魔導姫戦記

森乃守人

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本編 第一部

ep.20 邂逅

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ゼル「申し訳ありません、姫様。」
ルーシェ「構いません、これだけ広い中から探しているのですから…
想定の範囲内ですわ。」
「…あのね、姫様…」
ペコルの耳打ちに頷くルーシェ。
「…ふふっ…それは面白いですわね。」










カーバンクルの導きにより、再び聖獣らしき像の元に辿り着いたラグナ達。
だが、ミシェルが聖剣をかざす前に像に亀裂が走り、光が漏れ出した。
封印が解かれる兆候だ。
「…⁉︎
まだ何も…」

像は砕け散って光の粒子となり、一つ所に集まる。
そこにはルーシェ姫の聖獣・ケットシーの姿があった。
ケットシーは光の粒子を吸収する。

ミシェル「…この子がいるという事は…」
「チッ…待ち伏せされた?」
すかさずランが刀を抜く。
一行は帝国軍に取り囲まれていた。

ルーシェ「そう身構えずともよろしいですわ。
貴方がたに危害を加えるつもりはありません。」

刀を構えて微動だにしないランに、ミシェルが言う。
「…ランさん、信じていいと思います。」
ミシェルの言葉に、刀を納めたラン。
「…そうかい…
それじゃあ、こんな所でわざわざ待ち伏せなんかしてまで、あたしらに何の用だい?」

ペコルがひょっこり前に出て言う。
「あたし達と友達になろっ?」
シャールヴィ「…と、友達だってぇ⁉︎」
ルーシェ「…わたくし達は、同じ力を探し求め、同じものを敵としている…
利害が一致すると思いませんか?」
ミシェル「…同じ力…アグエルの…」
ラグナ「…同じ…敵…」
ゼル「異形化奇病メタモルフの元凶…魔導師を造り出す新興国の権力者と、それに加担する者達すべてだ。
お前の父親も含めてな。」
ラグナ「……」
ラン「敵の敵は味方ってか…
…まぁ、アンタ達が戦う理由も解らなくはないけど、あいにくウチらは、国家に属して戦争に加担するつもりは無いよ。」
ルーシェ「…ですが、国家として掲げる大義も無く武力を行使する事など、単なるテロリズムとしか見なされませんわよ?」
ラン「その大義ってやつは、心を縛ったり殺したり…虐殺を正当化する言い訳にもなる。
そんなのはゴメンなのさ。」
ゼル「……」
ルーシェ「…そうですか…
…わかりました、今日の所は引き下がりましょう。

ですが…ミシェル。
貴女が何者かはわたくしも存じませんが、共に来れば何か手掛かりが掴めるかもしれませんわよ?
よくお考えなさい。

それでは…いずれまた何処かでお会いする時まで…ご機嫌よう。」
ラン「待ちな、あんた達に渡す物があるよ。」

それは、先の戦いでランが葬った帝国魔導師ウィザードが持っていた、人工魔石アトモスの杖だった。

ラン「お仲間の遺品だよ。」
「これって…ダンタリアンちゃんの…じゃあ、ダンタリアンちゃんは…」
‭泣き出すペコル。

ゼル「だから来るなと言ったのだ。」
アイシス「…私達は兵士にして魔導師…
…こういう事はいくらでもある…

…でも、貴方達の目的がよこしまなものなら、これを私達に返したりはしない…
…そうでしょう…?」
ラン「…本当ならウチの賢者様に見せたかった所なんだけどね…」
アイシス「…仲間が面倒をかけたわね…
…それじゃあ…」



帝国軍は翼ある獣に騎乗し、そこから飛び去った。

リン「…ふぅ…行っちゃったね。」
ラグナ「他にはもう何も無いんでしょうか?」
ミシェル「そうみたい…ね?カーバンクル。」

カーバンクルが何かに反応する様子は無かった。

ラン「よし、それじゃあ今度こそ帰るとするか!」

かくして一行は南方大陸を後にし、アジトに向けて帰路につく。





続く…
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