【休載中】転生RPG世界に欠けていたのはBGMだった 奏でてみたら超絶支援効果発動、いつしか神曲の魔奏士とか呼ばれてみた

カズサノスケ

文字の大きさ
4 / 10

第4話 ♪町BGM【今日も迎えられる朝】

しおりを挟む
 俺は町を囲む壁の上に立ち口元にティンホイッスルを当てていた。

「町BGM【今日も迎えられる朝】、予想通りならば」

 ゲームの時、フィールドから町に入ればあのBGMが出迎えてくれた。魔物との戦闘に明け暮れパーティがボロボロ状態で町に辿り着いた時、取り敢えず全滅は回避出来たのを感じられる瞬間。あれほどホッとさせられ安らぎをあたえてくれたBGMは他にない。

 この世界にやってきて以降、ずっとオルザノの町で暮らしていながら聴く事のなかった心落ち着かせるメロディが町中へ染み渡っていく手応えがある。そう、『ファイナルクエストサーガ』においてこれがあるべき本来の町の情景。しかし……。

 あれ?待てよ、他の楽器の音も混じり始めた様な?FクエのBGMを知っているのは俺だけのはず、他に演奏出来る者がいるわけないのだが。魔奏を中断して辺りを見回しはみたがそれらしき人影は見当たらない。

「やはり、おかしいぞ。今、俺は全くティンホイッスルを吹いていないのにBGMが鳴り続けている」

 ティンホイッスルでつつましやかに魔奏していたはずだが、今はまるでオーケストラの様。町中に行き渡るほどの大音量だし、俺の魔奏すら必要ないみたいだし。これは一体どうした事だ?

「んっ? なんだか足下が震えている様な」

 全ての感覚をそこに集中させてみる。何だか足下の辺りがうっすらと振動している様だ。しゃがんで壁に耳を当ててみる。

「壁の中から音が出ている、町そのものが演奏を始めたのか!?」

 どういう仕組化はよくわからない。でも、町を覆う壁の中の方から町BGMが鳴り響いていた。そして、町の上空に薄ら青い光を放つ粉の様な物が昇っていくのが見える。それらはまるでドーム状の屋根の様になり町を覆い始めている。

「あれは魔法力か。それにしても、あんな大量にどこから湧いてるんだ?」

 青く光る粉が昇ってきた先を追いかけるとオルザノの町の人々の姿があった。人間が持つ魔法力を1人1人からほんの少しずつ放出させているという事か。

 俺の魔奏でそこそこ魔物の侵入を防げるかも?程度に思ったけど、これだけの規模にBGMが膨れ上がるならきっともう大丈夫。町の上空に青白く輝く魔法力で形作られた屋根を見てそう確信した。


 ルテットが割と呑気に壁上でティンホイッスルを吹いていた頃。彼とは対照的に血相を変えた傭兵ギルドの傭兵たちが町の至る所に向かって走っていた。無論、彼らの目的はオルザノの町を魔物から守る事にある

 その中でも特に弓の扱いに長けた者、魔法を使える者は慌ただしい様子だ。高台に上がってそれぞれ手に持つ弓や杖を上空に向かって構え始める。地上から迫る魔物より空から来る方が遥かに厄介、それをどれだけ食い止められるかで町が受ける被害は大きく変わる。幾度も防衛戦を経験した者達には常識だった。

 その様な者達の目には壁の上で笛を吹いている男の姿は奇異に映った。この状況で一体何をしているのだ?そんな暇があるなら他にやる事があるだろう。そうは思えどおかしな男に構ってはいられるほどの余裕はなかった。

 そして、いよいよオルザノの町を舞台にした攻防戦は始まった。しかし。

 空飛ぶ魔物たちは上空から降り注ぐ雨の様にオルザノへ町へ突入を開始した。そして、町を覆う青い光の壁に当たっては片っ端から弾けていった。爆散した肉片もまた、光の壁に当たると瞬時に蒸発した。

 こうして、100匹以上はいたと思われる空飛ぶ魔物の群れは突入と同時に全滅したのである。

 また、地上から迫り外周の壁をよじ登ろうとしていた魔物。頭突きを繰り返していた魔物も、町自体が青白い光に覆われて以後はやはり砕けた。

 そうして先頭にいた魔物たちが自らの突撃の結果で肉片を散らばせると後ろに続く魔物たちは後退りを始めた。

 やがて1匹残らず姿を消していた。幾匹もの魔物たちが命を散らした後には、町BGM【今日も迎えられる朝】が陽気に鳴り響いていた。


 魔物の群れが退散したのを見届けた俺は口元からティンホイッスルを外してその場に腰を下ろした。

「やはり、町BGMには魔物から町を守る効果があったか。それにしても、俺の魔奏に反応して町自体が町BGMを奏でるとは予想外だったな」

 俺の魔奏は大火事の起点となるマッチ1本の点火の様なものか。町BGM【今日も迎えられる朝】のバイブレーションが壁に燃え移り、その中に一気に燃え盛る炎に成長して町中へ行き渡った。

 ゲームの時、町のどこにいてもBGMが聴こえていたのを思えば町自体が音響設備になっていたというリアル化も納得だ。

「ところで。これ、夜中になってもずっと鳴り響いていたらうるさくないかな? 寝られないとか苦情が殺到したらどうしようか……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...