『あーあ、君、マジであの祠壊しちゃったの?』

灯璃

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神社

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 その後は何事もなく、無事山道を降り、田の畔道に毛が生えたような農道が見える所までようよう降りて来た。
 田舎特有の広く取られた道路の脇に止めていた車の運転席に岬が、助手席に楠木が乗り込み、エンジンをかけた。
 真っ黒な普通車のボンネットは、神経質なほど光っている。

「楠木さん、この村の地図とかわかんないの」

 ハンドルを握りながら、岬が聞く。助手席にだらりと座る楠木は、手の中にある察しを見つめながら、うーんと呟いた。

「変に縮尺が大きくて、何がどの施設か、わからない。役所と、神社と、でっかい豪邸ぐらいならわかるけど」
「つかえねーなぁ。じゃあ、神社行こうぜ。役所には夕方くらいに行けば間に合うだろ」
「……なんだか、今回はえらく慎重だね」

 今度は、岬が溜息を吐いた。そして、何故こんなにも広くする必要があったのかわからない路肩に、車を一旦止めた。

「なんか、やけにきな臭いんだよ今回。神社じゃなくて祠である事とか、誰もいかないハズの山奥の場所が綺麗に整頓されてたりとか。なんか、ヤベー気がする」
「まあ、君がそう言うなら、そうなんだろう。神社は、この道を真っすぐ行って、大きく左にカーブした後、また曲がるようだよ」

 楠木はあまり危機感を持っていないようで、気楽に神社への道を口にした。岬は、もう一度溜息を吐いて、楠木から地図を取り上げた。楠木のナビゲーションを信用していないようだ。
 自分でも一度道を確認したあと、ウインカーを出して再び道路へと戻った。もちろん、今の間に、反対車線を含めて一度も車は通らなかった。





 神社は、思ったより開けた場所にあった。
 敷地自体は大きいは大きいが、有名な神社のように立派な鳥居と社殿、というよりは、やはり地域の神社なのだろうというこじんまりしたものだった。少し広場のようになっていて、辺りが見回せる。見る限り、誰もいなかった。
 岬は、一礼をして鳥居をくぐり、手水舎で手を洗い、社の前で一礼した。礼儀正しく参拝する岬に倣い、楠木も一連の動作をまねる。ただ、柏手という社の前で手を鳴らす事はしなかったので、それも楠木は真似した。

「さて。ここの由来が知りたいんだが、どこに書いてあるかな」
「岬君、これじゃないかい」

 頭を上げ、キョロキョロと見回す岬に、楠木が声をかける。それは、賽銭箱の横に置かれていた、真っ白で薄い紙だった。薄いので、文字が少し透けている。三つ折りにされており、真ん中に永田神社由来、と書かれていた。どうも、と言って受け取る岬。とことん、視る事に弱いようだった。ちなみに、コンタクト使用者だ。

「……」

 岬が読んでいる間、楠木もさっと目を通したが、特におかしいような所はわからなかった。ただ、なんとなく、視られている気がする。
 参ったなと思いながら周囲を見渡すと、誰もいない。
 嫌な気配。
 此処に来たのが果たして正解だったのか、まっすぐ役所に向かった方が良かったのではないか。思いはしたが、真剣に由来を読み込んでいる岬には言えなかった。決して、怖かったわけではない。決して。彼は、優しい奴である。ただ、言葉がキツイだけで。

「おい、やっぱりヤバそうだぞ、ここ」
「ん?」

 数分して、紙から顔を上げた岬が、嫌そうな表情になっていた。こんな、A4サイズの薄っぺらい紙から何がわかったのだろう。岬は、首を傾げた。

「そんなにかい?普通の神社では」
「普通じゃねーよ。色々突っ込みたい事はあるが、この異邦神いほうしん、荒ぶる百目鬼どうめきになり、供物を捧げた後、豊穣神ほうじょうしんとなったのが祭りの始まり、ってのがヤベー」
「はあ」

 ヤバイの内訳を言ってくれないと、わからない。そう言外に態度に出していたのが、伝わったのだろう。岬は、再び紙に目を落とした。

「とりあえず、外から来た神が、暴れたから困った村人が供物を捧げた所、神様になったって話だ」

 要約してくれたようだ。それなら、なんとなく楠木でもわかった。

「たまにあるヤツか。祟りとか暴れた神様を、祀って宥めるみたいな」
「ううん、まあ、そういうくくりには、入ると思う」

 何故か岬は言い難そうにしている。と、そこで、二人が話をしているのを聞きつけたのか、足音が近づいてきていた。
 足音に気づいた岬がバッと振り返ると、そこには。
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