「ほ、本当に、ごめんなさい。センパイが、苦しそうにしてたからって、あそこで、ああしたのは……オレの、せいだった。他のオメガ呼びに行くとか、病院連れて行くとか、いくらでも他の行動ができたのに。理性を失ったのは、オレの方だった。ひどい事して、ごめんなさい」
「狼谷、それは」
「センパイは、謝らないでくれ! オレがウサギを嫌いなのは、昔、ウサギの女子にうざく絡まれたから、嫌いなだけだったんだ! あんたが、嫌いなわけじゃない。ウサギ全部が、嫌いじゃ、ないんだ……。センパイのこと、寧さんの事本当に、本当に、好きなんだ。ウサギだ何だって、変にうだうだしたから、こんな、こじれて……うぅ」
ぱたぱたと床に水滴がおちる。後輩の目から。そして、オレの、目から。
「あっ! ご、ごめん、オレ、ウサギに対して本当に酷い事言ってた。センパイを、傷つけてた。ごめん、こんなオレが、センパイに好きなんていう資格、無いよな……本当に、ごめんなさい」
狼谷は、今度は俯くというより、勢いよく頭を下げた。
「狼谷……」
何を言って良いのかわからず、つい狼谷の名前を呼んでしまう。
こいつがウサギを嫌いなのは、仕方ない事だ。好き嫌いは、仕方がないから。ウサギは実際あんまり評判良くないし。
だけど、確かに、その言葉に傷ついていたのも、事実。
嘘をついたのだって、もとをたどれば、こいつに嫌われたくないからだった。
朗らかに、オレに懐き、純粋な好意を向けてくれた狼谷に、嫌われたくなかった。嘘をつくのが、苦しくなるくらいには。
だから、こいつがウサギを、全部のウサギを嫌いじゃ無いって言ってくれた事が。
オレのウサギという生を嫌いじゃないって。受け入れてくれた事に、謝ってくれた事に、本当に嬉しくなった。安堵したと言ってもいい。
「……オレは、ウサギだ」
「うん」
「お前の嫌いな、ウサギ、じゃない?」
思わず、本音が漏れてしまった。
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