キャンピングカーで、異世界キャンプ旅

風来坊

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第2章 初めての異世界

森の狩猟と初戦闘

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異世界に来て二日目の朝。
ブレイザーの窓から差し込む光で翔は目を覚ました。
外の森は薄暗く、鳥とも虫ともつかない鳴き声が響いている。

鼻をくすぐるのは香ばしい匂い。
「……コーヒー?」

寝袋から這い出すと、忍が魔導コンロで湯を沸かしていた。
カップから立ち昇る黒い液体は、どう見てもコーヒーにしか見えない。

「昨日拾った“赤実ベリー”を試してみました」
「ちょっと待て、本当に飲めるのか?」

忍は右手をかざした。
「《簡易鑑定》」

青白いウィンドウが浮かび上がる。

【赤実ベリー 食用可/加熱で香ばしい香りが立ち、覚醒効果あり】

「大丈夫です。むしろ眠気覚まし効果があります」
「……マジか。便利だな、そのスキル」

翔は一口すすり、思わず目を見開いた。
「……完全にコーヒーだ」
「異世界でも朝はコーヒーから始めたいですよね」

二人が笑い合った瞬間――森の奥から低いうなり声が響いた。

ガサリ。

茂みを突き破って現れたのは、鬣を逆立てた巨大な獣。
赤い目がギラリと光り、牙を剥き出す。

「……やばそうだな」
「翔さん、私が調べます!」

忍が手をかざす。
「《簡易鑑定》!」

ウィンドウが浮かび上がり、文字が流れる。

【ブラッドウルフ レベル6
 弱点:腹部の薄毛部分/聴覚過敏
 ドロップ:毛皮、肉】

「ブラッドウルフ……レベル6です!」
「名前もレベルもわかるのか、助かるな!」

《おい翔! 弱点に“聴覚過敏”ってあるだろ。外部スピーカーで爆音を流せ!》
ブレイザーが叫ぶ。

翔はスマホを接続し、クラクションと音楽を最大音量で鳴らす。

「グァアアア!」
狼は苦しげに頭を振り、動きが鈍った。

翔はブレイザーの荷室に駆け込み、工具箱を開く。
そこから鉄バールを引き抜いた。
タクシードライバー時代、整備と護身のために常に積んでいた“仕事道具”。
まさか異世界で武器になるとは思わなかった。

「……行くぞ!」

鉄の重みを確かめ、翔は一気に飛び込む。
バールの先端が狼の腹を貫き、獣は悲鳴を上げて崩れ落ちる。

赤い霧となって消え、その場に毛皮と肉が残った。

【レベルアップしました】
【清水翔 LV2】

「……やったな」
「翔さん、すごいです!」

忍が腕を掴み、笑顔を浮かべる。
その温もりに翔は胸の奥が熱くなるのを感じた。

《ははっ。東京で使ってたバールが、この世界じゃ剣みたいなもんだな》
「悪くない。俺の武器はこいつで十分だ」

焚き火の決意

夕暮れ。
焚き火を囲み、二人は狼の肉を串に刺して焼いた。

「鑑定しました。ちゃんと食用です」
「なら安心だな」

肉を齧りながら翔は呟く。
「……ゲームみたいだけど、これが現実なんだな」
「だからこそ、翔さんと一緒に切り開いていきたいです」

《この森を抜ければ“町”があるみたいだ》
ブレイザーの声が響く。

「町か……人がいるなら情報も手に入るな」
「次の目的地は決まりですね」

翔は焚き火の炎を見つめ、静かに言った。
「異世界キャンプ旅、次の目的地は町だ」

二つの月が夜空に輝き、火の粉が舞い散る。
二人と一台の相棒は、新たな一歩を踏み出そうとしていた。
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