魔導姫戦記

森乃守人

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本編 第三部

ep.43 参戦

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異形化奇病メタモルフ化したレラジェとヴァラクを、激戦の末に葬ったエルキュールとパーシアス。
街を見渡すと火の海となっていた。

エルキュール「なんだ…これは…⁉︎」

急いで領主邸に向かうとメロディアナが走って来た。
「パーシアス様!」
パーシアス「メロディアナ!無事でよかった…!
でも、これは一体…?」
メロディアナ「わかりません…兵士達が突然、街に火を放ったのです。
兵士に抗議した人達は殺されて…街の出入り口も封鎖されてしまいました。」
エルキュール「奴ら、一体どういうつもりだ…⁉︎」

エルキュールとパーシアスが街の出入り口に向かうと、メロディアナの言った通り、ムスペルヘイム兵によって封鎖されていた。

エルキュール「貴様ら、一体どういうつもりだ⁉︎」
ムスペルヘイム兵「…この街は、敵国の襲撃により滅び去った…という筋書きさ。」
パーシアス「…なるほど…そういう事か。
自分達だけではあの2人を手に負えず、かといってアースガルドへの侵攻を前に、大規模な増援も見込めない。
だから街ごと焼き払ってしまおうと…」
エルキュール「だが、あの2人なら俺達が葬ったぞ。」
ムスペルヘイム兵「何⁉︎あのバケモノを⁉︎」
パーシアス「…自分達の不始末に街の人々を巻き込む君達の心にこそ、バケモノが棲んでると思うけどね。」
ムスペルヘイム兵「不始末?何の事だ?
死にゆく者の言葉は届かんなぁ。」
エルキュール「クズどもが…そうはいくか!」

2人は人々の避難経路を開くべく、街の出入り口を封鎖しているムスペルヘイム兵達と対峙する。
…が、異形化奇病メタモルフとの激戦で疲弊している上に、多勢に無勢。
もはやこれまでか、と思われたその時…

「エルキュール様、パーシアス様‼︎」
そこに駆けつけたのは、エルキュール直属の兵士達だった。

ムスペルヘイム兵「きっ…貴様ら‼︎
軍の越境とは、宣戦布告に等しい行為だぞ‼︎」
パーシアス「フッ…
投降した者も…同盟国の貴族も…自国の民すらも殺そうとした君達が、今さらルールを語るのかい?」

援軍との挟撃によってムスペルヘイム兵は掃討された。



ヴァナヘイム兵「各員は避難民の救援にあたれ!
(エルキュール・パーシアスを見て)
遅くなりまして申し訳ありません!」
エルキュール「いや、よく来てくれた。
またお前達に命を救われたぞ。」
パーシアス「でも、いかに同盟国とはいえ、よく軍団規模で越境して来れたね。」
ヴァナヘイム兵「エルキュール様が、パーシアス様の御身が危ないかも知れないと仰っていたので、各自各々で越境したのち集結したのです。」
「そうだったのか…いや、ありがとう君達…!
エルキュール、お前もね。」
パーシアスの言葉にエルキュールは頭を掻く。

ヴァナヘイム兵「…ですが、我々の行動によりムスペルヘイムとの同盟関係は…」
エルキュール「そんなもの、こっちから願い下げだ!」
パーシアス「あぁ、エティオフの避難民達が今回の件について証言してくれれば、私達の行動の正当性は証明される。
…皮肉な事だけど、アースガルドにとっても、これが追い風になるかもしれないな…」










ヴァナヘイム議会…

「デウス卿、貴殿の御子息がやってくれましたなぁ。」
1人の貴族の言葉にデウスが返す。
「あぁ、私は息子達を誇りに思うよ。」
貴族「誇りですと…?ふざけなさるな。
隣国は、拉致された臣民を返還せよと要求してきているのですぞ!」
デウス「その隣国の臣民は、自国の街に火を放ち、それに抗議した者を殺したのは他ならぬムスペルヘイム兵だと、口を揃えて証言している。」
貴族「なんと⁉︎
しかし、何故そのような事を…?」
デウス「愚息達の話では、ムスペルヘイム軍は、武器を捨て投降した帝国兵に射掛けるという、士道に反した行いをしたと…
それが元で反撃に遭い、逆に手に負えなくなった故、街ごと焼き払わんとした。
一部始終を見た愚息達の口封じを兼ねてな。」

貴族達
「なんと…その話が本当なら…いや、他ならぬ隣国臣民が証言しているなら、御子息達の行動は人道支援として成立する。」
「それどころか、難民を救済する我が軍に対し、隣国が不当な攻撃を行ったと判断できるのでは?」
デウス「それについてだが…
知っての通り、現在ムスペルヘイムはヨトゥンヘイムと手を結び、アースガルドと交戦状態にある。
もし、かような国がアースガルドを制した場合、次の矛先が我が国に向かわないと言い切れるだろうか?」

貴族達
「確かに…それについては、ヨトゥンヘイムが参戦を表明した時点で、危惧するところではあった。」
「2対1で叩かれるよりは、2対2で…という事か。」
デウス「進んで戦火を交えたい訳ではないが、非難声明と停戦勧告を発した上で、応じぬ場合は参戦も辞さぬ姿勢を表明すべきと考える。」

貴族達
「デウス卿の意見に賛同する。
異議のある者は?」
「……





続く…
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